方法








1.調査対象
大学生54名(平均年齢20.1歳)を対象とした。通常講義の時間を利用し、集団実験が実施された。各群の人数はニュートラル(中立)群21人、ネガティブ(不快)群33人であった。

2.調査時期
  2004年12月上旬に実施

3.実験手順 
  初めに被験者には、本来の実験目的を隠して「様々な心理学的特性の性差に関する実験です」と教示した。これは、被験者が「気分に関する実験だ」ということに気づいてしまうと結果が歪んでしまう可能性があるためである。教示後、質問紙@(自尊心尺度・自我同一性)を実施し、全員が終わったことを確認して、約6分間の映像を呈示し、気分誘導を行った。その後、質問紙A(気分の確認・記憶課題)を実施した。実験終了時に、実験の本当の目的を話した。

4.質問紙の構成
  質問紙@はフェイスシート、自尊感情尺度、多次元自我同一性尺度から構成された。質問紙Aは気分確認、記憶課題から構成された。

(1)自尊感情尺度
自尊感情尺度は、Rosenberg(1965)により作成された自尊感情尺度の10項目を邦訳したものを使用した(山本・松井・山城,1982)。

(2)自我同一性尺度
自我同一性尺度は、Erikson(1959)の自我同一性の定義を基に作成されたものを使用した(谷,1997,1998)。Eriksonは自我同一性の定義を、(a)自我同一性の感覚とは、自分自身の斉一性・連続性と、他者に対して自分がもつ意味の斉一性・連続性が一致するという感覚である。(b)自我同一性の感覚には、自分が理解している社会的現実の中で、定義された自我へと発達しつつあるという感覚、すなわち心理社会的同一性の感覚が含まれるとしていて、そこから、谷(1998)は、「対自的同一性(自己についての明確さの感覚)」「対他的同一性(本当の自分自身と他者からみられているであろう自分自身が一致する感覚)」「自己斉一性・連続性(自己の不変性および時間的連続性の感覚)」「心理社会的同一性」という4つの下位尺度を作成した。   

(3)記憶課題
記憶課題では、単語「学校」に関するポジティブな経験を5つ想起させ、その後、各記憶のポジティブ度を9件法で評定させた。

5.気分誘導
 気分誘導は、被験者に約6分間のビデオを呈示して行った。ビデオは、ニュートラル群はディズニー映画“美女と野獣”、ネガティブ群は日本アニメ“火垂るの墓”から抜粋し、呈示した。ビデオ提示の際、被験者には気軽にみてほしいと教示した。





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