総合考察

総合考察:

本研究では、不適切な養育を予防するサポートを行うために、その関係と構造からサポート内容を検討することを目的として、自己受容性と養護性という視点からその構造を分析・検討してきた。

自己受容性と養護性には比較的強い正の相関が見られ、自己受容性の視点から養護性の関係を見ると、自己受容度の高い人は養護性も高いことが明らかになった。

自己受容性の中でも、積極的に努力して自己の成長を図ることが養護性に大きな影響を及ぼし、ついで人とうまく関わることが影響を及ぼしている。このことから、自己受容性は子どもが好きであることや子どもとうまく遊ぶ自信があるといったような「直接子育てに関する要因」にはそれほど大きな影響を及ぼしているわけではないが、子育てに必要な「親としての資質」に影響を及ぼしていると考えられる。ただし、「親としての資質」の「自己抑制」という側面にはほとんど影響を及ぼしていない。

このような結果から、自己受容性を高めることは、不適切な養育態度を行う親の特徴としてあげられていた「親としての資質」と「直接子育てに関する要因」のうち、「親としての資質」を高めることに影響を及ぼすものであると言えよう。

自己受容性が養護性に及ぼす影響の男女の大きな違いは、男性の方は失敗を恐れず積極的に自分を成長させることが養護性の全ての下位尺度に影響を及ぼしており、女性の方は人とうまく関わっていくことと感情的・衝動的にならないことが養護性のほとんどの下位尺度に影響を及ぼしているという点である。この点は一般に言われている男性性と女性性の違いを反映していると考えられる。

このことから、虐待や不適切な養育態度を予防するためにどのようなサポートが必要かを自己受容の視点から検討すると、「親としての資質」を高めるために、男性には積極的に自分を成長させようする姿勢をサポートすることが効果的であり、女性には感情や欲求をコントロールすることと人とうまく関わっていく姿勢をサポートすることが効果的であると言えよう。また、自己受容性は「直接子育てに関わること」にほとんど影響を及ぼしていないと言えよう。

 

 

今後の課題:

自己受容性が養護性に影響を及ぼすことは証明されたが、自己受容性の影響は大きいとは言えず、自己受容性を高めるサポートを行うことが虐待や不適切な養育態度を予防することになるとは言えない。従って、養護性に影響を与える他の要因を検討・検証する必要があろう。

また、本研究ではサポートの指針としての提言しかできておらず、今後は具体的なサポートについても提言できるよう取り組んで行く必要があろう。






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