全体考察
研究1では,複数の動機づけからいくつかの動機づけスタイルを特定し,研究2では,それらの動機づけスタイルが実際の課題解決場面においてどのように興味を変化させるかを検討した。その結果,それぞれ異なる特徴を有する動機づけスタイルが得られ,個人を複数の動機づけから記述することの必要性が示唆された。また,それらの動機づけスタイルは,非統制的な教示条件下で興味の変化に違いが見られ,"高動機づけ"は"取り入れ"よりも事後の興味が高いという結果であった。"低動機づけ"と"取り入れ"の間には課題解答数に差があるが興味の差が見られないことから,"高動機づけ"と"取り入れ"の間に見られた差は,課題解答数の影響もあるものの,動機づけスタイルの違いによるものであると考えられる。以上の結果から,取り入れ的動機づけは課題への興味に抑制的な効果をもつことが推測される。また,教示のような外的な要因のもつ意味に関しては,動機づけスタイルという個人の特性を考慮した上で論じる必要がある。しかし,興味と不安・強制感に関する結果は一貫しておらず,今後の課題として残された。さらに,本研究においては課題解答数のもつ意味が明確ではないため,その点を考慮してさらに研究を進める必要がある。