【予備実験】


1.予備実験の目的

♪大学生に、実験者が任意で選曲した明るい気分を誘導すると思われる音楽(Positive音楽)と、抑うつ気分を誘導すると思われる音楽(Negative音楽)を聴取させることによって、本実験で使用する曲を選曲する。
♪Positive音楽、Negative音楽を選曲する際、興奮するなどという喚起という感情に差がないかどうかを確認する。


2.被験者

実験で使用した音楽を聴取したことのない、国立A大学学生11名(男性1名、女性10名)


3.聴取音楽について

♪Positive音楽
・エステン 『アルプスの鐘』
・モーツァルト『ピアノソナタ第6番ニ長調K284』

♪Negative音楽
・モーツァルト『ピアノソナタ第14番ハ短調K457』
・ベートーヴェン『ピアノソナタ第17番ニ短調作品31-2より テンペスト第3楽章アレグレット』


4.実験手続き

1曲聞き終わるごとに、質問紙に回答してもらった。

質問紙の内容は、以下の通り。

フェイスシート・・・学部、年齢、性別、クラシック音楽の聴取頻度、クラシック音楽以外の聴取頻度、楽器の演奏経験(有りの場合は、楽器名と期間)、大学入学後音楽の講義を受講したか否か

音楽の評定・・・聴取した音楽がPositiveと感じたかNegativeと感じたかを測定するため、谷口(1995)の音楽作品の感情価測定尺度(AVSM)の第1因子(高揚尺度)の高揚・抑うつ各4項目を使用。また、喚起尺度として、独自に刺激的な、興奮する、テンションがあがるの3項目を使用した。さらに、聴取した音楽が好みだという1項目を加え、これらを全くあてはまらないからよく当てはまるの5段階で評定してもらった。


5.結果

各曲ごとに、高揚、抑うつ、喚起それぞれの尺度を構成する項目の素点を足した合計を、それぞれの項目の得点とし、高揚、抑うつ、喚起得点ごとに1要因4水準の分散分析を行い、その後TukeyのHSD法で多重比較を行った。

その結果、Positive音楽2曲とNegative音楽2曲の間で、高揚、抑うつ得点に5%水準で有意差が見られた。

また、喚起得点については、4曲間全てにおいて有意差が見られなかった。

このことより、今回の予備実験で用いた曲は、いずれの曲もPositive、Negaitiveのいずれかの性格を持ち、喚起の度合いは同じくらいであったと言えると思われる。

そこで、本実験では、Positive音楽にモーツァルトの『ピアノソナタ第6番ニ長調K284』を、Negative音楽にベートーヴェンの『ピアノソナタ第17番ニ短調作品31-2より テンペスト第3楽章アレグレット』を用いることとした。

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