結果



 一時的マインドコントロール尺度について因子分析を行ったところ、“日常的因子”と“非日常的因子”抽出された。クロンバックのα係数は全体でα=.84、日常的因子はα=.81、非日常的因子はα=.81だったため、高い内的整合性・信頼性が認められた。それぞれの因子について各項目得点を合計したものを「日常的得点」「非日常的得点」とし、その後の分析を行った。

 向上心尺度に因子分析を行ったところ、“成長動機因子”と“現実向上因子”の2因子が抽出された。クロンバックのα係数は全体でα=.80であり、高い内的整合性が認められた。それぞれの因子について各項目得点を合計したものを「成長動機得点」「現実向上得点」とし、その後の分析を行った。

 批判的思考態度尺度に因子分析を行ったところ、“探求心因子”、“論理的思考への自覚因子”、“証拠の重視因子”“客観性因子”の4因子が抽出された。クロンバックのα係数は全体でα=.79であり、高い内的整合性が認められた。それぞれの因子について各項目得点を合計したものを「探求心得点」「論理的思考への自覚得点」「証拠の重視得点」「客観性得点」とし、その後の分析を行った。

親和動機尺度の因子分析を行ったところ、“情緒的支持因子”、“注目因子”、“ポジティブな刺激因子”、“社会的比較因子”の4因子が抽出された。クロンバックのα係数は全体でα=.89であり、高い内的整合性が認められた。それぞれの因子について各項目得点を合計したものを「情緒的支持得点」「注目得点」「ポジティブな刺激得点」「社会的比較得点」とし、その後の分析を行った。

 次に、向上心、批判的思考態度、親和動機が一時的マインドコントロールのかかりやすさに与える影響を明らかにするために、一時的マインドコントロールのかかりやすさの2因子の得点を合計したもの(以下は、一時的マインドコントロール全体)と一時的マインドコントロールのかかりやすさの2因子(“日常的”“非日常的”)を予測変数、向上心・批判的思考態度・親和動機のそれぞれを説明変数とする重回帰分析を行った。
 一時的マインドコントロール全体は、「向上心」より弱い負の影響(β=-.14 p< .05)、「親和動機」より弱い正の影響(β=.22 p< .01)を受けていることが明らかとなり、日常的因子は「向上心」より弱い負の影響(β=-.14 p< .05)、「親和動機」より弱い正の影響(β=.24 p< .01)を受けていることが明らかとなった。
 その後、一時的マインドコントロール全体とその諸側面が、向上心、批判的思考態度、親和動機の諸側面からどのような影響を受けているかを明らかとするために、一時的マインドコントロール全体とその諸側面を予測変数、向上心、批判的思考態度、親和動機の諸側面を説明変数とした重回帰分析を行った。
その結果、一時的マインドコントロール全体は「現実向上」より弱い負の影響(β= -.14 p< .05)、「探求心」より弱い正の影響(β= .16 p< .01)を、「証拠の重視」より弱い負の影響(β=-.13 p< .05)、「社会的比較」より弱い正の影響(β= .12 p<.10)を受けていることが明らかとなった。
また、日常的因子は、「現実向上」より弱い負の影響(β=-.16 p< .05)、「探求心」より弱い正の影響(β=.18 p< .01)、「証拠の重視」より弱い負の影響(β=-.12 p< .05)、「情緒的支持」より弱い正の影響(β=.14 p< .10)、「社会的比較」より弱い正の影響(β=.14 p< .10)を受けていることが明らかとなった。