【 方法 】
1.調査対象及び調査実施状況
三重大学をはじめ、三重県内大学の学生および大学院生300名を対象に質問紙調査を行った。調査は講義の一部を利用して一斉に実施し、その場で回収した。また、個人的にも調査を依頼し、その場又は自宅で各自実施してもらったものを、後に回収した。質問紙の回答に要した時間は約15〜30分程度だった。
回答された質問紙のうち、質問紙に記入漏れや記入ミスのあったものを除いた、有効回答者計172名(男子73名,女子99名,平均年齢20.53歳)のデータを分析対象とした。
2.質問紙調査実施期間
2006年11月下旬から12月上旬
3.質問紙の構成
質問紙はフェイスシート、教示文、いじめ認識を測定する尺度、多次元共感性尺度から構成した。フェイスシートでは調査についての説明がされ、回答者の基本属性(大学・学部・学年・年齢・性別)を尋ねた。教示文は先に述べた、いじめ認識に影響を与える要因のうち3要因(「人数(2)」×「関係(3)」×「背景(2)」)を組み合わせ、12パターンを作成。
「あなたが教師として働いている学校にAという子どもがいます。
(Aはだいたい小学校高学年から中学生を想像して下さい)
Aの同級生にCという子がいます。
CはAとは普段一緒に遊んだり、話したりしない子です。
Cは面白がって、Aに左に書いてあるようなことをしています。
あなたはそれを「 けんか 」だと思いますか。「 いじめ
」だと思いますか。」
という文章を、質問紙のいじめ認識を測定する尺度回答時に常に見えるようにした(資料参照)。各尺度については以下の通りである。
(1)多次元共感性尺度
共感性の認知的側面と情動的側面を同時に測定することを目的とし、登張(2003)によって作成された多次元共感性尺度を用いた。この尺度は既存の共感性尺度7つから作成されており、さらに共感性の次元と関連のある尺度や既存の共感性尺度との関係からも信頼性、妥当性を検討していることから、共感性を多面的に捉えるに足る尺度であると判断した。全28項目から構成され、4つの因子「共感的関心(他者の不運な感情体験に対し、自分も同じような気持ちになり、他者の状況に対応した、他者志向の暖かい気持ちを持つ)」「個人的苦痛(他者の苦痛に対して、不安や苦痛など、他者に向かわない自分中心の感情的反応をする)」「ファンタジー(小説や映画などに登場する架空の他者に感情移入する)」「気持ちの想像(他者の気持ちや状況を想像する)」から成る。本研究では6件法(1.全くあてはまらない 2.あてはまらない 3.あまりあてはまらない 4.少しあてはまる 5.あてはまる 6.かなりあてはまる)で回答を求めた。
(2)いじめ認識を測定する尺度(以下いじめ認識尺度)
提示された行為をいじめと判断するかどうかを測定することを目的とし、笠井ら(1996)や文部科学省のいじめ様態調査(2005)を参考に作成した。この尺度の項目は、先述したいじめ認識要因のうち3要因(「行為(4)」×「反応(4)」×「期間(4)」)を組み合わせた64項目から成り(Aは「チビ」などAの身体の欠点を言われても無反応だ。Aは叩かれると、叩き返している。等)、それぞれ6件法(1.絶対けんかだと思う 2.けんかだと思う 3.多分けんかだと思う 4.多分いじめだと思う 5.いじめだと思う 6.絶対いじめだと思う)で回答を求めた。
この尺度については、一人の実験協力者に対して、1つの教示文に対応させた64項目について回答を求めた。