清水 祐子
（教育学研究科 学校教育専修 学校教育専攻）
近年、不登校やいじめ、さらに「学級崩壊」と呼ばれる現象など教育現場における問題が深刻化し、社会問題ともなっている。
平成12年3月、「学級経営の充実に関する調査研究」を進めていた学級経営委員会（国立教育研究所内）では、いわゆる「学級崩壊」を「学級がうまく機能しない状況」とし、その主な原因として教師の指導力不足を第一にあげる。しかし、力量のある教師をもってしても状況が改善しない学級が存在することを指摘している。さらに、「学級がうまく機能しない状況」はその背景要因、直接要因が複雑に絡み合い、単純な対応関係をもたないこと、「かくあるべし」という固定観念や「望ましい姿」という思い込み等によって、状況がますます悪化するという逆説的な事態が起こることが多いと指摘し、その関わり方や見方の質的転換の必要性を強調する。
これまで、学級経営に関する研究の多くは、教師についてその指導性および児童・生徒に対する認知に着目している。そして、その結果から児童生徒側からの認知の重要性が示唆される。
「学級」は、教師と児童をその構成要因とし、今日の小学校における学級集団事態を予防・改善するにあたっては、「学級」そのものについての児童側からの認知を明確に捉えることが必要であると考える。その際、学級がうまく機能しない要因が複雑に絡み合う中、原因追求のためのうまく機能しない学級についての認知を捉えるだけでは、改善の方向性を見出すことは難しいと思われる。そこで、児童がうまくいっていると認知する学級は、どのようなものであるかを捉えることが学級改善に役立つものと考える。さらに、こうした児童のうまくいっている学級についての認知を、具体的な学級改善のための一つの指標として活用することができれば、教師による児童の日常観察を補い、教師の児童理解を深め、より効果的に、また予防・開発的に学級経営を推進するための一助となるものと考える。そうした尺度の開発が必要であると考える。
しかし、「学級」そのものについての児童側からの認知に基づく尺度開発に関する研究はほとんど見られない。よって、本研究では、児童のうまくいっている学級に対する認知構造を明らかにし、児童の認知枠組みによる「うまくいっている学級診断尺度」の開発について検討を行うこととした。
本研究は、児童がうまくいっていると認知する学級は、どのようなものであるかを明らかにし、児童側からの「うまくいっている学級診断尺度」を作成すること、およびその信頼性・妥当性を検討することを目的とする。
そのために、次の２つの研究を行う。
＜研究Ⅰ＞
１．予備調査
具体的に、児童がうまくいっていると認知する学級がどのようなものであるかを知るため、児童を対象に自由記述方式の予備調査を行い、児童側からの「うまくいっている学級診断尺度」を作成するための項目をKJ法により選定する。
２．本調査
１で選定された項目を児童に実施し、得られた結果を因子分析により因子構造を明らかにし、児童側からの「うまくいっている学級診断尺度」の作成とその信頼性の検討を行う。
研究Ⅰで作成された「うまくいっている学級診断尺度」と外的基準変数の関連を検討し、基準関連妥当性（併存的妥当性）を調べる。
Ⅲ－1.予備調査
方法
（１）対象者：三重県下の公立小学校5.6年生 合計112名（5年生45名，6年生67名）
（２）調査期間：2000年 10月23日～11月13日
（３）調査方法：調査は、「学級についての調査」として特別活動（学級活動）の時間に集団実施。
（４）調査内容：質問は、『「学級がうまくいっている状態であるとした時、あなたは、どんな時、どんな出来事や様子があれば、うまくいっていると思いますか。」できるだけ詳しく書いてください。３つ書いてください。』とした。回答は自由記述形式。
結果と考察
質問に対する回答をKJ法により分類したところ、児童がうまくいっていると認知する学級には、「協力・連帯」「元気・明るさ」「課題達成」「対処能力」の４つの領域が示された。
さらに、「協力・連帯」には、自己開示、自他相互関与、協力、連帯の４つの要因、「元気・明るさ」には、授業の楽しさ、教え合い、明るくいじめのないクラスといった３つの要因、「課題達成」には、聞くこと、他者承認、話し合いの促進、授業の促進といった４つの要因、「対処能力」には、教師信頼、問題解決の2つの要因が関連して生じてくることが見出された。
