結果
1.下位尺度得点について
2.下位尺度間の関連
3.自己内省、特性的自己効力感から対処行動、さらに自己成長性への影響
4.自己嫌悪感の程度の違いによる自己内省、特性的自己効力感から対処行動、さらに自己成長性への影響の違い
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1.下位尺度得点について
1-1)自己嫌悪感の程度
自己嫌悪感の程度は1項目のため、そのまま尺度得点とした。自己嫌悪感の程度について平均値と標準偏差を算出したところ、M=6.91、SD=2.57であった。
1-2)自己嫌悪感体験時の対処行動
水間(2003)での因子分析結果にならって、「否定性変容」、「否定性回避」、「否定性受容」、「とらわれの程度」の4つの下位尺度を構成した。それぞれの下位尺度の項目の得点を合計し、それを項目数で割ったものを各下位尺度得点とした。内的整合性を検討するために、Cronbachのα係数を算出したところ、否定性変容でα=.890、否定性回避でα=.767、否定性受容でα=.807、とらわれの程度でα=.885であり、十分な値が得られた。各下位尺度の内容とそれぞれの平均値、標準偏差をTable 1に示す。
1-3)自己内省
佐藤・落合(1995)が項目作成時に設定したのは3因子であったが、分析の結果は2因子に分けられていた。水間(2003)での因子分析結果では、佐藤・落合(1995)が設定した3因子に分かれている。そこで、佐藤・落合(1995)が項目作成時に設定した因子構造と同様の水間(2003)の因子分析結果にならって、3つの下位尺度を構成した。各下位尺度の因子名は水間(2003)にならって、「内省頻度」、「対象化水準」、「否定性直視」とした。それぞれの下位尺度の項目の得点を合計し、それを項目数で割ったものを各下位尺度得点とした。内的整合性を検討するために、Cronbachのα係数を算出したところ、内省頻度でα=.815、対象化水準でα=.794、否定性受容でα=.794、否定性直視でα=.735であり、十分な値が得られた。各下位尺度の内容とそれぞれの平均値、標準偏差をTable 2に示す。
1-4)特性的自己効力感
先行研究では、単一次元の尺度として利用されていることから、全23項目の得点を合計し、それを項目数で割ったものを下位尺度得点とした。内的整合性を検討するために、Cronbachのα係数を算出したところ、α=.836で十分な値が得られた。下位尺度の内容と平均値、標準偏差をTable 3に示す。
1-5)自己成長性
梶田(1988)の因子構造にならい、「達成動機」、「努力主義」の2つの下位尺度を構成した。それぞれの下位尺度の項目の得点を合計し、それを項目数で割ったものを各下位尺度得点とした。内的整合性を検討するために、Cronbachのα係数を算出したところ、努力主義については、α係数を低めている項目があったため、その項目を2つ削除した。項目削除後のα係数は、達成動機でα=.758、努力主義でα=.663であった。各下位尺度の内容とそれぞれの平均値、標準偏差をTable 4に示す。
2.下位尺度間の関連
2-1)自己嫌悪感の程度と自己内省と特性的自己効力感の関連
自己嫌悪感の程度、自己内省、特性的自己効力感のそれぞれの下位尺度間の関連を検討するため、相関係数を算出した。結果をTable 5に示す。
Table 5より、自己を振り返る機会の程度である内省頻度と自己嫌悪感の程度に有意な正の相関、特性的自己効力感と自己嫌悪感の程度に有意な負の相関がみられた。また、自己内省の下位尺度同士に有意な正の相関が、自己を見つめる水準の深さの程度である対象化水準、自己の否定性を直視する程度である否定性直視と特性的自己効力感に有意な正の相関がみられた。
2-2)自己嫌悪感体験時の対処行動の各下位尺度間の関連
自己嫌悪感体験時の対処行動の下位尺度間の関連をみるため、相関係数を算出した。結果をTable 6に示す。
Table 6より、いやな自分を変えようとする否定性変容といやな自分から意識をそらす否定性回避、いやな自分をそのまま引き受ける否定性受容のそれぞれに有意な負の相関がみられ、否定性変容といやな自分しか考えられないというとらわれの程度に有意な正の相関がみられた。また、否定性回避と否定性受容には正の相関がみられ、とらわれの程度と否定性回避、否定性受容に負の相関がみられた。
2-3)自己成長性の各下位尺度間の関連
自己成長性の各下位尺度間の関連をみるため、相関係数を算出した。その結果、自己成長性を支える意欲である達成動機と自己成長へ向かって努力しようとする態度である努力主義の間に正の相関がみられた(r=.451 , p<.01)。
3.自己内省、特性的自己効力感から対処行動、さらに自己成長性への影響
自己内省と特性的自己効力感が自己嫌悪感体験時の対処行動にどのような影響を与えるのか、また、自己嫌悪感体験時の対処行動が自己成長性にどのように影響するのかを検討した。まず、自己内省の3つの下位尺度得点と特性的自己効力感の得点を独立変数、自己嫌悪感体験時の対処行動の4つの下位尺度得点を従属変数にした重回帰分析を行った。さらに、自己内省のそれぞれの下位尺度得点、特性的自己効力感の得点、自己嫌悪感体験時の対処行動のそれぞれの下位尺度得点を独立変数、自己成長性の2つの下位尺度得点を従属変数とした重回帰分析を行った。重回帰分析に基づくパス図をFigure 1 に示す。
