V. 開示における要因と被開示者の
ストレス反応 


被開示における様々な要因が被開示者のストレス反応に及ぼす影響を検討した。その結果、開示者との関係では、回避と抑うつにおいて有意差が見られた(回避F(5,302)=3.25;抑うつ:F(5,302)=3.63 ともにp<.01)。「回避」においては恋人や異性の友人から開示を受けるよりも、家族から開示を受けるときの方が高い得点を示した。家族からの開示の場合は家族関係の悩みを開示されることが多く、家庭内の緊張感が被開示者をイライラさせたり、人と距離を置くなどの回避的な反応を示させたのではないかと考えられる。「抑うつ」においては同性の友人からの開示よりも恋人から開示を受けるときの方が高い得点を示した。Rubin(1970)は、恋愛や対人魅力の文献をまとめ、「愛すること」を相手の幸福や要求に対する積極的な援助と関与、親密なコミュニケーションなどから特徴づけた。このことより、恋人からの開示に対しては、援助を行ったり、密接に関わることが多くなることが考えられ、そうした関わりにより、一層共感や同情を示しやすくなるため、「抑うつ」の得点が高くなったと考えることができる。
体験前後における開示者との関係では、「情緒不安定」「回避」と、ストレス得点の合計において有意差がみられた(情緒不安定:F(2,305)=7.53,p<.001;回避:F(2,305)=5.86,p<. 01;合計:F(2,305)=8.48,p<.001)。「情緒不安定」においては、開示者がその出来事を体験する前から知り合いでなかった場合よりも、知り合いであった、知り合いであったかわからない場合の方が得点が高く、また、知り合いであった場合の方が知り合いでなかった場合よりも「回避」とストレス得点の合計が高くなった。この結果は、開示者と以前から知り合いであった場合は、その出来事の前後で開示者の変化を察知する事が出来るため、開示者にネガティブな変化があった場合には、被開示者も情緒的に不安定になるなどの反応を示しやすくなることが考えられる。知り合いであったかわからない場合の方が、知り合いではなかった場合よりも「情緒不安定」の得点が高くなったことについて、この場合、開示者が詳しく開示を行ったことが考えられる。そのため、開示者がその出来事をいつ体験したかわからなくても開示者のネガティブな反応を知ることができるので、被開示者のストレス反応が高くなったことが考えられる。「回避」については、外傷体験などのストレスフルな出来事の開示は被開示者にとっても辛いことであるため(Figley, 1983)、開示されたことを忘れようとするなどの回避的な反応を示すようになることが考えられる。


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