質問に対する児童の回答は、授業場面、生活場面の両場面にわたって、児童同士の関わり方を通して表現されたものが多くを占める。このことは、児童がうまくいっていると認知する学級の状況は、授業場面・生活場面を問わず、児童同士の良好な関係となって現われることが多いことを示すものであろう。また、児童にとって、児童同士の関係が極めて重要な価値をもつものであることを示しているといえよう。
Ⅲ－2．本調査
方法
（１）対象者：三重県下の公立小学校 5.6年生 合計110名（5年生84名，6年生26名）
（２）調査期間：2000年 12月15日～12月22日
（３）調査方法：調査は、「学級についての調査」として特別活動（学級活動）の時間に集団実施。
（４）調査内容：予備調査で得られた回答の中から不明瞭な文の表現をかえて、４１項目の質問紙を作成した。回答は５件法。
結果と考察
（１）因子分析の結果 110名の有効回答をもとに質問紙の41項目について因子分析（主因子法、バリマックス回転）を行った。因子数は、固有値の減衰状況及び解釈可能性から総合して判断し、４因子が抽出された。各因子は因子負荷量.4以上の項目でかつ他の因子における因子負荷量と.1以上の差のある項目のみその因子として採用した。（Table1参照）
因子Ⅰは、児童の協力関係や連帯意識に関連した状況と解釈され、「協同関係」因子と名付けた。因子Ⅱは、児童が安定した心地よさを感じている明るい学級の状況と解釈され、この因子を「明るい学級」因子と名付けた。因子Ⅲは、児童が人の話をよく聞き、安心して意見交換し、課題達成に向かっている状況と解釈され、この因子を「相互課題達成」因子と名付けた。因子Ⅳは、児童が肯定的に円満な問題解決状態を志向している状況と解釈され、この因子を「円満解決」因子と名付けた。抽出された４因子は、予備調査で得られた領域に対応したものであり、内容的にほぼ妥当であることが示されたといえよう。
（２）内的整合性の検討 各因子の信頼性を検討するため、内的整合性を示すCronbachのα係数を算出した。その結果、因子Ⅰにおいてα＝.865、因子Ⅱにおいてα＝.728、因子Ⅲにおいてα＝.736、因子Ⅳにおいてα＝.670という比較的高い数値を得られ、各因子においてまずまずの内的整合性があることが示された。
（３）各因子の関連構造 各因子の関連構造を検討した結果、「明るい学級」は、「協同関係」と「相互課題達成」のそれぞれと有意な偏相関が見られ、また、「協同関係」と「相互課題達成」にも有意な偏相関が見られた（Table2）。これらのことから、「明るい学級」は、「協同関係」と「相互課題達成」を含む三者の間で、密接な関連があると考えられる。また、「円満解決」と「協同関係」に有意な偏相関が見られたことから、相互の関連が示された。
Table 1 児童がうまくいっていると認知する学級についての因子分析結果
Table2 明るい学級因子と各因子との偏相関行列
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|
明るい学級 |
|
協同関係 |
|
相互課題達成 |
|
円満解決 |
|
|
明るい学級 |
1.000 |
- |
|
|
|
|
|
|
|
協同関係 |
0.376 |
** |
1.000 |
- |
|
|
|
|
|
相互課題達成 |
0.212 |
* |
0.301 |
** |
1.000 |
- |
|
|
|
円満解決 |
0.109 |
|
0.332 |
** |
0.030 |
|
1.000 |
- |
|
|
*…p＜.05 |
|
**…p＜.01 |
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|
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１．方法
（１）対象 三重県下の公立小学校の5学年21学級（512名），6学年21学級（556名），計42
学級（1068名）
（２）調査期間 2001年 10月５日～11月５日
（３）調査方法 調査は３種類の質問紙で構成され、まとめて「学級についての調査」として実施。
（４）調査内容 質問紙は、「うまくいっている学級診断尺度（本尺度）」「学級雰囲気測定尺度」「Ｐ－Ｍゲス・フー・テスト」の３種類で構成される。「学級雰囲気測定尺度」「Ｐ－Ｍゲス・フー・テスト」の２つは、本尺度の基準関連妥当性を検証するために外的基準変数として用いた。