まず、自己内省と特性的自己効力感が自己嫌悪感体験時の対処行動に与える影響を検討した。自己内省において、自己を振り返る機会の程度である内省頻度はいやな自分を変えようとする否定性変容といやな自分しか考えられないというとらわれの程度に対して有意な正の標準偏回帰係数がみられた。そしていやな自分から意識をそらす否定性回避に対して有意な負の標準偏回帰係数がみられた。また、いやな自分を直視する程度である否定性直視は否定性回避といやな自分をそのまま引き受ける否定性受容に対して有意な負の標準偏回帰係数がみられた。自己を見つめる水準の深さの程度である対象化水準から自己嫌悪感体験時の対処行動に与える有意な影響はみられなかった。特性的自己効力感では、否定性変容に対しての有意な正の標準偏回帰係数、とらわれの程度に対して有意な負の標準偏回帰係数がみられた。
次に、自己嫌悪感体験時の対処行動が自己成長性に与える影響を検討した。否定性変容は自己成長性を支える意欲である達成動機、自己成長に向かって努力しようとする態度である努力主義に対して有意な正の標準偏回帰係数がそれぞれみられた。また、とらわれの程度は、努力主義に対して有意な負の標準偏回帰係数がみられた。否定性回避と否定性受容から自己成長性への有意な影響はみられなかった。
自己内省と特性的自己効力感から自己成長性への直接的な影響もみられた。内省頻度は達成動機と努力主義それぞれに対して、有意な正の標準偏回帰係数がみられた。対象化水準は達成動機に対して有意な正の標準偏回帰係数がみられた。特性的自己効力感は達成動機と努力主義それぞれに対して有意な正の標準偏回帰係数がみられた。
4.自己嫌悪感の程度の違いによる自己内省、特性的自己効力感から対処行動、さらに自己成長性への影響の違い
自己嫌悪感の程度の違いによって、自己内省と特性的自己効力感が自己嫌悪感体験時の対処行動に与える影響に違いがみられると考えられる。このことを検討するために、まず、自己嫌悪感の程度に関する得点によって、平均値を基準に調査対象者を自己嫌悪感の程度が高いものを思い浮かべた場合(N=149)と自己嫌悪感の程度が低いものを思い浮かべた場合(N=78)に分けた。そして、程度が高い場合、程度が低い場合それぞれにおいて、自己内省の3つの下位尺度得点と特性的自己効力感の得点を独立変数、自己嫌悪感体験時の対処行動の4つの下位尺度得点を従属変数とした重回帰分析を行った。さらに、自己内省のそれぞれの下位尺度得点と特性的自己効力感の得点と自己嫌悪感体験時の対処行動のそれぞれの下位尺度得点を独立変数、自己成長性の2つの下位尺度得点を従属変数にした重回帰分析を行った。重回帰分析の結果に基づくそれぞれのパス図をFigure 2 、Figure 3 に示す。
4-1)自己嫌悪感の程度が高い場合
まず、自己内省と特性的自己効力感が自己嫌悪感体験時の対処行動に与える影響を検討した。自己を振り返る機会の程度である内省頻度はいやな自分しか考えられないというとらわれの程度に対しての有意な正の標準偏回帰係数、いやな自分から意識をそらす否定性回避に対しての有意な負の標準偏回帰係数がみられた。いやな自分を直視する程度である否定性直視は否定性回避に対して有意な負の標準偏回帰係数がみられた。特性的自己効力感からの自己嫌悪感体験時の対処行動に対する有意な影響はみられなかった。
次に、自己嫌悪感体験時の対処行動が自己成長性に与える影響を検討した。否定性回避は自己成長性を支える意欲である達成動機に対して有意な負の標準偏回帰係数がみられた。とらわれの程度は自己成長へ向かって努力しようとする態度である努力主義に対して有意な負の標準偏回帰係数がみられた。
また、自己内省、特性的自己効力感から自己成長性への直接的な影響もみられた。内省頻度は達成動機と努力主義のそれぞれに対して有意な正の標準偏回帰係数がみられた。対象化水準は達成動機に対して有意な正の標準偏回帰係数がみられた。否定性直視は達成動機、努力主義のそれぞれに対して有意な負の標準偏回帰係数がみられた。特性的自己効力感は達成動機、努力主義のそれぞれに対して有意な正の標準偏回帰係数がみられた。
4-2)自己嫌悪感の程度が低い場合
まず、自己内省と特性的自己効力感が自己嫌悪感体験時の対処行動に与える影響について検討した。自己を振り返る機会の程度である内省頻度はいやな自分から意識をそらす否定性回避に対して有意な負の標準偏回帰係数がみられた。いやな自分を直視する程度である否定性直視は否定性回避に対して有意な負の標準偏回帰係数がみられた。
次に、自己嫌悪感体験時の対処行動が自己成長性へ与える影響を検討した。否定性回避は自己成長へ向かって努力しようとする態度である努力主義に対して有意な正の標準偏回帰係数がみられた。いやな自分をそのまま引き受ける否定性受容は努力主義に対して有意な負の標準偏回帰係数がみられた。
そしてここでも、自己内省、特性的自己効力感から自己成長性への直接的な影響がみられた。内省頻度は努力主義に対して有意な正の標準偏回帰係数がみられた。特性的自己効力感は達成動機、努力主義のそれぞれに対して有意な正の標準偏回帰係数がみられた。
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