感情の言語化とストレス
ストレスを招きやすい性格傾向の1つとして、自分の感情を言語化することが苦手
であるということが考えられる。
山本・濱野(2002)は、Lazarusの「トランスアクショナル・ストレス・モデル」
を参考に、面接者が被面接者の感情の言語化を促進する介入が、心理的ストレス
にどのように効果的な変化をもたらすことができるかを検証した。感情の言語化
を促す心理的介入(面接)を実験群に行った結果、通常のカウンセリングに准じた
傾聴とリフレクションを用いた統制群の介入に比べて、ストレスの主観的強度を弱め、
否定的感情を始めとする心理的ストレス反応を軽減し、穏やかな肯定的感情を高めた。
これらのことから、感情の言語化をうまくできない人はストレスも高いのではないか
と考えられる。
さらに、感情の言語化が困難であるアレキシサイミア傾向という概念は、もともと
心身症に由来するものである。心身症は「身体疾患の中で、その発症や経過に心理
社会的因子が密接に関与し、 器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。
ただし神経症やうつ病など、他の精神障害に 伴う身体症状は除外する。」
(日本心身医学会、1991)と定義されている。簡単に言うと、身体疾患でありなが
ら心理社会的ストレスの関与が大きい病態で、心理社会的ストレスが身体疾患を引
き起こしたり、または、心理社会的ストレスによってかかっている身体疾患が治り
にくいようなものを心身症と言う。
こうしたことからも、アレキシサイミア傾向とストレスは密接な関係があると
考えられる。現代の若者に見られる「キレ」の問題は,感情をうまく表出するこ
とができない、特に言語表現が困難であるというアレキシサイミア傾向がその根底
にあると考えられる。すなわち,自身の感情状態について適切に処理ができないため
に多くの場面においてストレスを生じ,そのストレスが蓄積した結果「キレる」とい
う衝動的かつ非常に強い攻撃行動として発現すると考えられる。