1.児童に対する認知における、各尺度の因子構造について @子ども観尺度(子ども観)について 子ども観尺度26項目について、因子分析(主因子法、バリマックス回転)を行なった(Table2)。なお、分析対象は、1〜8回目の質問紙で有効回答とみなされた分析対象者データをすべて連結したものであり、全データ数は110である。因子数は吉田・佐藤(1991)の研究から判断して、6因子とした。その結果、先行研究と多少の相違はあるものの、第1因子「事実を見通す力」、第2因子「理解の困難さ」、第3因子「公平さの要求」、第4因子「個性」、第5因子「自己中心性」と解釈可能であったが、第6因子は解釈することができなかった。また、各因子のα係数は0.74、0.86、0.97、0.79、0.81、0.58であった。 そこで、本研究では解釈可能、かつ、信頼性が高かった第1因子から第5因子において、因子負荷量が0.50以上で他の因子の負荷量が0.40以下の項目の合計を各因子得点として分析に用いた。 Aパーソナリティ評定尺度(児童パーソナリティ評定)について パーソナリティ評定尺度12項目について、因子分析(主因子法、バリマックス回転)を行なった(Table3)。なお、分析対象は、2〜8回目の質問紙で有効回答とみなされた分析対象者のデータをすべて連結したものであり、全データ数は86である。因子数はこれまでの研究から判断して、3因子とした。その結果、第1因子で「親しみにくい−親しみやすい」、「近づきがたい−人なつっこい」、「にくらしい−かわいらしい」などといった項目に高い因子負荷量が見られ、「個人的親しみやすさ」因子と解釈した。第2因子では「だらしない−きちんとした」、「頭の悪い−頭のよい」、「ふまじめな−まじめな」などといった項目に高い因子負荷量が見られたため、「社会的望ましさ」因子と解釈することができた。第3因子では「外交的な−内向的な」、「無口な−おしゃべりな」、「なまいきな−なまいきでない」といった項目に高い因子負荷量が見られたため、「活動性」因子と解釈可能であった(Table3)。また、項目7を逆転項目と解釈した。さらに、各因子ごとに因子負荷量が0.40以上かつ他の因子と0.10以上の因子負荷量の差を示した項目の合計を各因子得点とした。α係数は、それぞれ0.82、0.67、0.66であった。また、各因子得点を合計したものを児童パーソナリティ評価得点とした。 Bパーソナリティ評定尺度(各児童パーソナリティ評定) さらに、パーソナリティ評定尺度12項目について、因子分析(主因子法、バリマックス回転)を行なった(Table4)。なお、分析対象は、2〜8回目の質問紙で有効回答とみなされた分析対象者のデータをすべて連結したものであり、全データ数は3090である。その結果、これまでの先行研究と同様に3因子を同様に抽出した。これによると、第1因子で「だらしない−きちんとした」、「ふまじめな−まじめな」、「たよりない−しっかりした」といった項目に高い因子負荷量が見られ、「社会的望ましさ」因子と解釈することができた。第2因子では「消極的な−積極的な」、「無口な−おしゃべりな」、「外交的な−内向的な」といった項目に高い因子負荷量が見られたため、「活動性」因子と解釈した。第3因子では「にくらしい−かわいらしい」、「親しみにくい−親しみやすい」、「近づきがたい−人なつっこい」などといった項目に高い因子負荷量が見られたため、「個人的親しみやすさ」因子と解釈可能した。また、項目7を逆転項目と解釈した。さらに、各因子ごとに因子負荷量が0.40以上かつ他の因子と0.10以上の因子負荷量の差を示した項目をの合計を、クラス児童数で割ったものを各因子得点とした。また、各因子得点を合計し、クラス児童数で割ったものを各児童パーソナリティ評価得点とした。 2.教育実習状況における、各尺度の因子構造について @状況評定尺度(教育実習イメージ)について 逆転項目を含む状況評定尺度11項目について、因子分析(主因子法、バリマックス回転)を行なった(Table5)。なお、分析対象は、1〜8回目の質問紙で有効回答とみなされた分析対象者データをすべて連結したものであり、全データ数は110である。その結果、これまでの先行研究と同様の3因子が同様に抽出され、第1因子を「積極性」、第2因子を「親密性」、第3因子を「不安」と解釈した(Table5)。また、項目5、8は逆転項目と解釈した。さらに、各因子ごとに因子負荷量が0.40以上かつ他の因子と0.10以上の因子負荷量の差を示した項目の合計を各因子得点とした。 Aパーソナリティ評定尺度(子どもから抱かれる自己イメージ) パーソナリティ評定尺度12項目について、因子分析(主因子法、バリマックス回転)を行なった(Table6)。なお、分析対象は、1〜8回目の質問紙で有効回答とみなされた分析対象者データをすべて連結したものであり、全データ数は110である。因子数はこれまでの先行研究から判断して、3因子とした。さらに、先行研究の結果と比較し、各因子の解釈を試みた結果、第1〜3因子に「社会的望ましさ」、「活動性」、「個人的親しみやすさ」が混在していると解釈した。そこで、これら3因子を合計した11項目の合計得点を自己パーソナリティ評価得点として分析に用いた。全11項目のα係数は0.84であった。 3.教職イメージ尺度の因子構造について 教職イメージ尺度19項目について、因子分析(主因子法、バリマックス回転)を行なった(Table7)。なお、分析対象は、1回目、8回目の質問紙で有効回答とみなされたデータをすべて連結したものであり、全データ数は110であった。因子分析の結果、6因子の構造がみられたものの、それぞれの因子を解釈することができなかった。そこで、これら6因子において、因子負荷量が0.40以上かつ他の因子と0.10以上の因子負荷量の差を示した17項目の合計得点を教職イメージ得点として分析に用いた。項目2、10を除くα係数は0.77であった。 |