【方法】
1.調査対象者
2.調査時期
3.質問紙の構成
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1.調査対象者
国立M大学の男女大学生・大学院生301名
(欠損値を除いた場合、274名:男子88名 女子186名)
2.調査時期
11月下旬〜12月はじめ
3.質問紙の構成
質問紙は3つのパートから構成されている。
T.援助要請意図
個人が持っている悩みの種類によって3種類の質問紙を用意した。悩みの種類は「対人関係に関する悩み」「外見・性格または体の悩み」「学業や進路に関する悩み」である。悩みの選定に関しては、木村ら(2004)を参考にした。これは、大学生が自分で解決できない悩みを抱えた場合に、誰に援助やサポートを求めようと思うか、という被援助志向性を調べるものである。この研究で、問題領域が3つ選定された。「対人・社会面」「心理・健康面」「修学・進路面」である。「対人・社会面」の問題領域については「対人関係」と「恋愛・異性」の悩みを含んでいる。「心理・健康面」の問題領域については「性格・外見」と「健康」の悩みを含んでいる。そして、「修学・進路面」の問題領域については「進路・将来」と「学力・能力」の悩みを含んでいる。本研究では、大学生がなんらかの悩みを持っているとき、友達に相談するかしないかの援助要請意図を決定するまでのメカニズムを調査することから、特に悩みを限定する必要はない。しかし、悩みによって友達に相談するものと相談しないものがあることから、援助要請意図に影響を及ぼしている援助要請を抑制する要因が異なることが考えられる。その違いを明らかにする必要もあることから、大学生が持っている悩みを大きく分けた3種類、「対人関係に関する悩み」「外見・性格または体の悩み」「学業や進路に関する悩み」を取り上げた。
質問の仕方として、「対人関係の悩み」を例にすると、「もしも対人関係に関する悩みを抱え、自分自身で解決できない場合、あなたの友達に相談しますか?」という質問項目を最初に設けた。それに対して、「1.相談しない」「2.ほとんど相談しない」「3.どちらともいえない」「4.いくらか相談する」「5.たいてい相談する」の5件法で回答を求めた。
U.援助要請を抑制する要因
援助要請を行おうとする際に、その行動を抑制するものを調べるため、いくつかの要因を用意した。
次に各悩みを持っているとき、「相談すること」に関する26項目をどの程度感じるか、「1.まったくあてはまらない」「2.ほとんどあてはまらない」「3.あまりあてはまらない」「4.どちらともいえない」「ややあてはまる」「かなりあてはまる」「非常によくあてはまる」も7件法で回答を求めた。項目の分類は以下の通りである。分類の選定は、教育心理を選考する大学生10名と心理学を専門とする研究者1名で行った。(*は逆転項目)
(1) 呼応性の心配
木村ら(2004)の研究を参考に、友人に悩みを相談する際、自分の相談に呼応して接してくれないことを心配する4項目を用いた。これは、「友達に相談しても、その友達から十分な援助がもらえないだろう」「友達は私が相談した問題を真剣に扱ってくれないだろう」といった、援助をもとめたとき、呼応的に対応してくれないのではないかという不安の項目を含んでいる。
・友達に相談しても、その友達から十分な援助がもらえないだろう
・友達は相談した問題を真剣に扱ってくれないだろう。
・友達は相談した問題を理解してくれると思う(*)
・友達は私の相談した問題に対して、一生懸命対応してくれるだろう。(*)
(2) 汚名の心配
木村ら(2004)の研究を参考に、友人に悩みを相談することで、汚名を着せられることを心配する4項目を用いた。これは、「友達に相談したら、その友達は私を『自分で問題を解決できない弱い人間だ』と思うだろう」「友達に相談したことについて秘密が守られるかどうか心配だ」といった、援助を受けることで、まわりに自分の悪い噂がたつかもしれない、などの周りから汚名を着せられる不安に関する項目を含んでいる。
・友達に相談したら、その友達は私を「自分で問題を解決できない弱い人間だ」と思うだろう。
・友達に相談したことについて秘密が守られるかどうか心配だ。
・友達に相談したら、その友達は私を「自分で解決する努力をしない人だ」と思うだろう。
・相談した内容を他の友達が知ったら、他の友達は私から離れてしまうかもしれないと思う。
(3) 友人に対する借り
友達に相談することで、友達に借りを作ってしまうことを恐れることに関する項目である。心理的負債感尺度(相川・吉森 1995)の中から、相談にのってもらう友達に何かお礼をするべきだという気持ちを含んだ3項目を選んだ。また、「友達に相談すると、友達が私の話を聞いて疲れると思う」「友達に相談すると、その友達が私のことを心配するだろう」という、友達の身を心配する項目も含んだ。
