1.コミュニケーション力について
2.社会的スキルと適応について
3.対人関係能力育成プログラムについて
4.コミュニケーション力とを高める要素について
1.コミュニケーション力について
人と関わる力のことを本研究では、「コミュニケーション力」と呼ぶが、「コミュニケーション力」とは、「対人コンピテンス」や「対人関係能力」のことを指す。 「対人コンピテンス」とは、「社会的スキル(ソーシャル・スキル)」の上位概念とされ、社会的技能のレベルによって、人間関係を開始したり、維持していったりするために必要な能力のことである(高井,1996)。小野寺・河村(2003)によると、「社会的スキル」とは対人場面の中で、仲間や社会から受け容れられる形で個人および相手の双方に有効な行動、およびそれを実現させることを可能にする能力のことである。また、社会的スキルが対人コンピテンスを導く特定の行動であることから、実際に学校現場において対人関係能力を高めるための介入をしたり、その効果を測定する場合には、社会的スキルに注目することがその方策になる。このことから、本研究においてもコミュニケーション力の変化を、社的スキルの変化に注目することで検討していく。
2.社会的スキルと適応について
コミュニケーション力の一部である社会的スキルが高ければ、適応的に生きていくことができる。 社会的スキルが高い者は、人とうまく関わることができるので、相手を肯定的に認知し、またそれを表現したり、 相手の気持ちを汲み取って対応したりできる。そうすることで相手に好意や安心感、楽しさなどの正の報酬を与えることが できる上に、相手からもそれを受けやすく、人と関わることを楽しむことができる。
それに対し、社会的スキルの低い者は、上記のような正の報酬を与えることが難しく、 相手からも与えられることが少ない。社会的スキルの低い者にとって、人と関わることは煩わしく不快なことであることが 多いため、人との関わりを避けようとする。 そうすることで、人との関わり方を学習する機会が減り、社会的スキルが高まらないのである。 河村(2003)によると、社会的スキルの高い児童・生徒は、周りから承認されていると認知し、 侵害されていると感じず、学級生活満足感が高い。佐藤ら(1988)は、 小学6年生を対象にソシオメトリック指名法を実施した結果、社会的スキルが低いといえる 引っ込み思案児は仲間から拒否されることが多いと述べている。 また、戸ヶ崎・坂野(1997)は、児童の社会的スキルが学級内の地位に強く関係すると指摘している。 さらに、他者との関係を開始・維持するのに必要な社会的スキルを十分に学んでいない人は孤独感を強く感じるのである (佐藤,1996)。つまり、社会的スキルは適応を表す学級生活満足感や学級での地位、孤独感などと関連が深いといえる。 これらのことから、子どもが学級内で安心して過ごしていくために、社会的スキルを高めることが重要であると言える。 それに対し、社会的スキルの低い者は、上記のような正の報酬を与えることが難しく、相手からも与えられることが少ない。 社会的スキルの低い者にとって、人と関わることは煩わしく不快なことであることが多いため、 人との関わりを避けようとする。そうすることで、人との関わり方を学習する機会が減り、 社会的スキルが高まらないのである。河村(2003)によると、社会的スキルの高い児童・生徒は、 周りから承認されていると認知し、侵害されていると感じず、学級生活満足感が高い。 佐藤ら(1988)は、小学6年生を対象にソシオメトリック指名法を実施した結果、 社会的スキルが低いといえる引っ込み思案児は仲間から拒否されることが多いと述べている。 また、戸ヶ崎・坂野(1997)は、児童の社会的スキルが学級内の地位に強く関係すると指摘している。 さらに、他者との関係を開始・維持するのに必要な社会的スキルを十分に学んでいない人は孤独感を強く感じるのである (佐藤,1996)。つまり、社会的スキルは適応を表す学級生活満足感や学級での地位、孤独感などと関連が深いといえる。 これらのことから、子どもが学級内で安心して過ごしていくために、社会的スキルを高めることが重要であると言える。
