結果


1.尺度の構成
 
自己効力感尺度の因子構造および信頼性
 
全15項目について主因子法による因子分析(プロマックス回転)を行い、負荷量の絶対値が.35以上のものを採用し、因子負荷量の小さかった項目(3.私は友人に嫌なことを頼まれても断わることができると思う)を削除した。その結果、先行研究と同様に2つの因子が得られ、第1因子を「学業自己効力感」、第2因子を「対人的自己効力感」と命名した。
 各因子の内的整合性を検討するため、クロンバックのα係数を算出したところ、第1因子はα=.863、第2因子はα=.753を示し、高い内的整合性が認められた。
 
 
 
ストレス反応尺度の因子構造および信頼性
 
 まず、対人場面でのストレス反応の全12項目について主因子法による因子分析(プロマックス回転)を行い、負荷量の絶対値が.30以上のものを採用した。その結果、先行研究と同様に2つの因子が得られた。因子名についても、先行研究に従い、第1因子を不機嫌・怒り感情、第2因子を抑うつ・不安感情と命名した。
 各因子の内的整合性を検討するため、クロンバックのα係数を算出したところ、第1因子はα=.899、第2因子はα=.887を示し、各因子で高い内的整合性が認められた。
同様に、学業場面でのストレス反応について分析した結果2つの因子が得られ、第1因子を不機嫌・怒り感情、第2因子を抑うつ・不安感情と命名した。
 各因子の内的整合性を検討するため、クロンバックのα係数を算出したところ、第1因子はα=.910、第2因子はα=.842を示し、各因子で高い内的整合性が認められた。
 
 
 
コーピング尺度の確認的因子分析結果および信頼性
 
まず、対人場面でのコーピング尺度について事前に想定した通りの4因子構造となることを確かめるためにAmosを用いた確認的因子分析を行なった。4つの因子からそれぞれ該当する項目が影響を受け、すべての因子間に共分散を仮定したモデルで分析を行なったところ、適合度指標はGFI=.879、AGFI=.820、RMSEA=.095であった。さらに適したモデルを探るため、項目を削除して再度分析したところ、GFI=.91 6、AGFI=.871 、RMSEA=.071 と、最初のモデルよりもデータに適合した結果が得られた。第1因子は「対人・情動」、第2因子は「対人・問題」、第3因子は「個人・情動」、第4因子は「個人・問題」と、命名した。
 各因子の内的整合性を検討するため、クロンバックのα係数を算出したところ、第1因子はα=.866、第2因子はα=.658、第3因子はα=.540、第4因子はα=.727を示し、各因子で内的整合性が認められた。
 
 続いて、学業場面でのコーピング尺度についても事前に想定した通りの4因子構造となることを確かめるために同様にAmosを用いた確認的因子分析を行なった。4つの因子からそれぞれ該当する項目が影響を受け、すべての因子間に共分散を仮定したモデルで分析を行なったところ、適合度指標はGFI=.843、AGFI=.796、RMSEA=.081 であった。さらに適したモデルも探るため、項目を削除して再度分析したところ、GFI=.936、AGFI=.901 、RMSEA=.059と、最初のモデルよりもデータに適合した結果がられた。第1因子は「対人・情動」、第2因子は「対人・問題」、第3因子は「個人・情動」、第4因子は「個人・問題」と、命名した。
 各因子の内的整合性を検討するため、クロンバックのα係数を算出したところ、第1因子はα=.855、第2因子はα=.719、第3因子はα=.587、第4因子はα=.800を示し、各因子で内的整合性が認められた。
 
 
2.対人場面における自己効力感、コーピング、ストレス反応の関連について
 
対人、学業の両自己効力感とコーピングの関連について、「対人・情動」、「個人・情動」は「対人的自己効力感」から正の影響を受けており、「対人・問題」は「対人的自己効力感」から強い正の影響を受けていた。「個人・問題」は「対人的自己効力感」および「学業自己効力感」からやや弱い正の影響を受けていた。次に、対人、学業の両自己効力感とコーピングおよびストレス反応の関連について、「不機嫌・怒り感情」は「学業自己効力感」、「対人・情動」からやや弱い正の影響を受けていた一方、「学業自己効力感」から負の影響を受けていた。
 
 
3.学業場面における自己効力感、コーピング、ストレス反応の関連について
 
対人、学業の両自己効力感とコーピングの関連について、「対人・情動」、「対人・問題」および「個人・情動」は「対人的自己効力感」から正の影響を受けており、「個人・問題」は「学業自己効力感」から強い正の影響を受けていた。次に、対人、学業の両自己効力感とコーピングおよびストレス反応の関連について、「抑うつ・不安感情」は「個人・情動」からやや弱い正の影響を受けていた。
 
4.対人場面における自己効力感とコーピングの相関
 
対人場面におけるコーピングと学業自己効力感、対人的自己効力感、コーピングの相関を求めたところ、対人的自己効力感が「対人・情動」、「対人・問題」、「個人・情動」、「個人・問題」と高い正の相関を示した。また、学業自己効力感は「個人・問題」のみと、高い正の相関を示した。
 
5.学業場面における自己効力感とコーピングの相関
 
続いて、学業場面におけるコーピングと学業自己効力感、対人的自己効力感、コーピングの相関を求めたところ、対人的自己効力感と「対人・情動」、「対人・問題」、「個人・問題」が高い正の相関を示した。また、学業自己効力感は「個人・問題」と高い正の相関を示した。