今後も、このような活動を学校教育の中で行っていくことが期待される。本研究でも、いくつかの課題が見いだされた。
1つ目にプログラムの期間が挙げられる。本研究では、1ヶ月間、4回という短期間でのプログラムとなった。また、週に1回の授業で次々に新しい活動を行ったので、児童が十分に活動内容を消化できなかった可能性もある。社会的スキルは、短期間で理解し獲得できるものではない。むしろ、何度も繰り返し活動を行ったり、実際に日常生活の中で意識して練習したりしながら、徐々に獲得していくものである。そのため、長期間にわたって定期的に活動を行うことで、よりその効果が期待できる。そこで、今後は1年計画でプログラムを構成するなど、ゆとりを持ったプログラム構成をする必要があると考えられる。また、長期間行うことで、専門的な視点を踏まえた児童の観察と把握ができるため、学級の様子や特徴に合わせた授業内容を授業者側からも授業内容の提案ができるだろう。
2つ目に学校の要望に応えられるようなプログラムや活動のバリエーションを増やし、学校の教師にもわかりやすく提示できるようになることが望まれる。最近では、構成的グループ・エンカウンターや社会的スキル訓練が学校教育の中で取りあげられる機会が増加している。また、このような活動に関する書籍や研究なども、多く公刊されている。しかし、教師は授業者がどのような種類の授業を行うことができるのかを知らなければ、実際の児童の様子とプログラムに対する要望を結びつけて考えることができない。そのため、学校教育の中で必要となるようなスキルを標的スキルとしたプログラムを、教師にもわかりやすく提示し、児童の様子や不足しているスキルを明確にしやすくすることが必要である。その他、対象者の発達段階や能力に適した社会的スキルがあるため、それらを考慮した授業内容の検討も求められる。
また、本研究では、統制群を設けなかった。そのために、児童の変化がこのプログラムによる効果なのか、その他の学校行事による効果なのかを言及することができなかった。今後は、統制群を設定し、プログラムが児童の自己認知の肯定的な変化を促進するということが示されることが期待される。さらに、1学級だけでなく複数の学級を対象とした研究などを進めれば、このような授業の効果を明らかすることができるだろう。
児童の自己認知や社会的スキルを測定する尺度については、これからも検討が必要であると言えよう。特に、本研究で用いたような実際の場面に即した質問項目は、実際に児童がもつスキルを反映しやすいと言える。しかし、その評価のしかたについては、本研究のみでは不十分であり、今後も検討していく必要があるだろう。
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