「学級雰囲気測定尺度」：中井（1996）が作成した13項目からなる「学級雰囲気測定尺度（以下学級雰囲気尺度と記す）」。「あたたか・優しさ」「元気・はつらつ」の２要因で形成。５件法。
「Ｐ－Ｍゲス・フー・テスト」：能仁（1988）が作成した「Ｐ－Ｍゲス・フー・テスト」をもとに、調査者が文の表現に修正を加え作成。学級のＰ機能・Ｍ機能を、学級全体の機能の高さと、勢力の集中度の２面から測定することを目的とする。ａ）学級のＰ－Ｍ機能の測定：得られた結果から、能仁（1988）による「学級のＰ機能得点：Px」及び「学級のＭ機能得点：Mx」を算出する。Px・Mxは、各学級の全体的なＰ機能・Ｍ機能の度合いを表し、Px・Mxの値が大きいとき、学級のＰ機能・Ｍ機能が高いことになる。ｂ）学級のＰ－Ｍリーダー選択集中度の測定：田中（1964）による「集団勢力偏奇指数：Bic」を算出する。Pリーダー選択集中得点を「P Bic」、Mリーダー選択集中得点を「M Bic」とする。Bic得点は、その値が０に近づくほど、その学級集団のリーダーに偏りが小さいことを示し、その値が１に近づくほど、リーダーに偏りが大きいことを示す。
２．結果と考察
（１）本尺度と外的基準変数の関連の検討
本尺度合計及びその下位４因子得点と学級雰囲気尺度合計及びその下位２因子得点、Ｐ－Ｍ機能得点、Ｐ－Ｍリーダー選択集中得点のPearsonの相関係数を求めた（Table3）。その結果、本尺度合計および下位４因子得点は、いずれも学級雰囲気尺度合計及びその下位２因子得点と有意な正の相関関係が認められた。また、Ｐ機能得点、Ｍ機能得点とも有意な正の相関関係が認められた。Ｐリーダー選択集中得点（P Bic）、Ｍリーダー選択集中得点（ＭBic）とは有意な相関がみられなかった。
この点について、児童がうまくいっていると認知する学級は、Ｐ－Ｍ機能の高さと関わっているが、Ｐ－Ｍリーダー選択の集中度と直接的に関わっているとは言えず、Ｐ－Ｍリーダー集中度には、別の要因が働くことが推測される。以上の結果は、学級雰囲気および学級のＰ－Ｍ機能の両面から本尺度の基準関連妥当性（併存的妥当性）を概ね支持するものと考えられた。
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Table3 本尺度得点と学級雰囲気尺度得点、P機能得点、M機能得点、Pリーダー選択集中得点 （P Bic）、Mリーダー選択集中得点（M Bic）の相関係数 |
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本尺度合計 |
「協同関係」 |
「明るい学級」 |
「相互課題達成」 |
「円満解決」 |
|
|
学級雰囲気尺度合計 |
0.854 |
0.733 |
0.729 |
0.873 |
0.753 |
|
|
|
** |
** |
** |
** |
** |
|
|
「あたたか・優しさ」 |
0.869 |
0.753 |
0.740 |
0.876 |
0.772 |
|
|
|
** |
** |
** |
** |
** |
|
|
「元気・はつらつ」 |
0.443 |
0.371 |
0.378 |
0.476 |
0.382 |
|
|
|
** |
* |
* |
** |
* |
|
|
P機能 |
0.554 |
0.504 |
0.462 |
0.449 |
0.576 |
|
|
|
** |
** |
** |
** |
** |
|
|
M機能 |
0.480 |
0.471 |
0.406 |
0.320 |
0.535 |
|
|
|
** |
** |
** |
* |
** |
|
|
P Bic |
0.068 |
0.079 |
0.103 |
0.028 |
0.034 |
|
|
|
ｎ.ｓ |
ｎ.ｓ |
ｎ.ｓ |
ｎ.ｓ |
ｎ.ｓ |
|
|
M Bic |
0.075 |
0.212 |
－0.047 |
0.048 |
0.083 |
|
|
|
ｎ.ｓ |
ｎ.ｓ |
ｎ.ｓ |
ｎ.ｓ |
ｎ.ｓ |
|
N＝42（学級数） *ｐ＜．05， **ｐ＜．01
（２）本尺度３分類ごとの外的基準変数との関係の検討
