2009年度
卒業論文
サークル活動とアルバイトにおける
対人葛藤方略の選択
本研究の目的は3つである.1つは,サークル集団やアルバイトの集団の上位者に対して,大学生が普段どのような行動をし,その上位者との葛藤時には,どのような葛藤方略を選択するのかを明らかにすることである.2つは,サークル集団やアルバイト集団の集団特性,あるいはそれらの活動への取り組みの姿勢の違いが,集団の上位者に対する普段の態度や働きかけ方と関連があるかを明らかにすることである.3つは,課外活動に複数所属し活動している経験が,集団での普段の行動や葛藤方略の選択と関連があるかを明らかにすることである.
サークル集団とアルバイト集団における上位者に対する行動を測定するため,新井(2004)の対先輩尺度を一部改変して使用した.葛藤方略スタイルについては,自己志向性と他者志向性の2次元5分類からなる方略スタイルモデルを基にした,加藤(2003)の対人葛藤方略スタイル尺度(HICI)を一部改変したものを用いた.サークル集団の先輩との間に生じた葛藤状況と,アルバイト集団の上司との間に生じた葛藤状況とを想定したシナリオを呈示し,そのシナリオについて改訂版のHICI尺度を評定させ,サークル葛藤場面とアルバイト葛藤場面において大学生が選択する葛藤方略スタイルを明らかにした.そして,各集団の上位者に対する行動と,各場面において選択された葛藤方略スタイルの関連を検討した.このほかに,集団の集団特性や活動への取り組みの姿勢などについて被験者から回答を得て,上位者への行動や葛藤方略スタイルとの関連をみた.
その結果,集団の上位者に対しては礼儀行動を取りやすく,服従行動はあまり取らない傾向にあることが明らかになった.また,アルバイト集団よりもサークル集団の方が,親交行動や参照行動が生起されやすいということが示された.葛藤方略と行動の関連については,衝突回避行動が回避スタイルや譲歩スタイルなどの,自己志向性の低い解決方略スタイルを選択する一要因となっていることが示唆された.さらに,社会的に望ましい行動である礼儀行動が,サークル集団では問題解決に有効な統合スタイルに,アルバイト集団では根本的な問題解決につながりにくい回避スタイルに,それぞれ正の影響を与えていることが明らかにされた.また,サークル活動において積極性が高いほど礼儀行動と親交行動を取りやすいという結果から,積極的な姿勢で活動や臨んでいるかどうかが,上位者に対する行動の一部に影響を与えていることが示された.