A:尺度の因子分析の結果 <職業選択に関する自己効力感尺度について> 因子1:主体的進路選択尺度・・・自ら進んで自己の能力や興味を考え、将来のビジョンや職業を選択・決定してくことができるという確信を表す。 因子2:対処能力尺度・・・職業選択、決定に関して必要な行動が取れるこ とや、職業に就くに当たって、また就いてから困難への対処ができるという確信を表す。 因子3:情報収集能力尺度・・・職業についてのあらゆる情報を集めることができるという 確信を表す。 <進路実現意識尺度について> 因子1 :進路取り組みへの頑張り尺度 進路実現に向かい頑張って取り組んできた、または取り組んでいこうと感じていることを表す。 因子2 :人並み対応能力尺度 自分自身を人並みに何事にも対応していけると感じていることを表す。 B:実験結果 仮説1について〜職業選択に関する自己効力感尺度におけるプログラムの効果の分析〜 @職業選択に関する自己効力感尺度得点全体における分析 時間と群を要因とする2要因分散分析の結果、時間における主効果、実験群における主効果、また交互作用がみられた。さらに下位検定を行ったところ事前における実験群と統制群には有意な差がなく、事後における実験群、統制群には有意な差がみられており、実験群、統制群における事前・事後の比較では、統制群の事前と事後では有意な差はないが、実験群の事前と事後においては優位な差がみられた。したがって統制群よりも実験群において、「職業選択に関する自己効力感を高める」というプログラムの効果があったといえる。 fig.1職業選択に関する自己効力感尺度得点全体におけるプログラムの効果 時間の主効果(p<.001)、群の主効果(p<.05)、交互作用(p<.001) A職業選択に関する自己効力感尺度の各因子における効果の分析 各因子においても時間と群を要因とする2要因分散分析を行った。 因子1(主体的進路選択尺度)では時間(事前・事後)における主効果、群(実験群・統制群)における主効果、また、交互作用がみられた。下位検定においては、事前における実験群と統制群には有意な差がなく、事後における実験群・統制群の比較では有意な差がみられ、また、実験群、統制群における事前・事後の比較では、統制群においては事前と事後で有意な差はなかったが、実験群の事前と事後においては有意な差がみられたことから、統制群よりも実験群において、職業選択に関する自己効力感の中でも「主体的進路選択の自信を高める」という点でプログラムが有効であったことがわかる。 fig.2尺度の因子(主体的進路選択)におけるプログラムの効果 時間の主効果(p<.001)、群の主効果(p<.05)、交互作用(p<.05) 因子2(対処能力尺度)においては時間と群による主効果はなかったが、時間と群による交互作用はみられた。下位検定を行ったところ事前における実験群と統制群には有意差がなく、事後における実験群、統制群にも有意差はなかったが、実験群での事前と事後では有意差がみられており、統制群ではその有意差がないことから、対処能力への自信という点で因子1ほどではないが、実験群における効果はあったと考える。 fig.3尺度の因子(対処能力)におけるプログラムの効果 交互作用(p<.05) 因子3(情報収集能力尺度)においては時間における主効果と群における主効果がみられたが、交互作用はみられなかった。分散分析のグラフを見てみると統制群においても事前より事後で平均値が上昇する傾向がみられた。したがって統制群より実験群で情報収集能力という点で、プログラムの効果は認めることができなかった。 仮説2について〜進路実現意志尺度におけるプログラムの効果の分析〜 @進路実現意識尺度得点全体における分析 時間と群を要因とする2要因分散分析の結果、時間における主効果、また交互作用がみられた。さらに下位検定を行ったところ事前における実験群と統制群には有意な差がなく、事後における実験群、統制群には有意傾向がみられており、実験群、統制群における事前・事後の比較かは、実験群の事前と事後においてのみ有意な差がある事がみられた。したがって統制群よりも実験群において、進路実現意識を高めるというプログラムの効果があったといえる。 fig.4進路実現意識尺度全体におけるプログラムの効果 時間の主効果(p<. 01)、交互作用(p<.001) A進路実現意識尺度の各因子における効果の分析 また、各因子においても時間と群を要因とする2要因分散分析を行った。 因子A(進路取り組みへの頑張り)では時間における主効果、群における主効果、また、交互作用がみられた。下位検定においては、事前における実験群と統制群には有意な差がなく、事後における実験群・統制群の比較では有意な差がみられ、実験群、統制群における事前・事後の比較では統制群では事前夜事後で有意な差は生まれていないが、実験群の事前と事後においての優位な差がある事がみられた。よって統制群よりも実験群において、職業選択に関する自己効力感の中でも「進路取り組みへの頑張り」という点でプログラムが有効であったことがわかる。 fig.5因子A(進路取り組みへの頑張り)におけるプログラムの効果 時間の主効果(p<.05)群の主効果(p<.1)交互作用(p<.01) 因子B(人並み対応能力)においては時間における主効果のみがみられ、交互作用はみられなかった。よって、統制群より実験群においてプログラムの効果があるという仮説は人並み対応能力因子では認められなかったといえる。 仮説3について スケール値を測定した実験群における事前・事後の比較分析のためt検定を行った結果、 スケール値全体において有意な差がみられ、実験前より実験後のスケール値が上昇し、一方で各ス ケール値をみていくと、項目4(努力する意欲についての質問)を除きすべての項目で平均値は上 昇しており、特に項目1「職業につくことができる可能性」、項目3「職業に就くための見通し」の点で有意な差がみられた。 事前よりも事後でスケール値が上昇するという仮説は支持された。 fig.6スケール値の事前と事後の変化