【問題と目的】
1.問題と目的
人が生きていく上で、身の回りにいる人との関わりは、とても重要なものである。物理的に他者の助けを借りなければ解決できない事態に直面することもあるであろうし、精神的な支えとして、他者を必要とする事もあるであろう。
しかし近年、身近な人との関わりに壁や距離を感じ、自分と友人との間に隔たりがあるように思う青年がいることが取りただされている。
そのような感情は疎外感と呼ばれ、近年少しずつ研究が成されてきた。宮下・小林(1981)によれば、心理学的な概念としての疎外感とは、客観的に他者から見て、その人が疎外されている、つまり他者からのけ者にされているということではなく、その人自身が主観的に疎外を感じている事を指すという。
では、そのように主観的に疎外感を感じてしまっている人は、そうでない人と比べて人や社会との関わり方に何か違いがあるのであろうか。
一般的に人は、周りの他者と友好関係を結び、それを維持したいという欲求を持っている。そのような欲求の事を親和動機というが、疎外感を感じている人の場合、他者といることで、安心感や好意的な感情を得ることが出来にくいため、親和動機を強く持たないことがあるのではないかと考えられる。
また、友人とは青年期の若者にとってもっとも身近に存在する社会的な集団であり、そのような集団に対して疎外感を感じてしまうことは、社会全般に対して自分から主体的に関わっていこうとする態度にも影響を与えてしまうのではないかと考えられる。つまり身近な社会に疎外感を感じていれば、他者と関わることに対して良い感情を得ることが出来ず、他者へ援助行動や親切行動をしようという気持ちが起こりにくくなるだろう。反対にそういった疎外感を感じていなければ、他者と関わることで良い感情を得ることが出来、援助行動や親切行動をしやすくなる事が考えられる。
従って本研究では、他者と関係を深めようとする親和動機や疎外感が、大学生の向社会的な行動、あるいは自己と他者のどちらを重視するのかということにどのような影響があるのかということを検討することとした。
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