結果と考察






1. 恋愛意識とファッション行動、及びファッション情報への関心
  の関連性について

恋愛意識とファッションに対する行動量の間の関係、及びファッションに対する行動量と ファッション情報への関心の間の関係について調べるために、「恋愛意識尺度」「ファッ ション行動尺度」「ファッション情報への関心尺度」について項目全てを合計し、それを 得点とした「恋愛意識尺度」得点と「ファッション行動尺度」得点、また「ファッション 情報への関心尺度得点と「ファッション情報への関心尺度」得点について相関係数を求めた。 その結果、「恋愛意識尺度」得点と「ファッション行動尺度」得点との間に弱い相関係数 が見られた。また、「ファッション行動尺度」得点と「ファッション情報への関心尺度」 得点との間に強い相関が見られた。これらのことから、異性を強く意識する恋愛意識が高 いと、自分の服装を気にする行動、つまりファッション行動量が多いということが言える。 これは、異性を意識し、さらに異性の気をひこうとし、身体的特徴を魅力的に見せて呈示 しようとするため、ファッションにおける行動量が多くなる。また、ファッション行動が 多いとファッション情報への関心が高いということが言える。つまり、自己のファッショ ンを気にした行動、つまりファッション行動量が多い人はファッション情報を誰かに伝え たり収集したりする程度も高いということである。これは、中川(1983)の調査結果と同 じ結果である。 また、仮説には述べていないが、「恋愛意識尺度」得点と「ファッション情報への関心尺 度」得点との間にも弱い相関がみられた。これは、異性を気にする恋愛意識の高さとファ ッションの情報に対する関心の高さに関連があるということである。 以上のことから、恋愛意識とファッションの行動量、ファッション情報への関心の3者間 に関係はあるということが言えるかもしれない。というのも、3つの尺度それぞれに相関 関係が見られたからである。つまり、恋愛意識の高さを異性を気にする度合いだと考える と、異性に注目されようとして、自己の服装を魅力的に見せようと動機づけられるため、 現在流行しているファッションの情報を得ようと、雑誌を読んだり、TVのタレントが着 ている服に注目したり、また、流行を追ったファッションや自分のイメージを呈示したい ファッション、身体的魅力を強調するファッションをするという行動が多くなるというこ とが考えられる。ファッション行動とは、流行を取り入れたり、自分のスタイルを確立し たりすることである。また、ファッション情報への関心とは、雑誌やテレビから情報を取 り入れようと関心を持つことである。よってファッション行動を行うためには、ファッシ ョン情報を取り入れなければならないことがこの検証で明らかになった。しかし、この検 証では、ファッション行動とファッション情報への関心の相関関係があることは認められ た。よってこれは仮説1を部分的に支持するものである。 2. 恋愛意識の違いにおけるファッション行動量、及びファッション   行動量の違いにおけるファッション情報への関心について
1)「恋愛意識尺度」得点H M L群と「ファッション行動尺度」得点の関連性 「恋愛意識尺度」得点を同じ人数になるよう3群に分けたとき、恋愛意識が高い人ほどフ ァッションの行動量は多くなるのかどうかを確かめるため、1要因分散分析を行った。 その結果、「恋愛意識尺度」得点のL群とM群、L群とH群に有意な差がみられた。これは、 恋愛意識が低い人はファッション行動量が少なく、恋愛意識が中程度の人と高い人はファ ッション行動量が多いということが示唆される。そして、恋愛意識が低い者(L群)と平 均値周辺の者(M群)との差が大きく、平均値周辺の者(M群)と高い者(H群)との差は あまりない。つまり、異性をある程度意識している人は、あまり意識していない人よりも 流行を取り入れたり、自分のスタイルを確立したりするファッションの行動量が多くなる ということがわかる。よって、これは仮説1を支持するものである。 2)「ファッション行動尺度」得点H M L群と「ファッション情報への関心尺度」得点との関連性 「ファッション行動尺度」得点を同じ人数になるよう3群に分けたとき、ファッション行 動量が多いほどファッション情報への関心は高くなるのかどうかを確かめるために1要因 分散分析を行った。これは、ファッション行動量の程度がファッション情報への関心量に 違いがあるかどうかを検討しようとしたものである。 その結果、「ファッション行動尺度」得点のL群とM群、M群とH群、L群とH群にそれぞれ有 意な差がみられた。これは、ファッション行動量が少ない者は、中程度の人よりもファッ ション情報への関心が低く、また、ファッション行動量が高い者は、中程度の人よりもフ ァッション情報への関心が高いということが明らかになった。つまり、流行や自分に合っ たファッションの行動量の差によって、他者や雑誌、テレビなどからファッション情報を 取り入れようと関心を持つ「ファッション情報への関心」の違いがあるといえる。よって、 これは仮説1を支持するものである。 3. 恋愛意識とファッション行動の3因子、及びファッション情報   への関心の3因子の関連性について
