嫉妬感情は、社会的関係における嫉妬(social-relations jealousy)と社会的比較による嫉妬(social-comparison jealousy)に分類され、前者の中に恋愛関係における嫉妬がある。恋愛関係における嫉妬についての研究は、強烈な感情であるにも関わらず、現在日本では心理学的研究は数少ない。そこで、本研究では、恋愛関係における嫉妬をとりあげ、さまざまな感情に影響を与えるといわれる自己意識特性との関連を検討することを目的とした。
本研究では、嫉妬場面を恋人からの拒否の程度により3場面設定し、各場面ごとに、価値ある関係を失うことへの恐れ、自尊心喪失の恐れ、怒り、不安、嫉妬の5変数により嫉妬感情を測定した。自己意識尺度からは公的自己意識、私的自己意識、自尊心、社会的自尊心の4因子を抽出し、それぞれについて嫉妬感情との関連を検討した。その結果、公的自己意識の高い者は、嫉妬場面において嫉妬感情を強く喚起することが明らかになり、私的自己意識と嫉妬感情との関連はないことが明らかになった。また、自尊心の高い者は、嫉妬場面において自尊心喪失の恐れを強く喚起することが明らかになり、社会的自尊心の高い者は、嫉妬場面において不安を強く喚起することが明らかになった。
これらのことから、嫉妬感情と自己意識特性とは関連があり、特に公的自己意識との関連が強く、公的自己意識が高いという特性を持つ者は、そうでない者に比べ、嫉妬場面において嫉妬感情を強く喚起しやすいことが示唆された。さらに、恋人からの拒否が中程度の場面においては、その差は顕著であることが示された。