【方法】
1.調査対象者
三重大学生の1年生から4年生までの学部を問わず、主に人文学部の男女219名を調査対象者とした。このうち回答不備の者が8名いたため、211名(男性76人、女性146人)を分析対象とした。
2.調査期間
2003年12月中旬に行った。
3.調査方法
大学の授業時間内に教室において、回答依頼、回答方法及び諸留意点などの教示を口頭で述べた後、質問紙を集団施行した。回答の所要時間は10分程度であった。なお、他の者は個人的に依頼し、その場で実施してもらった。
4.質問紙の構成
@)パラノイド傾向尺度について
パラノイド傾向を測定する尺度は滝村(1991)のパラノイド傾向尺度を使用した。これは、「対人猜疑心」「社会的猜疑心」「家族への不満」「教師への反発」「仲間はずれ」の5つの下位尺度から成り立っている。滝村は高校生254名と少年院収容者男女178名にこの質問紙を実施したところ、下位尺度すべてについてα=.79以上を得ている信頼性の高い尺度である。本研究では、対象者が大学生であることと友人関係に対するパラノイド傾向の測定を目的としたため、「対人猜疑心」から11項目、「社会的猜疑心」から3項目、「仲間はずれ」から5項目を選出した19項目からなるパラノイド傾向尺度を作成した。各項目に対して「1.あてはまる」から「5.あてはまらない」の5段階で回答を求めた。
A)怒り表出尺度について
怒りの表出しやすさを測定するために、鈴木・春木(1994)のSTAXI日本語版を使用した。これは、Spielberger,C.D(1988)が状態−特性怒り尺度(STAS)と怒り表出尺度(AX)を合わせ、状態−特性怒り表出目録(STAXI)としてまとめたものを日本語に訳したものである。状態−特性怒り尺度(STAS)は「状態怒り」と「特性怒り」をそれぞれ測定する2つの尺度から成る。「状態怒り」は、情動状態としての怒りの強さを測定する尺度であり、「特性怒り」はパーソナリティ特性としての怒りやすさの個人差を測定する尺度である。怒り表出尺度(AX)は「怒りの表出」「怒りの抑制」「怒りの制御」の3つの下位尺度から構成されている。本研究では、怒りの強さや怒りやすさの個人差は問わず、怒り感情が喚起したときに、どのようにその怒り感情を表出させるのかを明らかにするために、怒り表出尺度(AX)のみを用いた。3つの下位尺度の中から、それぞれ5項目ずつ選出し、計15項目からなる怒り表出尺度を作成した。各項目に対して「1.あてはまる」から「5.あてはまらない」の5段階で回答を求めた。
B)友人とのつきあい方に関する尺度について
どのように友人とつきあっているのかを調べるために、落合・佐藤(1996)の友達とのつきあい方に関する35項目を用いた。これは、青年の友人とのつきあい方についての自由記述から作成されたもので、「本音を出さない自己防衛的なつきあい方」「誰とでも仲良くしていたいというつきあい方」「自分に自信を持って交友する自立したつきあい方」「自己開示し積極的に相互理解しようとするつきあい方」「みんなと同じようにしようとするつきあい方」「みんなから好かれることを願っているつきあい方」の5つのつきあい方から構成されている。本研究では、「本音を出さない自己防衛的なつきあい方」から5項目、「誰とでも仲良くしていたいというつきあい方」3項目、「自分に自信を持って交友する自立したつきあい方」から2項目、「自己開示し積極的に相互理解しようとするつきあい方」から3項目、「みんなと同じようにしようとするつきあい方」から2項目、「みんなから好かれることを願っているつきあい方」から1項目を選出し、計16項目からなる友人との関わり方に関する尺度を作成した。各項目について「1.あてはまる」から「5.あてはまらない」の5段階で評定を求めた。
C)ソーシャル・サポート欲求尺度について
様々なソーシャル・サポート研究の中から受け手のサポート認知に関する研究で多く用いられている久田・千田・箕口(1989)によって作成された学生用ソーシャル・サポート尺度の一部を改めて使用した。被験者の欲求を測定するために、援助してもらえる、という期待を表す「〜してくれる」という表現から、援助してほしい、という欲求を表す「〜してほしい」という表現に改めた。また、この学生用ソーシャル・サポート尺度は情緒的なサポートを問う項目が主であったため、道具的サポートに当たる2項目(「あなたが授業を休んだときには、その分のノートを貸してほしい」「あなたが悩んでいる時には悩みを聞いてほしい」)を付け足し、合計8項目のソーシャル・サポート欲求尺度を作成した。被験者が友人からどれくらい援助を受けたいと思っているのかを、各項目について「1.あてはまる」から「5.あてはまらない」の5段階で評定を求めた。
D)精神的健康尺度について
精神的健康を測定するために、孤独感と抑うつ傾向を取り上げることとした。まず、孤独感を測定するために、諸井ら(1991)の改訂版UCLA孤独感尺度日本語版を用いた。これは、Russellら(1978;1980など)が作成した改訂版UCLA孤独感尺度を日本語に訳したものである。Russellらは、孤独感を「人間関係の中で我々がこうありたいという願望があるときに、その願望が十分に満たされなかったり、逆に心理的な満足感を低下させるような結果が生じたときに感じる感情の一つ」と定義し、孤独感を状況的観点から発生し、単一次元で構成される感情であるととらえ、UCLA孤独感尺度を作成している。つまり、孤独感とは、自分が欲求していることと現実に起こっていることとの差から生じる不快な感情である。そこで、本研究では、ソーシャル・サポートを求める欲求があるときに、その欲求が満たされていない状況が人にどれくらい負の影響を与えるのかを検討するため、孤独感を一つの指標として取り上げることにした。この改訂版UCLA孤独感尺度日本語版の中から、自身がふさわしいと思った7項目を選出し、各項目に対して「1.あてはまる」から「5.あてはまらない」の5段階で回答を求めた。
次に、抑うつ傾向を測定するために、島・鹿野・北村・浅井(1985)の日本語版キャロル抑うつ自己評定尺度を用いた。これは、精神科臨床において広く利用されているHamiltonのうつ病の検査評定尺度Hamilton Rating Scale for Depression (HRSD;Hamilton, 1960)17項目版に対応した自己記入式尺度をCarol(1981)が作成したものを、島ら(1985)が日本語に訳したものである。抑うつ気分、興味や喜びの減退、いらだちや怒りっぽさ、集中力の低下などの主要な抑うつ症状を52の項目で網羅している。この日本語版キャロル抑うつ自己評定尺度の中から、自身がふさわしいと思った7項目を選出し、各項目について「1.あてはまる」から「5.あてはまらない」の5段階で回答を求めた
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