近年、児童の社会的スキルという視点からの検討が数多くされているが、 それは、児童期の発達段階を考慮に入れているからである。 幼児期は、初めて親と離れて仲間と遊び始める時期だが、それでもまだ一人遊びが多く、 親や教師に依存している部分が大きい。それに対し児童期では、入学当初は教師依存が大変強いが、 子ども同士で一緒に活動することを通して、徐々に仲間関係は親や教師などのおとなから距離をとり始める (小石, 1995)。このように、児童期の人間関係は質的には多様化し、量的にも増えていくので、 友達などとの対人関係が複雑になってくる。そして、King&Kirschenbacm(1992)は、 小学校低学年が社会的適応上の問題が出てくる最初の時期であると指摘している。 また佐藤(1996)は、引っ込み思案行動は児童期を通じて比較的持続し、特に児童期後半以降になると 特別な指導や治療がない限り自発的な変容は起こりにくいと述べている。 これらのことから、児童期は対人関係のおける重要な時期であり、 児童期の子どもに社会的スキルを獲得できる機会を多く提供し、適応のサポートを行う 必要があるといえる。 近年、児童の社会的スキルという視点からの検討が数多くされているが、 それは、児童期の発達段階を考慮に入れているからである。幼児期は、初めて親と離れて仲間と 遊び始める時期だが、それでもまだ一人遊びが多く、親や教師に依存している部分が大きい。 それに対し児童期では、入学当初は教師依存が大変強いが、子ども同士で一緒に活動することを通して、 徐々に仲間関係は親や教師などのおとなから距離をとり始める(小石, 1995)。 このように、児童期の人間関係は質的には多様化し、量的にも増えていくので、 友達などとの対人関係が複雑になってくる。そして、King&Kirschenbacm(1992)は、 小学校低学年が社会的適応上の問題が出てくる最初の時期であると指摘している。 また佐藤(1996)は、引っ込み思案行動は児童期を通じて比較的持続し、特に児童期後半以降になると、 特別な指導や治療がない限り自発的な変容は起こりにくいと述べている。 これらのことから、児童期は対人関係のおける重要な時期であり、 児童期の子どもに社会的スキルを獲得できる機会を多く提供し、 適応のサポートを行う必要があるといえる。 児童期における学級内での適応という面だけではなく、将来子どもが社会に適応し、 幸せに生きていくというためにも、社会的スキルを高めていくことが重要である。 社会的スキルを高め、行動レパートリーを増やしていくことで、 様々な対人場面において適切なスキルを発揮できるからである。
近年、対人関係能力は企業でも求められている。 つまり、生涯を通して社会で生きていくためにに必要とされる能力であり、 重要であると考えられるようになってきたと言える。また、発達段階によって獲得すべき社会的スキル 異なっていることから、子どもが将来的に、その発達段階に応じた社会的スキルを、 うまく獲得し発揮していくことが必要である。そのためには児童期から、 人と関わることは楽しく、好ましいものであるいう認識、 人と関わっていきたいという気持ちを体験的に獲得することが望ましいのではないだろうか。
3.対人関係能力育成プログラムについて
相川(1999)は、児童の人間関係の問題を社会的スキルの学習不足をという観点で捉えれば、児童に何をどのように教えたらいいのか明白になると述べ、社会的スキルを学習することの重要性を示している。子どもの対人関係能力を育成するプログラムには、構成的グループ・エンカウンター(structured group encounter)、ソーシャル・スキル・トレーニング(social skills training)などがある。構成的グループエンカウンターとは、メンバーの「思考」、「感情」、「行動」にゆさぶりをかける課題であるエクササイズを中心に構成した集中的グループ体験であり(國分,1992)、好ましい人間関係を作ることと人間関係を通して自己発見することがねらいである。ソーシャル・スキル・トレーニングとは、行動理論を背景とした、個人に不足あるいはうまく表出されないソーシャルスキルを効果的に学習させるプログラムである(小野寺・河村,2003)。また、児童への予防的カウンセリングを目的として、上記のもの以外にアサーション・トレーニング(asartion training)、ピア・サポート・プログラム(peer support program)などもある。アサーション・トレーニングは、ソーシャル・スキル・トレーニングの一種であり、相手の立場や権利を侵すことなく、自分の意見や感情を抑圧せずに適切に表現する自己主張の仕方をトレーニングするものである。ピア・サポート・プログラムとは、ゲームやロールプレイングを活用した体験的なトレーニングを通して基本的な社会的スキルを段階的に育て、仲間同士がお互いに支え合えるような関係を作り出す取り組みである(滝,2001)。近年、これらの考えに基づく様々な取り組みが学校現場で実施されるようになってきた。例えば、池谷・葛西(2003)は、小学3,6年生の児童に対してピア・サポートプログラムを行い、社会的スキルの一部と自尊感情における児童の自己評価を向上させた。また、学級での適応感を示している学級享受感の向上や(藤枝・相川, 2000)、学級内での孤立児童の減少(河村,2001)といった効果も実証されている。 時間的展望とは、より遠くの将来や過去の事象が現在の行動に影響を及ぼすということへの展望である(白井, 1991)。
