5 「Webベース相互評価システム」を用いた授業実践と分析
5.1実践と分析1−Webベースによる相互評価システムの評価
・システム構成要素による評価:4項目
・実験による評価:既存に同様のシステムが少ないため、評価結果を棒グラフ表示するWebベースのシステムを作り、実験をした。
2項目10回実施し、1問あたりの生徒の反応が (平均-26.2秒)(正解率の差平均10%)で、本システムが優位であった。
・アンケートによる調査:実際に現物を操作したり、見て確認して比較した後、設問に解答するWebベースのシステムで実施した。11項目実施し、ほぼ90%〜100%以上の支持を得た。
5.2 Webベースによる相互評価システムを用いた授業の概要と分析
・対象:三重県内中学校 中学1年生 2クラス 71名
・実施期日:2002年5月7日、14日、21日
・授業時数:50分×2回を4回実施
・情報機器基本操作の一部とインターネットの利用、ワープロソフトによる名刺づくりを素材とした。
・システムから得られたデータでは、評価時間、回数、コメント文字数とも向上が見られた(図8)。
・アンケートから「評価から得たものがある」、「評価結果が参考になった」、「評価が楽しい」の各設問に対して、高い支持を得た。
図8 評価時間、回数、コメント文字数
図9 アンケートより
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さらに、以下の分析を実施した。
@自己・相互評価データによる分析:8項目
A自己・相互評価データ、コメント、作品などによる質的な追跡調査:過小評価群と過大評価群について
B技能向上についてのアンケート:9項目
C評価時のアンケート:8項目(以下略)
*@〜Cについてはそれぞれ、相互評価1回目と2回目時のデータをもとにしている。
以上の分析より以下の結果が得られた(概要のみ示す)。
@評価結果の受容性
・追跡調査より:グラフとコメントによる評価結果が以後の作品制作や自己評価に影響を与えている。過大・過小評価群でも9名中8名が評価結果を受容して作品を改善をしている。
A自己フィードバック性による内省的活動
・追跡調査より:自己フィードバック性による内省的活動は過大・過小評価群にも見られ、その後作品も質的向上
・評価時のアンケートより:相互評価の結果が「改善の参考になった」と「やる気につながった」では、「はい」と「ややはい」の合計が90%近くを占め、「いいえ」が0であった。
B学習集団内での客観性
データより
自己評価結果と相互評価結果とを比較したグラフより、1回目に比べて2回目の評価値の分布のばらつきが減少した。
・評価時のアンケートより:@「作品に対する評価をきちんとできたか」は、2回目で約90%の生徒が肯定し、「いいえ」と答えた生徒が0となり、「はい」が30%近く増加している。A「評価の結果が満足であったか」については、2回目で約80%が肯定しており、「いいえ」が2人に減少し、「はい」が17%増加している。B「評価結果が適切だったか」については、「いいえ」が1人に減り、「はい」が20%増加している。
これらのことから、生徒はきちんと評価に取り組み、評価結果は適切で、その結果に満足していることがわかる。
技能向上についてのアンケートより、生徒は実際に技能的にも向上していると考えていることが確認できた。
なお、アンケートのその他の項目でも、評価活動に肯定的な回答が80−90%であった。
本システムの分析性
本システムによって得られたデータを表計算のシートに貼り付けるだけで、多様な分析が可能となる。システムによる分析性を高めるために図10、図11のようなグラフを即座表示できるシートを附属機能として開発した。
図10は、2回の相互評価と自己評価の結果をもとに、一致評価群、過小評価群、過大評価群などと、評価結果の推移を1枚のグラフで表示できるものである。
図11は、2回の相互評価と自己評価の結果をもとに、個人別の自己評価と相互評価との乖離状況を示すもので、評価結果の乖離状況が著しい生徒を即座に見つけ出すことができる。
これにより、下記の利用が考えられる。
@ 授業時に課題のある生徒を発見し、授業時間内にタイムリーに観察や指導できる。
A 授業の改善のための基礎資料づくりが可能となる。