「恋愛意識尺度」「ファッション行動尺度」「ファッション情報への関心尺度」について 因子分析を行った結果、恋愛意識尺度において1因子、ファッション行動尺度において3 因子(「ファッションスタイル行動」因子「流行行動」因子「購買行動」因子)、ファッ ション情報への関心尺度において3因子(「他者からの情報」因子「紙面情報」因子「メ ディア情報」因子)を抽出した。また、それぞれの因子に高い負荷を示した項目を合計し たものを因子得点とした。 「ファション行動」尺度における、「ファッションスタイル行動」とは、自分のファッシ ョンを気に留めているために起こる行動で、新作のファッションが出ると、すぐに着てみ たくなったり、衣服を購入する際に、自分の好みの色やデザインにこだわるといった行動 をするものである。また、「流行行動」とは、流行の衣服を着ていないと恥ずかしいと思 ったり、流行の服を着ていることで満足感を得ようとするために起こる行動で、流行遅れ の服は着なかったり、新しい服に買い換えるといった行動を起こす。さらに「購買行動」 とは、衣服の価格を気にしたり、高価な服を着ることで満足感を得るために起こる行動で、 外出着はなるべく高価な服を購入するなどの行動をするものである。 「ファッション情報への関心」尺度における「他者からの情報」とは、ファッション情報 への関心の示し方が他者から情報を取り入れようとするもので、ファッション情報に対す る関心を友人との会話や街角で見かける人の服装から取り入れることによって満たそうと するものである。また、「紙面情報」とは、ファッション情報に対する関心を雑誌や広告 などから取り入れることで満たそうとするものである。さらに、「メディア情報」とは、 ファッション情報に対する関心をテレビやファッションショーなどのメディアから取り入 れることで関心を満たそうとするものである。 以下は、「恋愛意識尺度」得点と「ファッション行動尺度」3つの因子得点の相関関係、及 び「ファッション行動尺度」得点と「ファッション情報への関心尺度」3つの因子得点の相 関関係を検討した。 1)「恋愛意識尺度」得点と「ファッション行動尺度」3因子の相関 「恋愛意識尺度」得点と「ファッション行動尺度」における3つの因子得点(「ファッショ ンスタイル行動」得点「流行行動」得点「購買行動」得点)との相関係数を求めた。 その結果、「恋愛意識尺度」得点と「ファッション行動尺度」における「ファッションスタ イル行動」得点の間に弱い相関が見られた。これは、恋愛意識が高いとファッションスタイ ル行動量が多いということである。つまり、異性を気にする恋愛意識が高まると、自分のフ ァッションスタイルを向上、維持するためにファッションスタイル行動量が多くなると考え ることができる。 また、「恋愛意識尺度」得点と「ファッション行動尺度」における「流行行動」得点の間に 弱い相関が見られた。これは、恋愛意識が高いと流行行動量が多いということである。つま り、異性を気にする恋愛意識が高まると、流行に敏感になり、流行を追い求めようと、流行 行動量が多くなるのである。 「恋愛意識尺度」得点と「ファッション行動尺度」における「購買行動」得点の間では、弱 い相関がみられた。これは、恋愛意識が高いと購買行動量が多いということである。つまり、 恋愛意識が高い人は、自分のファッションスタイルや流行を意識した行動をし、衣服の価格 についても意識した行動をするということが明らかになった。  以上のことから、人は恋愛意識が高まると、ファッションスタイルを確立しようとしたり、 流行を追い求めたり、高価な衣服を購入したりとファッションの様々な行動をとろうとする ということが言える。 2)「ファッション行動尺度」3因子と「ファッション情報への関心尺度」3因子の相関  「ファション行動尺度」における3つの因子得点(「ファッションスタイル行動」得点「流 行行動」得点「購買行動」得点)と「ファッション情報への関心尺度」における3つの因子 得点(「他者からの情報」得点「紙面情報」得点「メディア情報」得点)の間の相関係数を 求めた。  その結果、「ファッション行動尺度」における「ファッションスタイル行動」得点と「フ ァッション情報への関心」における「他者からの情報」得点の間に強い相関がみられた。こ れは、自分のファッションを気に留めているために起こる行動であるファッションスタイル 行動量が多い人は、他者からの情報に関心があると言える。つまり、自分のファッションス タイルを確立するために、他者からの情報を得ようとする可能性を考えることができる。 また、「ファッション行動尺度」における「ファッションスタイル行動」得点と「ファッシ ョン情報への関心尺度」における「紙面情報」得点の間に比較的強い相関が見られた。これ は、自分のファッションを気に留めているために起こる行動の量が多い人は、ファッション 情報を雑誌や広告から取り入れようとする傾向があると言える。つまり、雑誌や広告から得 られた情報から自分のファッションスタイルの確立しようとする可能性が考えられる。 また、「ファッション行動尺度」における「ファッションスタイル行動」得点と「ファッシ ョン情報への関心」尺度における「メディア情報」得点で弱い相関が見られた。