特性怒り別に見た重回帰分析


@)特性怒りH群のモデル

最初にTAS-20の下位尺度であるF1、F2、F3を説明変数, ストレスの各下位尺度である抑うつ、不機嫌、無気力 を基準変数として重回帰分析を行った結果、抑うつへは感情同定困難(F1)から、 不機嫌へは感情同定困難(F1)から、無気力へは感情伝達困難(F2)からそれぞ れ影響があることが判明した。
外的志向(F3)についてはストレスへの影響はみられなかった。

次にF1、F2、F3と抑うつ、不機嫌、無気力を説明変数,キレ衝動を基準変 数として重回帰分析を行った結果、キレ衝動へはTAS-20の感情同定困難(F1) から、ストレスの不機嫌からそれぞれ影響があった。ここでも外的志向(F3) からの影響は認められなかった。


A)特性怒りL群のモデル

最初にTAS-20の下位尺度であるF1、F2、F3を説明変数,ストレスの各下 位尺度である抑うつ、不機嫌、無気力を基準変数として重回帰分析を 行った。
結果、抑うつへは感情同定困難(F1)と感情伝達困難(F2)から、 不機嫌へは感情同定困難(F1)から、無気力へは感情伝達困難(F2)から それぞれ影響がみられた。
F3についてはストレスへの影響はみられなかった。
次にF1、F2、F3と抑うつ、不機嫌、無気力を説明変数,キレ衝動を 基準変数として重回帰分析を行った結果、キレ衝動へは、感情同定困難 (F1)、外的志向(F3)、不機嫌からの影響が認められた。


B)特性怒りのH群とL群の比較

特性怒りの高い人は,感情伝達困難から抑うつへの影響は見られなかった。
特性的に怒りやすい人は,自分の感情を伝えるのが難しい場合、おそらく 正確に言語で伝えるのを放棄し,怒り行動として表出するのではないかと 考えられる。そのため,特性的に怒りやすい人たちは、伝達が難しいから といって抑うつなどの静的な状態になるとはいえないとも考えられる。
このことは無気力にも表れており,感情伝達困難から無気力への関連は, 特性的に怒りを感じにくい人たちの方が若干強くなっていることが認めら れる。

また、L群では外的志向の高さがキレ衝動に影響していた一方で,H群では影響が 見られなかった。特性怒りの高い人は不快感情を怒り感情として表出することが 多いということが考えられる。
他方、特性怒りの低い人はそういった表現をあまりしないということが考えられ る。自身の感情をあまり意識しない外的志向のような行動をとっていても不快感 情の解消にはつながらず、そのため衝動的かつ非常に強い「キレ」という衝動に 影響を与える事になってしまうのではないかと考えられる。

また、今回は媒介変数としてストレスしか取り上げなかったことが原因であると も考えられる。つまり、他の変数が「キレ」に影響していると考える事もできる。
例えば、他人からどう見られているかという公的自己意識が高い場合、他者の視線があ ることで普段の怒り感情の表出が積極的に行われず、不快感情が鬱積していった結果と して「キレ」衝動につながるのではないかとも考えられる。


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