結果と考察4
4 進路決定効力感と職業忌避的傾向
進路決定効力感の欠如が職業忌避的傾向に影響を及ぼすことを古市(1995)は示した。そのことについて本研究でも示すことができるかを検討する。
進路決定効力感に関する回答と判断した発言を興味・将来・自信でカウントし、明確化H群L群でわけ、その発言回数を比較した。
進路決定効力感の職業への興味・将来への計画性についてのH群、L群の違いはあまり見ることができなかった。しかし、職場での人間関係困難、親の反対などの就職場面での困難が起こった場合での自分の能力への自信ではH群、L群の高・中・低の発言の割合に差があると思われた。
4−1 現在の職業忌避的傾向が高い
現在の職業忌避的傾向が高くなっているもの(H群:H,K,O,L,M,R,/L群:C,D,Q,I,P,S)、つまり面接を行った現在において就職することに対して嫌悪や逃避的意識を持っているものを取り出し発言割合の程度をグラフで示す。
Fig. 7 現在の職業忌避的傾向が上昇している明確化H群の自信に対する発言割合
Fig. 8 現在の職業忌避的傾向が上昇している明確化L群の自信に対する発言割合
明確化H群の方が自分の能力への自信が中から低程度のものが多い。つまり、「やってみ
ないとわからない」、親の反対には自信がない、人間関係の対応には自信がないなど、困難場面によって対処法を考えていても自信がない場合があるなど、対処できると考えているか、「自信がない」・「わからない」など自信を持ちきれない傾向がある。
就職場面の困難を想起し対処できるかを考えたとき、明確化H群はある程度自己を理解しているため、就職場面での自己を具体的に想像できるが、同時に困難対応ができない部分が想起され易く就職に対しての不安が高まり職業忌避的傾向が現れてしまうのではないだろうか。それに対して、明確化L群では自分への自信の程度が高い。しかし職業忌避的傾向への影響はあまりなく、職業忌避的傾向は高いままあまり変化していない。これは自分の能力への自信が高く、なまじ就職場面の対応に自信があるため、困難対処については考えなくても大丈夫であると考えているため、それについての就職することや就職意識に考えが向きにくいのではないか。
進路決定効力感の欠如が職業忌避的傾向へ影響すると古市(1995)は示したが、本研究では、明確化H群において同様の結果がみられた。困難への対処・自分の能力への中から低程度の自信しかなく、自己の明確化が促されると就職活動中の職業忌避的傾向の変化が激しくなり、現在の忌避的傾向が高まるということがわかった。明確化L群については、進路決定効力感が欠如していなくても職業忌避的傾向は高く、終始あまり変化はない。進路決定効力感が高いと自己概念の明確化を促進させるといわれている(浦上1996)が、例外的に自己概念の明確化があまりされないと、進路決定効力感が高くても職業忌避的傾向が高いまま低下することはない。
4−2 現在の職業忌避的傾向が低い
現在の職業忌避的傾向が低くなっているもの、つまり面接を行った現在において就職することに積極的、意欲的な意識を持っているものだけを取り上げ(H群:G,F,E,B/L群:A,J)、就職場面での困難対処への自分の能力の自信の程度を比較検討する。
Fig. 9 現在の職業忌避的傾向が低下している明確化H群の自信に対する発言割合
Fig. 10 現在の職業忌避的傾向が低下している明確化L群の自信に対する発言割合
明確化H群では、現在の職業忌避的傾向が低いものは自分への自信が高いものが多い。これは自己概念を明確化する過程で就職場面を想起しても困難対処場面への対応できる自信が高く、就職への嫌悪や逃避は怒りにくいと考えられる。
明確化L群では、H群と異なり現在の職業忌避的傾向が低くなっているものは、自分への自信が中程度から低い傾向にある。つまり、自己の明確化があまり促されない場合、自分への自信があまり高くないものが職業忌避的傾向が低くなっている。
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明確化H群
明確化L群
L H 自信
明確化H群の場合、自己概念の明確化が促進されるため、職業的な困難場面なども想起しやすい。その時自分への自信が高ければ、困難対処の方法など自分の能力へ自信を持っていた方が、就職というものに積極的になれると考えられる。つまり、自己概念の明確化が促されるときは自分の能力へ自信があると職業忌避的傾向は高くならない。
明確化L群の場合、自己概念の明確化があまり促されないため、職業的な困難などには意識が向きにくい。また、そのような場面が想起された時でも自分の能力への自信があまりなければ、あまり考えずにできると考えるのではないため就職活動を進めていくときに自分には何ができるのかを考えやすくなるのではないか。つまり、あまり自己概念の明確化が促されないときは、進路決定効力感の能力への自信が中程度から低ければ職業忌避的傾向も低くなると考えられる。