U. 共感疲労の成り立ちと先行研究 


ストレスフルな出来事の開示により被開示者に生じる影響に対しては、二次的外傷性ストレス(Figley, 1983)、代理トラウマ(McCann, & Pearlman, 1990)、共感疲労(Joinson, 1992)など様々な名称が使用されており、日本においてもその呼び名、訳は統一されていない(西・野島, 2002)。
本研究では、このストレス反応の名称について「共感疲労」という言葉を採用した。被開示者が開示を受けることによりストレスを生起させるのは、その開示者に共感することが主な要因として考えられている。共感疲労とは外傷体験などの被開示やそれに対する援助が行われる環境で経験するストレスの特徴をよりよく表した用語とされている(Figley, 1999)。例えば、医療従事者や、セラピストにおいて、共感性は相手の状態や外傷的な体験を理解するのに役立つ能力として必要とされるが、それによって相手と同様の苦痛を感じたり、自身に同様の経験がある場合にはその時のことを思い出したりして、ストレスを生じさせる。このことより、本研究でも外傷体験などストレスフルな出来事の開示により開示者に感情移入した被開示者に生じる影響の名称として最も適切であると考え、この名称を採用した。


V. 外傷体験となる出来事