・自分から友達に助けを求めるとその友達に頭があがらなくなると思う。
・友達に相談すると、友達が私の話を聞いて疲れると思う。
・友達に話を聞いてもらったら、何かお返しをするべきだと思う。
・友達に自分の話を聞いてもらうより、友達の話を聞いているほうが楽だ。
・友達に相談すると、その友達が私のことを心配するだろう。
(4) 援助要請にともなう物理的コスト
友達に相談することで、時間的にも金銭的にも不利益が生じることが嫌だという項目を含んでいる。これらの項目は独自に作成した。
・わざわざ友だちに相談したくないと思う。
・相談すると時間がかかるので相談したくないと思う。
・友達に電話をかけて相談したら、自分の電話代がもったいないと思う。
(5) 援助を申し出ることの決まり悪さ
相談に乗ってもらうことで感じる恥ずかしさを含んでいる。これらの項目は独自に作成した。
・自分から友達に相談にのってほしいと言いづらい。
・友達に「相談したい」と恥ずかしくていえないと思う。
・私から相談したら、その友達との関係が悪くなると思う。
・自分から友達に相談してもいいのかどうかわからない。
(6) 自己達成
友達に相談することは、その悩みを自分で解決せず友達にも解決する手助けを頼むことだと考える。よって、自己達成を放棄することであり、それがしたくないから悩みを相談しないという場合を想定し、独自に項目を作成した。
・友達に相談すると、自分が友達よりも劣っていると感じると思う。
・相談をする必要性を感じず、自分でも解決できると思う。
・友達に相談すると、悔しいと思う。
(7) 強いられる自己開示
自分の悩みを相談するとことは、すなわち自己開示することである。悩みを相談できない理由に自分のことを相手に知られたくないという理由もあることから、独自に項目を作成した。
・普段から自分のことを話すのは得意な方である。(*)
・相談すると自分のことを知られるので、相談したくない。
・友達に相談することは、自分の弱みを友達に見せていると思う。
V.言語的援助要請スキル尺度
阿部ら(2006)の研究では言語的援助要請スキル尺度を使った。阿部・水野・石隈(2006)の研究では、中学生の被援助志向性と言語的援助要請スキルの関連が調査されており、言語的援助要請スキルが高い中学生は被援助志向性も高いことがわかった。被援助志向性とは、水野ら(1999)により、「個人が情緒的、行動的問題および現実生活における中心的な問題で、カウンセリングやメンタルヘルスサービスの専門家、教師などの職業的な援助者および友人・家族などのインフォーマルな援助者に援助を求めるかどうかについての認知的枠組み」と定義されている。このことから、被援助志向性が高いと、援助要請しやすいことが予測できる。
言語的援助要請スキル尺度は、「私は相談したいとき、タイミングを考えて相手に相談することができる」、「私は大事な話を整理して伝えることができる」、「私は困った状態を伝えるとき、身振りや表情なども使っている」というように、援助を要請する際に必要な、言語や情動を表現するスキルを測定している。
・私は相談したいとき、タイミングを考えて相手に相談することができる
・私は話しているとき、相手の反応を見ることができる
・私は自分のつらい気持ちをどう表現して良いかわからない(*)
・私は不安になった時、それを誰かに話すことができる
・私は困った状態を伝えるとき、身振りや表情なども使っている
・私は大事な話を、整理して伝えることができる
・私は、からだの調子が悪い時、自分の状態を言葉で伝えることができる
・私は人に頼む時、話し方や態度を工夫できる
・私は自分で頼めない時は、誰かに言ってもらうことができる
W.自尊感情尺度
自尊感情尺度は、Rosenburg(1965)によって開発された自尊感情尺度を山本・松井・山成(1982)が翻訳したものを使用した。この自尊感情尺度で自尊感情が低い場合、自己否定、自己不満足、自己軽蔑を表し、自分に対する尊敬を欠いていることを表す。
言語的援助要請スキル尺度と自尊感情尺度は、「1.あてはまらない」「2.あまりあてはまらない」「3.どちらともいえない」「4.すこしあてはまる」「5.あてはまる」の4件法で回答を求めた。
・少なくとも人並みには、価値のある人間である。
・色々な良い素質をもっている。
・敗北者だと思うことがある。(*)
・物事を人並みには、うまくやれる。
・自分には、自慢できるところがあまりない。(*)
・自分に対して肯定的である。
・だいたいにおいて、自分に満足している。
・もっと自分自身を尊敬できるようになりたい。(*)
・自分は全くだめな人間だと思うことがある。(*)
・ 何かにつけて、自分は役に立たない人間だと思う。(*)
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