今後の課題
20代前半未婚女性の理想のライフコースが、職業人・妻・母親すべての役割を両立させることのできる両立コースであることが示唆された。まさしく、家事・育児も仕事も完璧にできスーパーウーマンが理想の女性であるとする「スーパーウーマン幻想」である。(2002,岡本・松下)確かにこのような女性は、職場での活躍によってその能力を社会的に認められることで充足感を得て、家に帰れば自分をいつも見守ってくれる理解ある夫と愛する子どもに温かく迎えられ、心身ともに癒されることがことでき、非常に魅力的である。しかし、本当にこのような状況は実現可能なのだろうか。仕事と家庭の両立が実現されれば、このような幸せな生活が送れるのだろうか。小泉ら(2003)によると、小学校高学年の子どもを持つ有職の母親で配偶者のある者を対象に質問調査をしたところ、仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが多くなると抑うつ傾向が高くなるという直接的な影響がみとめられた。また、仕事ストレッサ−、労働時間の増加によって生起した仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが多くなると、夫婦間の意見の一致を減少させ、子育てストレスを高めることを介して抑うつ傾向を上昇させるという間接的な影響がみとめられた。このように、家庭と仕事の両立は、女性にストレスを溜め込ませ、結果として心身や家庭生活に支障を来たす場合があるという危険性を孕んでいる。確かに両立というライフコースは理想的ではあるが、単に目指すべきものと位置付けるのではなく、その先にこのような問題があるということも前もって理解しておくことが大切であろう。そして、両立を選択した場合にあり得る問題に陥らないようにするための予防策を思案することが研究としての今後の課題であり、また安心して両立を含め自分の望むライフコースを選択していけるような社会保障やサポートシステムの早急な充実化も望むべきところである。
また今回20代前半未婚女性の女性性受容度・時間的展望度・結婚への期待度を得点化し、各項目に対してどれだけポジティブかということを測るのみに止まったが、詳しい内容を検討することによって、各項目に関して具体的にどのような思いをもっているのかを探り、日々移り行く現代の若年未婚女性のライフコースをさらに詳しくつきつめていくことも意義ある課題であると考える。
また対象として、21、22歳に限らず、より年齢の若い高校生・大学1〜3年生、高卒の新社会人、また逆に少し年齢の高い社会人経験1〜3年目の女性、そしてより結婚が身近なイベントとなるであろう20代後半〜30代前半の未婚女性、さらに実際に結婚を経験した既婚者の女性を対象にライフコースを調査し、20代前半未婚女性の将来や結婚に対する展望と比較検討することも非常に興味深い課題であると言えるのではないだろうか。