考察
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RQによる愛着スタイルと認知的評価
安定型ととらわれ型は、拒絶型より対人ストレスに対するコミットメントが高いことが示された。Bartholomew(1991)より、安定型ととらわれ型は拒絶型より他者との関係を重視し他者を求めようとすると考えられる。このため、他者との関係を重視し他者を求めようとすることがコミットメントと関連すると考えられる。仮説と異なり恐れ型との関連が見られなかったのは、Bartholomew(1991)より恐れ型が他者との関係を求めたいという気持ちをもつためと考えられる。
恐れ型は、拒絶型より対人ストレスに対する影響性の評価が高いことが示された。Bartholomew(1991)より、恐れ型の方が他者を重視し対人ストレスを何とかしたいと思うと考えられる。このため、対人ストレスを何とかしたいと思うことが影響性の評価と関連すると考えられる。これは、鈴木・坂野(1998)で影響性の評価とコミットメントに正の相関が示されており妥当であると考えられる。
安定型と拒絶型は、とらわれ型より対人ストレスに対するコントロール可能性が高いことが示された。安定型ととらわれ型の関連は仮説で考えたことを支持し、他者によりストレスが軽減される確信をもてることがコントロール可能性と関連すると考えられる。拒絶型ととらわれ型の関連は、Bartholomew(1991)より拒絶型の方が対人ストレスを感じにくいと考えられる。このため、対人ストレスが軽減されていることがコントロール可能性と関連すると考えられる。これは、拒絶型が影響性の評価やコミットメントを低く評価するため妥当であると考えられる。
愛着スタイルと脅威性の評価の関連は見られなかった。脅威性の評価の得点(M=3.00,SD=1.18)と影響性の評価の得点(M=3.74,SD=1.08)およびコミットメントの得点(M=3.91,SD=.94)を比較すると、脅威性の評価の得点の平均値が少し低く標準偏差が少し高い。よって、危機に陥るや生活が脅かされるという表現に一致するほど対人ストレスを脅威として感じることはあまりなく、その表現から受ける印象に個人差が大きいと考えられる。このため関連が見られなかったと考えられる。
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RQによる愛着スタイルと対人ストレスコーピング
拒絶型と恐れ型は、安定型よりネガティブ関係コーピングを行うことが示された。Bartholomew(1991)より、拒絶型と恐れ型は安定型より他者との関係をもたないと考えられる。このため、他者との関係をもつかがネガティブ関係コーピングと関連すると考えられる。仮説と異なりとらわれ型との関連が見られなかったのは、とらわれ型がネガティブ関係コーピングと直接結びつかず、親密な関係を求めるためと考えられる。
安定型ととらわれ型は、拒絶型よりポジティブ関係コーピングを行うことが示された。Bartholomew(1991)より、安定型ととらわれ型は拒絶型より他者との関係を重視すると考えられる。このため、他者との関係を重視することがポジティブ関係コーピングと関連すると考えられる。
拒絶型は、安定型より解決先送りコーピングを行うことが示された。Bartholomew(1991)より拒絶型は安定型より他者との関係を重視しないと考えられる。このため、他者との関係を重視しないことが比較的個人的な対処である解決先送りコーピングと関連すると考えられる。
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ECR-GOによる愛着スタイルと認知的評価
脅威性の評価、影響性の評価、コントロール可能性は見捨てられ不安と関連することが示された。見捨てられ不安は他者との関係に不安を抱くことと関連するため、他者との関係を重視しているが他者との関係を求めることが難しいと考えられる。このため、他者との関係を重視するが他者との関係を求めにくいことが脅威性の評価、影響性の評価、コントロール可能性と関連すると考えられる。
コミットメントは、親密性の回避が高い場合見捨てられ不安が高い人の方が高くなることが示された。親密性の回避が高いと対人ストレスに対し他者からの支援を期待できず、見捨てられ不安が高いと自分では対処できないと考えられる。このため、親密性の回避と見捨てられ不安が高い場合、対人ストレスに対処する方法が最もないと考えられる。また、コミットメントは見捨てられ不安が低い場合親密性の回避が低い人の方が高くなることが示された。見捨てられ不安と親密性の回避が低い場合、対人ストレスに対処する方法を最ももっていると考えられる。よって、対人ストレスに対処する方法がないことで状況をよりストレスに感じることと対人ストレスに対処する方法があることで状況を改善できると感じることがコミットメントと関連すると考えられる。
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ECR-GOによる愛着スタイルと対人ストレスコーピング
ネガティブ関係コーピングは、見捨てられ不安と関連することが示された。見捨てられ不安は他者との関係をもつことに不安を抱くことと関係するため、他者との関係を避けると考えられる。このため、他者との関係を避けることがネガティブ関係コーピングと関連すると考えられる。
ポジティブ関係コーピングは、親密性の回避が高い場合見捨てられ不安が高い人の方が行うことが示された。親密性の回避と見捨てられ不安が高い場合、他者との関係を求めにくいと考えられる。親密性の回避が高く見捨てられ不安が低い場合、他者との関係を避け自分で対処できると思うと考えられる。このため、親密性の回避と見捨てられ不安が高い場合の方が他者を重視していると考えられる。また、ポジティブ関係コーピングは見捨てられ不安が低い場合、親密性の回避が低い人の方が行うことが示された。見捨てられ不安と親密性の回避が低い場合他者との関係を最も重要視していると考えられる。また、ポジティブ関係コーピングは見捨てられ不安が高い場合、親密性の回避が低い人の方が行なうことが示された。見捨てられ不安が高く親密性の回避が低い場合、他者と関わることに不安をもっているが他者の支援を期待できるため見捨てられ不安と親密性の回避が高い場合より他者の存在を大切にすると考えられる。以上から、他者の存在を重視することがポジティブ関係コーピングと関連すると考えられる。
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まとめ
RQによる愛着スタイルと認知的評価の関連についての結果から、他者との関係を重視することが影響性の評価とコミットメントを高くもつことと関連すると考えられる。つまり、他者との関係を重視するため対人ストレスを自分に影響のあるものと捉え、何とかしたいという思いをもつと考えられる。
RQによる愛着スタイルと対人ストレスコーピングの関連についての結果から、他者との関係を重視することがポジティブ関係コーピングを取ることと関連すると考えられる。このため、ポジティブ関係コーピングは影響性の評価とコミットメントが高いために起こると考えられる。一方、他者との関係を軽視することが解決先送りコーピングを取ることと関連すると考えられる。このため、解決先送りコーピングは影響性の評価とコミットメントが低いために起こると考えられる。
RQによる愛着スタイルと認知的評価の関連についての結果から、ストレスが軽減されること軽減されていることが、コントロール可能性を高くもつことと関連すると考えられる。よって、他者を重視する場合と軽視する場合ともにコントロール可能性を高くもつと考えられる。このため、コントロール可能性は影響性の評価やコミットメントとは異なった特徴をもつと考えられる。
ECR-GOによる愛着スタイルと認知的評価の関連についての結果から、他者との関係を重視するが他者との関係を求めにくいことがコントロール可能性を低くもつことと関連すると考えられる。これは、ストレスが軽減される期待をもてないと考えられる。このため、RQによる愛着スタイルとコントロール可能性の結果と共通していると考えられる。
以上より、愛着スタイルは認知的評価とコーピングの両方に影響しており、コーピングは認知的評価のあり方からより理解できることが明らかとなった。また、4分類愛着スタイルと見捨てられ不安・親密性の回避に共通した結果が一部で確認された。