全 体 要 約 

     
 
 

 時間的展望を確立することは、青年期の主要発達課題である自我同一性を確立することにつながる。時間的展望を確立させることは、自己の連続性の実感を強め、努力の継続や現在の苦痛の受容などを可能とするために、成人期や壮年期など青年期にとってこれからの人生を歩む上で必要不可欠な発達課題である。現代は超高齢社会であり、社会環境に大きく影響を受ける青年期における時間的展望の確立にそれが何らかの影響を与えているのではないかと考えた。青年期において、身近な高齢者の存在として祖父母が挙げられることから、本研究では祖父母との関わりが青年期の時間的展望に及ぼす影響を見ることを目的とした。また、祖父母の関わりから加齢に対するイメージを形成し、それが時間的展望に影響を及ぼすとも考えられたので、以上の検討を目的として大学生を対象に質問紙調査を行った。

 分析の結果、祖父母との関わりは青年期の加齢に対するイメージや時間的展望に影響を及ぼしていることが明らかになった。特に、命の繋がりを感じさせる「世代継承性促進」が強くなされていると、年齢を重ねることは社会的にも望ましく、充実し、また豊かなものであると思うようになることが示された。そしてそのイメージは将来に向かって努力するなどの「目標指向性」を高めることも示された。また、情緒的な援助を受けていると感じていると、未来のみならず自分の過去も受け入れられることも示された。これらは父方母方などの続柄や祖父か祖母かという性別でもそれぞれ異なっていた。なお、被験者の性別による違いは見られなかった。

 以上から、祖父母との関わりは青年期の加齢に対するイメージや時間的展望に影響を与えていることが明らかになった。被験者の性別による違いが見られないことから、性別よりもその人自身の経験や環境が影響するものと考えられる。父方祖父・父方祖母・母方祖父・母方祖母という性別や続柄によってそれぞれ影響が異なることに関しては、祖父母の持つ性役割やkinshipという関係性が考えられる。また、金銭的援助のような道具的な援助よりも、寧ろ情緒的な援助によって加齢に対するイメージを肯定的なものにしたり、時間的展望を確立、分化させることも示された。本研究で、時間的展望の確立という発達課題を達するのに、祖父母との情緒的な関わりの重要さが示唆された。