全体要約
本研究では、自己開示について注目し、その中でも特にどのような自己開示動機を持っているかに
焦点を当てた。どのような思いから自己開示するかによって、話し手の開示への抵抗感、自己開示ス
タイルがそれぞれ異なり、それらが結果として、どのような反応を聞き手に求めているのかを明らか
にすることを主な目的とした。また、個人の特性としての自己評価と性差の検討も試みた。榎本(1997)
による4つの自己開示動機に基づく場面を作成し、合計97項目から構成される質問紙を実施した。
計239名からの回答を得た。
まず、性別における各下位尺度の平均値の差を明らかにするためにt検定を行った。
先行研究からも、女性は男性より自己開示量が多いとされているが、常に相手にも快く話を聞いてほ
しいという願望があるようだ。男性においては、人がたくさんいるような場所で自分の内面をさらけ
出すような話はあまりしないという結果であった。
また、場面ごとにおける各下位尺度の平均値の差を明らかにするために分散分析を行った。その結果、
「抵抗感尺度」では、自分の内面を相手に伝える理解・共感追求、親密感追求場面で抵抗感が高かった。
「受容的反応尺度」では、相談、理解・共感追求、親密感追求場面では相手からの受容的反応を種類に問
わず望んでいる。しかし、情動解放場面では相手の反応をそれほど重視していないことが示された。
また「自己開示スタイル尺度」からも情動解放場面では相手のことを考えずに、自分の都合で話をするということが示された。
次に、場面ごとの各下位尺度の相関を明らかにするため、ピアソンの相関係数を算出した。その結果、
「抵抗感尺度」ではどの場面でも抵抗感を感じる人はあらゆるマイナスの影響を考えることが明らかとな
った。「受容的反応尺度」では種類に関わらずにやはり、求められていた。また、「自己開示スタイル尺
度」ではどの場面においても相手の都合を考えないことが明らかとなった。
最後に、場面ごとの自己評価、抵抗感、自己開示スタイル、聞き手に求める受容的反応において階層的重
回帰分析を行った。その結果、どのような場面かに関係なく、話し手が聞き手に最も求めている要因は、
相手が自分の話に合わせた態度を示してくれて、何かアドバイスをしてもらうことであることが明らかと
なった。
以上のように、「自己開示」と言っても話し手にどのような目的があって話をするかによって、
話をすることに対する抵抗感、そのときにどのようなスタイルで話をするのか、そして、聞き手に求める反応が異なってくることが示される結果となった。

