総合考察

 

今回、20代前半未婚女性を対象に、就業・結婚・出産などの主要なライフイベント、また性役割・女性性という視点から彼女らのライフコースの現状を検討したところ、様々なパターンの志向性を持つ女性が存在することが明らかとなった。そのタイプは、特に伝統・非伝統的性役割観と個人・家庭重視という各々対極した項目を持つ2軸から、主に4つのタイプに分けられた。非伝統・個人重視タイプ、伝統・個人重視タイプ、伝統・家庭重視タイプ、非伝統・家庭重視タイプ、以上4タイプである。

まず注目したいのが、各タイプの構成人数の割合だ。個人・家庭重視の軸を取り上げると、個人7:家庭13という結果となった。このことから、最終的には家庭を重視する傾向の者が多いということが示唆される。これは近年言われる、女性の社会進出を伴った個人重視の生き方の増加という現象が必ずしもそうであるとは言い切れないということが提示できよう。また各タイプにおける社会人と大学生の割合も注目すべき点である。中でも社会人においては、個人2:家庭8という結果となった。実際の発言内容を見ていても、高校卒、短大卒の社会人1〜4年目の20代未婚女性は、現在の仕事に納得し、充実している人がほとんどいなかった。そういった現状による就業継続意識の薄れが、このような結果となって表れているのではないだろうかと考える。

また志向傾向別にタイプ分けはされたが、そのタイプの完全な典型と位置付けられる極端な傾向を持つ人はいなかった。例えば非伝統・個人重視タイプに属する者でも、結婚願望や結婚に対する憧れを持っていたり、キャリアウーマンに憧れつつも、独身を貫き通す強い意志や固い決意は見られない。また、仕事を継続し、従来の結婚観や性役割観にとらわれず自分の思うままに生きていきたいと言っても、結婚相手の経済状態等の条件によってはその意志は揺らぎがちである。一方、このタイプの対極に位置する伝統・家庭重視タイプでも、全てを家庭に捧げ、家族のために犠牲になることを肯定的に受け止めている人はいないといってよいだろう。つまり、そのタイプの傾向を持ちつつも、それと矛盾する願望も同時に持ち合わせている場合が多いのである。これは、個としての自分の生き方と、結婚によって得られる家族の一員としての自分の生き方の両方を持っていたいという、両立志向の表れではないだろうか。現代の未婚女性にとって、両立こそが実は最も理想としているライフコースなのではないだろうか。全体的には、今後のライフコース、生き方に対する考えが曖昧で、まだ自分の生き方に揺るぎない思いや自信が持てないでいるというのが率直な印象である。

しかし、今回20代前半未婚女性を対象にすることによって、その曖昧さを含め、若年未婚女性の将来に対する展望を知ることができたことは本研究の最大の利益であると考える。

 

トップページに戻る