要約



本研究の目的は、就職活動を通して、就職活動者の職業忌避的傾向がどのように変化していくのか、その変化には自己概念の明確化が関係しているのではないかということを解明することにあった。また、職業忌避的傾向、自己概念の明確化に関連がある進路決定効力感についても関連を検討することとした。

 就職活動における就職活動者の職業忌避的傾向の変化を詳しくみるため、一般企業就職経験のある大学4年生と大学院生2年生に面接調査をおこなった。就職活動を始める以前の準備期から活動期現在の職業忌避的傾向、社会に出る自分を明確化できているかをインタビューによって回顧させた。明確化をH群とL群に分け職業忌避的傾向の変化をそれぞれ共通性が見られる3つにタイプ分けし、自己概念の明確化の関連を検討した。また、進路決定効力感についても就職場面の人間関係や親への困難対処ができるという自分の能力への自信と職業忌避的傾向の変化について、明確化H群とL群に分け検討した。

 結果として、主に明らかになったことは、自分の能力に自信があり明確化がうながされると職業忌避的傾向は低下する。しかし、自分の能力に自信があまりなければ明確化がうながされても職業忌避的傾向は高くなるということであった。そして、自分の能力に自信があり明確化がうながされないと職業忌避的傾向は高いまま変化が見られない。しかし、自分の能力に自信がなく明確化がうながされないと職業忌避的傾向は低くなっているということであった。

 自己概念が明確化したときは、具体的に就職困難場面を想起しやすい。自分の能力に自信があれば職業忌避的傾向が低くなり、困難対処についての自信があまりない場合、就職について嫌悪を感じてしまい職業忌避的傾向は高くなると考えられる。反対に、自分の能力について自信があっても、自己概念があまり明確化されなければ職業場面を具体的には想起しにくい。また自分の能力に自信があれば、就職困難場面を考えなくても、対処できる自信があるので、仕事の内容には意識が向きにくく職業忌避的傾向はあまり変化しない。逆に、自分の能力に自信がなければ、就職困難場面についてどうにかしなければという考えを持ちやすく、仕事の内容などに意識を向けどうにかしなければと考えるため職業忌避的傾向が低くなるのではないかと考えられる。