3.自己意識特性

 ところで、先述のように、嫉妬感情は複合感情と考えられているが、さまざまな感情や情動の強度に影響を与える要因として、環境的要因や個人的要因などが考えられる。その個人的要因の一つに自己意識特性があげられる。

 自己意識特性とは自己に注意を向けた状態になりやすい性格特性である。Fenigstein,Scheier&Buss(1975)は、この個人差を測る性格尺度として自己意識尺度(Self-Consciousness Scale)を作り、この性格特性にはほぼ独立した公的自己意識私的自己意識の2次元があることを指摘した。公的自己意識とは、自己の外見など他者から容易に知ることのできる面について注意を向けやすい傾向のことで、私的自己意識とは、他者からは容易に知ることのできない、態度や動機や考え方といった自己の内面に注意を向けやすい傾向のことである。

 また、黒沢(1992)は自己意識尺度の構成において、4因子からなる尺度を構成している。その因子とは、Fenigstein et al.(1975)と同様の「公的自己意識」「私的自己意識」、Fenigstein et al.(1975)の「対人不安」と同じ概念を測定している「社会的自尊心」、そして(非社会的)自尊心」の4つである。

 自己意識特性は感情の強度に影響を与えることが明らかにされている。相手の行為によるその人物への好意感情や嫌悪感情といった、他者の直接的行為によって喚起されたものである対人関係感情は、公的自己意識と正の相関があり、私的自己意識とは関連がない(Fenigstein,1979)。また、漫画を見たときのおもしろさ感情や異性の写真を見たときの魅力度といった、他者からの直接的行為によって喚起されたものでない非対人関係感情は私的自己意識と正の相関があり、公的自己意識とは関連がないことが明らかにされている(Scheier&Carver,1977;押見,1980)。



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