6. アンケートによるシステムの評価

このシステムを用いた実践の効果を調べるために、実践終了時にアンケート行いその結果をグラフにし(図4)、その結果と分析を述べる。
 自分の作品をみんなに伝える事ができるか、という質問に「はい」「ややはい」を合わせると80%ができたと答えている。相互交流によるフィードバックがこの数字を出したのであるなら、良いフィードバックであったのだろう。
 学習への集中も高い。これも90%を越える肯定を示している。楽しいと答えた子どもたちは、コンピュータや情報機器を使ったこの実践は、楽しかったようだ。また、主体性、達成感は「はい」が60%を越えた。また、「ややはい」も合わせると90%越える。本システムは、掲示板を用いているので、作品を掲示する、文字入力して作品のPRを行う、相互評価するという過程が「投稿する」というプロセスになっている。これらを、能動的に行っていくので、主体性、達成感の向上に寄与した可能性がある。
 最後の質問の肯定度も高い。子どもの言葉で、具体的に書いてあったコメントが多かったので、うまく作品について述べていたと感じたのではないだろうか。

                  図4  実践後のアンケート 
7. まとめと考察

小学生が能動的に作品を掲示、相互評価できるデジタル作品交流システムを作成できた。結果を考察する。

観点別の相互評価を行うことで、作品を見る視点が明確になったので、作品を具体的な視点から多く記述する事ができた。これらの事からCASEは、小学生の相互評価の観点を育成し、相互評価の視点をより具体的にできる可能性を示唆した。小学生にとっては、じかに作品を見ながらの方が、コメントしやすい。一画面で、常時作品を把握しながら、コメントを書き込める利点は大きいと思われる。
. CASE上で物語創作の実践を行ったところ、物語構成の基本である起承転結や場面数の増加、文字数の増加が見られた。このように、文字で表現することが向上したことは、本システムがイメージを言語によって具体化し表現することを支援できる可 能性を見出せたと考える。
児童が、作品交流や相互評価などの活動を教師の手をほとんど借りずに行えたので、CASEは、主体性や達成感の向上に寄与したと思われる。
. CASEは、マルチメディアの作品や粘土など形を留めにくいものをデジタル化し保存できる。その上、それを交流した子どもたちのコメントも一緒に保存できるので、今後、そのような作品と児童の意識について研究できる可能性がある。
 今後の課題としては、本システムを用い、オンデマンドで作品を引き出し、相互評価を行っていくとコメント数に偏りが出てくる。評価者に誰を評価するかを割り当てるといった方法もあるが、システム改良が望まれる。

謝辞
 最後になりましたが、本論文作成に当たり、2年間にわたるご指導、ご助言を賜りました三重大学教育学部附属教育実践センターの下村勉教授並びに須曽野仁志教授に心からお礼申し上げます。また、このような機会を与えて下さった三重県教育委員会、津市教育委員会、栗真小学校の皆さまに深く感謝いたします。尚、本研究の一部は、上月スポーツ・教育財団の支援を受けて行われた事を付記します。
                         参考文献

天野昌和、下村勉、須曽野仁志(2002) Webベースによる相互評価システムの開発. 日本教育工学会第20回全国大会論文集 Pp.659-660

井上義裕、佐藤塁、山内雅博、藤村裕一、森本泰弘(2004) Web型学習・評価支援システムの開発 日本教育工学会第20回全国大会論文集 Pp61-64

 KENTWeb(掲示板)http://www.kent-web.com/

夏堀睦(2005) 創造性と学校 ナカニシア出版 京都 

山口光夫(2001) Web上でコラボレーションや自己評価、相互評価、及び教師の支援を取り入れた作品作りについて 日本教育工学会第20回全国大会論文集 Pp449-450

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