〈T 問題及び目的 〉
私達は、しばしば、人を思い通りに動かそうとする。家族、友人、恋人、同僚…。しかし、思う通りにはなかなか動かせない。どうしても人を思う通りに動かしたい時、中にはいろいろと試行錯誤して、自分の思うようになるように努力し、相手に働き掛ける人もいるだろう。
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〈 U 分析方法 〉
1) 被験者
三重大学生231名、岐阜大学生20名、岡山就実女子大学5名
2) 実験期間
1998年11月
3) 調査用紙
話題は、「迷彩服であるアーミー」についてと、「クローン人間計画」についてである。「アーミー」と「クローン」の意見文の提示順序効果を排除する目的で、「アーミー」に関する意見文を1つめ、「クローン」に関する意見文を2つめに配置した『社会問題意識調査A』と、2つを入れ替えた『社会問題意識調査B』を作成した。 |
〈 V 結果及び考察 〉
結果は、「アーミー」の意見文を読むことによって、1回目の態度と2回目の態度が変わり、説得者の信憑性が関係しなくても「態度変容」することが明らかとなった(Fig.1)。
![]() Fig.1
![]() Fig.2
![]() Fig.3
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![]() Fig.6
![]() Fig.7
![]() Fig.8
「演技性」が強い人は、付き合う人や場面によって、全く別人のように振る舞ったり(Snyder,M)、自分を印象づけたり、人を楽しませるために、演技さえもする(Snyder,M)傾向があるので、一見「社会性」傾向が強く、相手に合わせやすい様にも感じるが、人から好かれたり、人と上手くやっていくために、全く別人のように振る舞うことを意図的にすることから、ある意味自己主張的なパーソナリティ、また積極性が強い傾向にあるといえる。 ![]() Fig.9
ところで、何故「アーミー」には態度変容が起こり「クローン」では起こらなかったのか(Fig.2)。これは、1つにPetty & Cacioppo(1977)の提唱する、「予告されると抵抗力が増す」に置き換えて考えられる。これを「クローン」で考えると、最近テレビや新聞、学校での講義など様々な所で「クローン問題」について騒がれている。従って、被験者の大半はこの「クローン」に関する情報を持っていたといえる。これがある種の「予告」という効果を生んでいたのかもしれない。また、以前に「クローン」に関する情報を得た時点で既に「態度変容」してしまっていたことも考えられる。これは、「クローン」に関する態度尺度が1回目から高い得点にあったこと(Fig.8)から考えられよう。
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<用語説明>
態度」
学校内や街中などを歩いている時、自分が苦手意識を持っている人等と出くわしそうになったら、「あっ、ちょっと嫌だな」「他に道はないかな」「声を掛けるべきか、掛けないべきか」…といった気持ちを持つようなこともあるだろう。 「3つの成分」
例えば、「省エネルギー」について考える時、「確かに環境保全につながる」という信念が『認知的成分』で、「省エネルギーは好ましい」と考える気持ちが『感情的成分』、「暑くても、エアコンを使うのはやめよう」とすることが『行為傾向成分』に当てはまるといえよう。 「説得」
例えば、全く勉強しない子どもに勉強して欲しいと考えている場合、我々はどうするだろうか。
ゆえに、「説得が十分成功した」と言えるのは、こうした様々な面での変化を伴った行動の変化が生じた場合であろう。すなわち、勉強をしないという態度を支えている要素が崩れてしまった場合である。「説得」とは「被説得者の賛同を得て、納得させる機能を持つもの」「態度変容」一定期間持続していた態度が、何らかの原因によって変化することといえよう。
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