調査対象４２学級（1068名）について本尺度合計得点（全体平均値：3.47，標準偏差：0.34）をもとに、本尺度をＨ群（平均値＋１SD以上）、Ｍ群（H.L群以外）、Ｌ群（平均値－１SD以下）の３分類群に分け、群ごとの学級雰囲気尺度得点、Ｐ－Ｍ機能得点の関係を検討するために、群間で一要因分散分析を行った。
＜本尺度３分類群ごとの学級雰囲気尺度得点との関係＞
分散分析の結果、学級雰囲気尺度合計得点及び下位２因子得点について、有意な分類群間差が認められた（学級雰囲気尺度合計：F(2，39)＝21.95，ｐ＜.001；「あたたか・優しさ」：（F(2,39)＝20.59，ｐ＜.001）；「元気・はつらつ」：（F(2，39)＝6.65，ｐ＜.01）。ＬＳＤ法による多重比較を行った結果（Table４-1～Table４-3）、学級雰囲気尺度合計得点は、Ｈ群、Ｍ群、Ｌ群のすべての分類群間に有意差があった（ＭＳｅ＝0.02，5％水準）。また、「あたたか・優しさ」得点についても、Ｈ群、Ｍ群、Ｌ群のすべての分類群間に有意な分類群間差があった（ＭＳｅ＝0.06，5％水準）。「元気・はつらつ」得点では、Ｈ群とＭ群、Ｈ群とＬ群の間に有意な分類群間差があった（ＭＳｅ＝0.03，5％水準）。以上の結果から、本尺度の基準関連妥当性は概ね支持されるものと考えられた。
Table４-1 本尺度３分類群の多重比較の結果 （学級雰囲気尺度合計）
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H群 |
M群 |
L群 |
|
Ｈ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
Table４-2 本尺度３類型群の多重比較の結果 （「あたたか・優しさ」）
|
|
H群 |
M群 |
L群 |
|
Ｈ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
Table４-3 本尺度３類型群の多重比較の結果 （「元気・はつらつ」）
|
|
H群 |
M群 |
L群 |
|
Ｈ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ群 |
|
|
n.s |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
＜本尺度３分類ごとのP－M機能得点との関係＞
分散分析の結果、P機能得点、M機能得点について、有意な分類群間差が認められた（P機能：Ｆ(2，39)＝10.48，ｐ＜.001；M機能：Ｆ(2，39)＝8.26，ｐ＜.01）。ＬＳＤ法による多重比較を行った結果（Table５-1～Table５-2）、Ｐ機能得点は、Ｈ群、Ｍ群、Ｌ群のすべての分類群間に有意差があった（ＭＳｅ＝0.20，5％水準）。Ｍ機能得点についても、Ｈ群、Ｍ群、Ｌ群のすべての分類群間に有意差があった（ＭＳｅ＝0.26，５％水準）。これらの結果は、本尺度の基準関連妥当性を十分に支持するものと考えられた。
Table５-1 本尺度３分類群の多重比較の結果 （Ｐ機能）
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H群 |
M群 |
L群 |
|
Ｈ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
Table５-2 本尺度３分類群の多重比較の結果 （Ｍ機能）
|
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H群 |
M群 |
L群 |
|
Ｈ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
（３）本尺度と学級雰囲気尺度分類、Ｐ－Ｍ類型との関係の検討
学級雰囲気尺度合計得点（全体平均値：3.55，標準偏差：0.22）、Ｐ-Ｍ機能得点（Px全体平均値：3.36，標準偏差：0.54；Mx全体平均値：3.23，標準偏差：0.59）をもとに、本尺度分類同様、それぞれについて学級雰囲気３分類群（高学級雰囲気（Ｈ）、中学級雰囲気（Ｍ）、低学級雰囲気（Ｌ））、Ｐ－Ｍ３類型群（Ｈ-ｐｍ、Ｍ-ｐｍ、Ｌ-ｐｍ）に分け、各々、群ごとの本尺度合計得点および下位４因子得点の関係を検討するために、群間で一要因分散分析を行った。
＜学級雰囲気尺度分類ごとの本尺度得点との関係＞
