研究 2
目的:実験場面を用いて,以下の3つの仮説を検証する。
@統制的な教示が課題への興味を低下させる。
A"取り入れ"スタイルの被験者は課題への興味を低下させる。
B統制的教示は,"取り入れ"スタイルに対して特に大きな効果を及ぼす。先行研究(e.g., Ryan, 1982)から,興味低下の過程には,課題遂行中の不安・強制感が媒介すると考えられる。
方法
〈被験者〉研究1における質問紙に付された実験協力へのお願いに賛同が得られた100名(男36名,女64名)。
〈実験計画〉2教示(統制的教示・非統制的教示)×4動機づけスタイル(高動機づけ・自律・取り入れ・外的)×2時期(事前・事後)の被験者間内混合3要因計画。
〈実験課題〉Wechsler Adult Intelligence Scale(WAIS)に含まれている「積み木課題」をアレンジして用いた。
〈手続き〉実験・課題
〈従属変数〉興味(事前・事後),不安・強制感を質問紙によって測定した。また,課題解答数も記録した。
結果
1.各変数間の相関
大学生用学習動機づけ尺度の下位尺度の中で,「内発」と事前・事後の興味得点,「同一化」と事前の興味得点,「取り入れ」と不安・強制感得点の間に有意な相関が見られた。
2.教示,動機づけスタイルの興味変化への影響
興味得点に関して教示×動機づけスタイル×時期の分散分析を行った結果,二次の交互作用が見られたため(F(1,92)=2.74, p<.05),動機づけスタイルごと,教示条件ごとに2要因の分散分析を行った。その結果,"高動機づけ"のみで有意な差が見られ,非統制的教示条件において興味が上昇し,事後の興味得点は統制的教示条件よりも高くなっていた。また,教示条件に関しては,非統制的教示条件下において時期×動機づけスタイルの交互作用が有意な傾向であり(F(3,46)=2.24, p<.10),事後においてのみ有意な差が見られた(F(3,46)=2.93, p<.05)。"高動機づけ"と"取り入れ"との間の差は有意な傾向であった。
3.教示,動機づけスタイルの不安・強制感への影響
不安・強制感得点に関して,教示×動機づけスタイルの分散分析を行った結果,両方の主効果が有意でありF(1,92)=4.77, p<.05; F(3,92)=3.43, p<.05),統制的教示条件において,また,"高動機づけ"と"取り入れ"が"低動機づけ"よりも高い値を示した。
4.課題解答数の影響
課題解答数は,事後の興味得点と不安・強制感得点を説明し得る(β=.37, p<.001; β=-.33, p<.001)が,共分散分析を用いてその影響を統制した上でも,興味得点に関する"高動機づけ"における教示条件の効果,また,不安・強制感に関する教示,動機づけスタイルの主効果は有意であった。