まとめ
 
 発言と表情に注目した記述が多かった。初めは全く自発的な発言がみられなかったが、回を重ねるごとに自発的発言がちらほらみられるようになってきている。スタッフの感想からも活動が進むにつれ発言が増えてきていることがよくわかった。しかしやはり他の児童に比べて発言回数が少なく、話し合いでは主にグループの他のメンバーが話すのを聞いているだけであった。
 発言をしている場面を見てみると、全体を通して、小さな声であったり相手の方を見て言えなかったりと話すときのコツができていない。それらは話し合いのコツを学んだあとであってもそれほど改善されなかったようであるが、聞くときに相手の方を向くという聞くときのコツは第2回以降きちんとできていた。
 発言ができるようになった理由としては、スタッフとの関係が非常によかったことが挙げられるだろう。児童Bから反応が返ってこなくても熱心に働きかけをしていたり、褒めることをたくさんしていたことが児童Bの緊張をほぐし、信頼関係を築けたのだと考えられる。児童Bが書いた「スタッフへのお手紙」に「たくさん話してくれてありがとう」という記述がみられたことからも、スタッフが話をしてくれたことを児童Bは嬉しく思っていたことがわかる。そうしてスタッフとよい関係が築けたことが児童Bに発言する自信を与えたのだと考えられる。
 また、スタッフの感想に、ある児童が児童Bの発言を一生懸命聞こうとしている場面の記述がいくつも見られ、グループのメンバーとの関係も良好であったことが伺える。つまり、グループには安心できる環境が整っていたと言えるだろう。
 声の大きさについては、児童Bは自分の声が小さいことを自覚しており、さらに、声が小さいことに気づいただけでなく、大きな声で頼まれた方が気持ちがいいと気づくことができたようである。「ちょうどいい大きさの声で言う」など、自分に足らないスキルに気づくことはスキル向上のための第一歩だと考えるので、この活動がスキル向上に役立ったと言えるだろう。
 表情についての記述が多かったのは、発言が少なかったことから自然と表情に注目したのだと考えられる。初めは無表情なことが多かったが、徐々に笑顔を中心に表情が豊かになっていっている。毎回のふり返りシートの記録を見ると、「楽しかった」の項目は「とても」あるいは「まあまあ」にチェックがついていることから、楽しくないから無表情なのではなく楽しくてもそれを表情にすることができなかったのだと考えられる。
 
 
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