中学校における
教師とスクールカウンセラーの連携に関する研究
大矢 珠実
(学校教育専攻 学校教育専修)
T.問題と目的
U.研究1(予備調査)
V.研究2(本調査)
W.まとめと今後の課題
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教師とスクールカウンセラーの連携に関する現状と課題
学校を取り巻く子どもの問題行動等の解決を図るために、その一方策として、旧・文部省が平成7年度より開始した「スクールカウンセラー(以下SC)活用調査研究委託事業」は、平成13年度より補助事業として新たに制度化され、現在も多くの学校でSCの配置が進められている。これまでの研究から、SCの学校への配置は、児童・生徒への悩み、不安・ストレスの解決などに効果があるだけではなく、教師の負担軽減にも効果があるとの報告がなされている。また、SCに対する学校の教師のニーズや派遣に対する評価について、これまでにさまざまな観点から研究がなされ(伊藤,1996;伊藤,1999;中島ら,1997など)、SCの学校でのあり方が見出されてきている。
しかし、その一方で、教師とSCのあり方、SCの学校教育に対する理解、守秘義務・情報交換の問題、SCの位置づけなどSC配置に関する課題は数多く残されている。
そこで、本研究では、SCの有効性を高め、生徒支援をより推進していくことを目的として、何がSCの役割とその遂行に影響を与えているのか、それらに影響を与える要因について検討していくことで今後のあり方について考察していきたいと考えた。
SCが有効に働くには教師(集団)との連携、学校コミュニティへの根付きが必須要因(伊藤,1999)であり、SCによる活動だけでは決まらない。教師とSCの連携が特に重視されている。
教師とSCの連携の問題については、SC事業開始当初から問題とされており、学校心理学においても、一人一人の子どもの学習面や心理・社会面、進路面、健康面での問題状況の解決や子どもの成長を目指す心理教育的援助サービスをチームで行うことが強調されている(石隈,1999)。近年、学校はSCだけではなくさまざまな専門家や地域の人間が関わって子どもを支援していこうという傾向になってきており、連携のあり方はますます重要とされる問題だといえよう。
連携のあり方に関しては、これまでにも様々な観点から報告や提案がなされてきているが、連携といっても組織的なもの、個人によるものなど幅広いものである。では、実際にSCが配置されている中学校の教師はSCとの連携に対してどのように考え、行動し、その結果、どのような効果を得ているのであろうか。
また、教師は、学校組織の中で自らの職務のみを遂行しているわけではない。学校組織の中で、一教員としてうまく機能することが第1条件(伊藤,1997)である。生徒支援の場面における、教師の連携に対する意識・態度は、年齢やSC配置年数といった属性だけではなく、学校の連携状況の影響を受けることは十分に考えられる。そこで、SCの有効性を左右する要因として連携に注目し、実際にSCが配置されている中学校の教師に対する意識調査を通して、現在の現状を明らかにすると共に、SC配置による効果との関連を検討することで、今後の連携のあり方について考察していくことした。
目的
SCが配置されている中学校の教師を対象に、SC及びSCとの連携に対する評価を求め、それらが性別、年代、役職、SC配置年数によりどう異なるかについて検討する。
また、SC配置による効果に教師の連携に対する意識・態度や学校の連携状況がどのように影響するか、これらの関係を明らかにする。
そして、その結果をふまえて、今後の連携のあり方について考察を行う。