分散分析の結果、学級雰囲気３分類群で有意な群間差が認められた（本尺度合計得点：（F(2，39)＝21.58，ｐ＜.001；「協同関係」：（F(2，39)＝16.05，ｐ＜.001；「明るい学級」：（F(2，39)＝8.94，ｐ＜.01）；「相互課題達成」：（F(2，39)＝34.72，ｐ＜.001）；「円満解決」（F(2，39)＝12.80，ｐ＜.001）。ＬＳＤ法による多重比較を行った結果（Table６-1～Table6-5）、本尺度合計得点及び下位４因子得点は、いずれもH群、M群、L群のすべての分類群間に有意差が認められた（本尺度合計：ＭＳｅ＝0.06，5％水準；「協同関係」：ＭＳｅ＝0.05，5％水準；「明るい学級」：ＭＳｅ＝0.13，5％水準；「相互課題達成」：ＭＳｅ＝0.05，5％水準；「円満解決」：ＭＳｅ＝0.09，5％水準）。この結果からも本尺度の基準関連妥当性は支持されるものと考えられた。
Table６-1 学級雰囲気尺度３分類群の多重比較の結果 （本尺度合計）
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H群 |
M群 |
L群 |
|
Ｈ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
Table６-2 学級雰囲気尺度３分類群の多重比較の結果 （「協同関係」）
|
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H群 |
M群 |
L群 |
|
Ｈ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
Table６-3 学級雰囲気尺度３分類群の多重比較の結果 （「明るい学級」）
|
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H群 |
M群 |
L群 |
|
Ｈ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
Table６-4 学級雰囲気尺度３分類群の多重比較の結果 （「相互課題達成」）
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H群 |
M群 |
L群 |
|
Ｈ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
Table６-5 学級雰囲気尺度３分類群の多重比較の結果 （「円満解決」）
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H群 |
M群 |
L群 |
|
Ｈ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
＜Ｐ－Ｍ機能３類型群ごとの本尺度得点との関係＞
Ｐ－Ｍ機能３類型群間で一要因分散分析を行った結果、本尺度合計及び下位４因子得点について、有意な類型群間差が認められた（本尺度合計：F(2，39)＝7.38，ｐ＜.01；「協同関係」：（F(2，39)＝6.22，ｐ＜.01）；「明るい学級」：（F(2，39)＝4.42，ｐ＜.05）；「相互課題達成」：（F(2，39)＝4.14，ｐ＜.05）；「円満解決」（F(2，39)＝9.93，ｐ＜.001）。ＬＳＤ法による多重比較を行った結果（Table7-1～Table7-5）、本尺度合計得点は、Ｈ-ｐｍ群、Ｍ-ｐｍ群、Ｌ-ｐｍ群のすべての類型群間に有意差があった（ＭＳｅ＝0.09，5％水準）。また、「協同関係」得点も、Ｈ-ｐｍ群、Ｍ-ｐｍ群、Ｌ-ｐｍ群のすべての類型群間に有意差があった（ＭＳe＝0.07，5％水準）。「明るい学級」得点は、Ｈ-ｐｍ群とＭ-ｐｍ群、Ｈ-ｐｍ群とＬ-ｐｍ群の間に有意差があった（ＭＳe＝0.15，5％水準）。「相互課題達成」得点も、Ｈ-ｐｍ群とＭ-ｐｍ群、Ｈ-ｐｍ群とＬ-ｐｍ群の間に有意差があった（ＭＳe＝0.12，5％水準）。「円満解決」得点は、Ｈ-ｐｍ群、Ｍ-ｐｍ群、Ｌ-ｐｍ群のすべての類型群間に有意差があった（ＭＳe＝0.10，5％水準）。以上のように、本尺度合計及び下位４因子得点は、いずれもＨ-ｐｍ群とＬ-ｐｍ群の間に有意差が認められ、本尺度の基準関連妥当性が支持されるものと考えられた。
Table7-1 Ｐ－Ｍ機能３類型群の多重比較の結果 （本尺度合計）