しかし、このようなプログラムを実施するにあたり、問題点も数多くある。活動直後は効果があっても、その後の般化や維持がされにくいことや、社会的スキルの測定法が妥当であるかなどである。これらについては今後検討が必要であろう。また、それ以外にも学校で取り入れる際に、教師の負担が大きいことや、活動は指導要領で決められた教科ではなく、学級経営の一環として扱われることから、時間の確保が難しいといった問題もある。
また、活動プログラムそのものや活動をすることの意義を広め、多くの学校で取り入られるようにすることも大切だが、学校だけなく地域の力を利用することも重要である。はじめにで述べた「土曜わくわくクラブ」のように教員を目指す大学生などがボランティアとして実践を行うことも一つの方法として考えられる。これらの効果を継続的に検討していくことで重要な視点を提供できると言えるであろう。
4.コミュニケーション力とを高める要素について
子どものコミュニケーション力を高めるための活動を実践するにあたって、子どもの実態にあった方法で行っていく必要がある。また、どんな活動をすればコミュニケーション力を高めることができるのか、目の前の子どもにどのようなスキルが不足しており、どのようなスキルを身につけてさせることを目標とするのかを見極めることが重要になってくる。宮前ら(2001)によると、学校で実施する社会的スキル訓練において取り上げたい社会的スキルとして小中学校の教員が回答するスキルの上位は、「自分の意見や考えをはっきり述べる」、「自分にとって嫌なことやできないことを上手に断る」、「上手に相手の話を聞く」であることを示していることから、子どもにとって主に他者に対して主張するスキルが苦手であると考えられる。
また、コミュニケーション力を高める際には、相手の気持ちや他者の立場を考えることも重要である。Mehrabian(1986)がコミュニケーションにおける感情情報伝達は、言語によるものはわずか7%で、ほとんどがノンバーバルによるものであり、なかでも55%が表情によるものであることを明らかにしている。このことから、相手の気持ちを考えるときには、発せられた言葉だけでなく口調や表情、しぐさといったノンバーバル行動にも注目する必要があると言える。しかし、Burgoon(1994)によると、子どもは、他者のメッセージを解読するとき、非言語行動手がかりより言語行動手がかりに重きをおいている。さらに笹屋(1997)は、小学5,6年生の男子は表情手がかりを無視して状況だけを基に他者の感情推測をすると述べている。このことから、コミュニケーション力を高めるためにノンバーバル行動についても取りあげることが効果的であると考える。ノンバーバル行動の重要性に気づき、他者のことをよく観察することによって、相手の立場に立って、相手のことをよく考えられるようになる可能性がある。また、普段自分はノンバーバル行動で適切に表現できているのかということや、自分では表現しているつもりでも、相手に伝わりにくいことがあるということに気づくことが他者について考えるきっかけになるのではないだろうかと考えた。
また、コミュニケーション力を高める要素として重要なのは、他者と協力して何かをすることで達成感を得ることではないかと考えている。協力することで、親密性が高まり、お互いに受容できると考えるからである。
これらのことを踏まえ、本研究のプログラムでは、自分の意見をきちんと言うことや他人の意見をしっかり聞くことの重要性に気づくための活動、ノンバーバル行動に焦点を当てた活動、他者と協力する活動を主に取り入れる。そして、これらの活動プログラムを実施することで子どものコミュニケーション力が高まったかどうか、人と関わることの楽しさや対人関係に対する肯定的な感情に変化がみられたかを検討し、子どものコミュニケーション力を高める活動の意義や問題点・改善点を考察していく。