「キレ」の定義
宗内(1998)は、「鬱積したコンプレックスが外的な刺激によって突発的に爆発的な攻撃
行動を生む過程および結果」と定義している。尾木(1998)は、「キレ」るの前段階として、
「ムカつく」状態が重要であるとし、その状態が続いた時に小さなきっかけで「キレ」や
すくなると論じている。
また、東京都(1998)では「何かのきっかけで頭の中が真っ白になり、前後の出来事を覚え
ていない、または通常ではありえない行動に移ってしまう状態」とされている。
また、坂下ら(2000)は、「あることを契機に、自己の衝動性を統制できなくなって起こす
行動」と述べている。
このように、「キレる」という定義には、研究者間で少なからず違いがみられる。
さらに、「キレる」現象の発生要因に関する検討も多いとはいえず、確かな証拠が得られ
ているとは言えない。そもそも「キレる」現象に関する実証的研究も多くはない。
崔(1998)は、「キレる」ということを「自分にとって不快なことを無理に押さえ込んでいた状況で、
何かをきっかけに自分の感情を普段とは異なる形で表す行為」と定義した。その上で、「キ
レる」行動段階に至る前に、つまり無理に自分を押さえ込んでいる状況で、「もうこれ以上
我慢できないかもしれない」とか「状況を考えず思いきり怒りを表現したい」などのキレ衝
動を経験する段階があることが予想されるとした。そして、キレることには「キレる」行動
自体とキレる以前の「キレ衝動」の2つの段階があると仮定して、キレ衝動尺度を作成した。
また、この研究では「キレ衝動」といらだち、状態不安との間に中程度以上の有意な正の相関
がみいだされている。つまり、キレ衝動が高い者は多くのいらだちや不安を抱えているという
ことが示された。