本研究では、子どもの自己効力感を高める効果的なアプローチを模索するために、小学校高学年を対象とした質問紙を実施し、一般的自己効力感と「学習」(国語・算数・理科・社会とそれ以外の教科)、「家庭」、「友人関係」の領域の効力感について調査した。そして質問紙を分析し、一般的自己効力感と特定の領域の効力感の関係について検討した。さらに、「制御体験」「代理体験」「言語的説得」という自己効力感への影響源が各領域の効力感にどのように影響しているかを分析した。
まず、一般的自己効力感と国語・算数・理科・社会の効力感、その他教科の効力感、家庭の効力感、友人関係の効力感それぞれの相関係数を算出した。全学年で、一般的自己効力感ともっとも相関が高かったのは、友人関係の効力感であった。また、学年別にみると、5年生において一般的自己効力感と友人関係の効力感に特に強い相関が見られた。これらの結果から、高学年の子どもにとって、特に友人関係が重要な領域であるということが示された。5、6年生において友人関係の効力感は、一般的自己効力感だけでなく、国語・算数・理科・社会の効力感にも密接に関連していた。そこから、安定した友人関係のある子どもは、落ち着いて学習できているとも考えられる。男女別でも相関分析を行った。男子は友人関係において一般的自己効力感と比較的強い相関があるものの、女子と比較するとそれ以外の領域との相関は低かった。一方、女子は国語・算数・理科・社会、家庭、友人関係いずれにおいても比較的強い相関を示し、その効力感が様々な要因によって影響をうけやすいことが示唆された。
より詳しく、各領域の効力感の一般的自己効力への影響を知るために、一般的自己効力感を従属変数、各領域を独立変数とした重回帰分析を行った。その結果、相関分析と同じように、特に友人関係の効力感が一般的自己効力感に影響を与えていることが分かり、学年別みても、5年生において友人関係の効力感が一般的自己効力感に有意な影響を与えていることが明らかになった。
さらに、各領域の効力感に影響を与える影響源がいかに影響しているかを分析するため、国語・算数・理科・社会と友人関係の効力感においては各効力感を従属変数、影響源を独立変数とした重回帰分析をおこなった。その他教科の効力感については、影響源を要因とした一要因の分散分析を行って、効力感を感じたときに各影響源を経験する頻度の比較をした。いずれの結果からも、制御体験が各領域の効力感に最も影響を与えていることが示された。
そして、子どもの興味関心を知るために、その他教科の内訳を分析した。その他教科では、その効力感を感じる教科に学年間で差があり、その学年で行われた行事などによって、それにまつわる効力感が影響をうけることが示唆された。
なお、家庭の効力感については、家族の構造による効力感の違いを予測し、家族の人数と家庭の効力感との相関分析を行ったが、その関係性は見いだせなかった。また、社会的スキルの発達の観点から、家族の人数と友人関係の効力感との相関分析も行ったが、こちらも関係性は見いだせなかった。
以上のことから、子どもの友人関係の効力感に着目したアプローチを行っていくことが、子どもの一般的自己効力感を高めるために効果的であると考えられる。今後、本研究をもとにしたプログラムの作成と実施を行い、実施後の調査をして、その変化を分析することで、より明確に効力感の関係を明らかにしていくことが望まれる。そうすることで、より効果的なプログラムの改良につながるだろう。
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