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H－ｐｍ群 |
M－ｐｍ群 |
L－ｐｍ群 |
|
Ｈ－ｐｍ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ－ｐｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
Table7-2 Ｐ－Ｍ機能３類型群の多重比較の結果 （「協同関係」）
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H－ｐｍ群 |
M－ｐｍ群 |
L－ｐｍ群 |
|
Ｈ－ｐｍ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ－ｐｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
Table7-3 Ｐ－Ｍ機能３類型群の多重比較の結果（「明るい学級」）
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H－ｐｍ群 |
M－ｐｍ群 |
L－ｐｍ群 |
|
Ｈ－ｐｍ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ－ｐｍ群 |
|
|
n.s |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
Table7-4 Ｐ－Ｍ機能３類型群の多重比較の結果（「相互課題達成」）
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H－ｐｍ群 |
M－ｐｍ群 |
L－ｐｍ群 |
|
Ｈ－ｐｍ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ－ｐｍ群 |
|
|
n.s |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
Table7-5 Ｐ－Ｍ機能３類型群の多重比較の結果（「円満解決」）
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H－ｐｍ群 |
M－ｐｍ群 |
L－ｐｍ群 |
|
Ｈ－ｐｍ群 |
|
> |
> |
|
Ｍ－ｐｍ群 |
|
|
> |
|
|
|
|
ｐ＜.05 |
以上のように、研究Ⅰにおいて、児童がうまくいっていると認知する学級について、「協同関係」「明るい学級」「相互課題達成」「円満解決」の４因子が抽出された。また、Cronbachのα係数の高さより、４因子の内的整合性が認められた。偏相関分析の結果、「明るい学級」は、「協同関係」と「相互課題達成」の三者間で密接な関連があることが示唆され、また、「協同関係」と「円満解決」の相互の関連が示唆された。
研究Ⅱでは、本尺度合計および下位４因子得点は、いずれも学級雰囲気尺度得点、学級のＰ機能得点・Ｍ機能得点と有意な正の相関関係が認められた。さらに、本尺度得点により本尺度分類を行い、群ごとの学級雰囲気尺度得点、学級のＰ機能得点・Ｍ機能得点との関係を検討した結果、いずれも本尺度分類群に有意な群間差が認められた。多重比較の結果、本尺度得点の高い学級は、低い学級と比較して、学級雰囲気尺度得点、Ｐ機能得点、Ｍ機能得点が有意に高いことが認められた。同様に、学級雰囲気尺度得点による分類群、学級のＰ－Ｍ機能得点による類型群ごとに本尺度得点との関係が検討された結果、学級雰囲気尺度得点およびＰ－Ｍ機能得点の高い学級は、低い学級と比較して、いずれも本尺度得点が有意に高いことが認められた。これらの結果により、本尺度には基準関連妥当性が備わっていることが確認された。そして、4因子、28項目からなる本尺度の基準値を得た。
今後の課題として、さらに再検査法や折半法などによる信頼性の検討およびその他の重要な諸変数を外的基準とした妥当性の検討をはじめ、本尺度と学業成績や教師の指導行動・指導態度との関連の検討、また、児童のうまくいっている学級認知が高まる方法を見出すための何らかの学習を通した変化を求める実験的研究などが必要であろう。そして、学級経営に関する研究について、教師側からの研究と児童側からの研究を関連づける新しい学級経営の研究が待たれる。