これは、自 分のファッションを気に留めているために起こる行動の量が多い人は、ファッション情報を テレビやメディアなどを利用して取り入れようとする傾向が強いということである。つまり、 ファッションスタイルを確立しようとすると、ファッション情報を他者、紙面、メディアと あらゆる所から取り入れたいと関心を持つといえる。  「ファッション行動尺度」における「流行行動」得点と「ファッション情報への関心尺度」 における「他者からの情報」得点との間に比較的強い相関が見られた。これは、流行を気に している流行行動の量が多いとファッション情報を他者から取り入れることが多いというこ とがいえる。 そして、「流行行動」得点と「紙面情報」得点、及び「流行行動」得点と「メディア情報」 得点の間に弱い相関がみられた。これは、流行を意識する流行行動量が多いとファッション 情報を紙面情報とメディア情報から取り入れると言える。つまり、ファッションの流行に 敏感 な行動の量が多いとファッション情報を他者から取り入れることや雑誌などの紙面情報と テレビなどのメディア情報などあらゆるものを情報源としている可能性が考えられる。  「ファッション行動尺度」における「購買行動」得点と「ファッション情報への関心尺 度」における「メディア情報」得点の間に弱い相関がみられた。これは、高価な服を選ん で購入している購買行動量が多いとファッション情報をメディアから取り入れることが比 較的多いことが示唆される。つまり、ブランドものなど高価なものを身につけている人は、 その情報をテレビなどのメディアから得ていると考えられる。 つまり、恋愛意識が高い人は、自分のファッションスタイルを確立したり、流行に敏感に なって追い求めたり、高価な服を身につけようとする行動に出る。そのためには、ファッ ション情報を取り入れなければならないので、ファッションスタイルの行動や流行への行 動を起こすためには他者からや紙面、メディアといった様々なところから情報を取り入れ ようとする。そして、購買行動を起こすためにはテレビなどのメディアから情報を得よう とするということである。 4. 男女差の比較について
恋愛意識とファッション意識(ファッション行動とファッション情報への関心)において 男性と女性の間で差があるかどうかを検証するため、「恋愛意識尺度」得点と「ファッシ ョン行動尺度」及び「ファッション情報への関心」の各因子得点を従属変数とし、性別(男 女)を独立変数とした1要因の分散分析を行った。 1) 恋愛意識尺度における男女差  「恋愛意識尺度」得点を従属変数とし、性別を独立変数としたの1要因の分散分析の結 果、5%水準で有意な差がみられた。しかし、得点の平均値が女性よりも男性の方が高く、 男性の方が恋愛意識が高いということが明らかになった。このことから、男性よりも女性 の方が異性を意識して恋愛意識が高いとする仮説2は支持されなかった。以上のことから 考えられることは、恋愛意識は男性も女性と同様に恋愛意識が高い人がいるということで あるである。 2) ファッション行動尺度における男女差  「ファッション行動尺度」における3つ因子得点(「ファッションスタイル行動」得点 ・「流行行動」得点・「購買行動」得点)を従属変数とし、性別を独立変数とした1要因 の分析の結果、「ファッションスタイル行動」得点、及び「流行行動」得点に関して1% 水準で有意な差がみられた。これは、男性よりも女性の方が自分のファッションに気をと めているということと流行に敏感であることが明らかになった。これは、仮説2を支持す るものである。「購買行動」得点に関しては、男女の間に有意な差はみられなかった。 以上のことから、ファッションに対する行動の違いは、ファッションスタイル行動と流行 行動に表れた。これは、男性よりも女性の方が自分のファッションスタイルを気にしてい たり、流行に敏感、もしくは流行に遅れないように行動をしやすいということがいえる。 女性が社会的に見た目を重視されるということを考慮に入れると、女性の方が自分のファ ッションに意識的になり、ファッション行動へと動機づけられることの現れかもしれない。 よって、仮説1は部分的に支持された。 3) ファッション情報への関心尺度における男女差  「ファッション情報への関心尺度」における3つの因子得点(「他者からの情報」得点 ・「紙面情報」得点・「メディア情報」得点)を従属変数とし、性別を独立変数とした1 要因の分散分析の結果、「他者からの情報」得点に関して有意な差がみられた。「紙面情 報」得点に関して有意な差がみられた。また、「メディア情報」得点に関しては有意な差 はみられなかった。 以上のことから、ファッションについて他者からの情報や紙面からの情報に関心を示すの は、男性よりも女性の方が多い傾向がみられた。「ファッション行動」だけでなく、「フ ァッション情報への関心」についても言えることは、女性にとって身体的魅力が社会的に 重視されやすいため、ファッション情報への関心が高まっている可能性が考えられる。ま た、男性よりも女性をターゲットとした広告や雑誌などは、ファッションや美しさを訴え るような情報が溢れており、ファッション情報に関心を示す可能性が高いことが考えられ る。よって、仮説1は部分的に支持された。
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