方法
(1)手続き
2009年12月上旬,国立M大学の授業時間を利用して,質問紙の調査を実施した.
授業の初め,または終わりに配布し,一斉に行った.質問紙所要時間は15分程度であった.

(2)調査対象者
国立M大学の大学生名を対象に調査を実施した.
有効回答者156名(男性46名,女性110名,平均年齢20.2歳,標準偏差0.52)を分析対象とした.

(3)質問紙の構成
1,情報処理スタイル(合理性−直観性)尺度
Epstein et al(1996)の作成したREIを元に,内藤・鈴木・坂元(2004)の作成した日本語版REIを用いた.この尺度は合理性,直観性の二過程の個人特性を測定するもので,Epstein et al(1996)の作成した尺度のうち,日本語版への改訂時に有意な相関の見られなかった2項目(合理性1項目,直観性1項目)を除く,合理性19項目,直観性19項目の計38項目から成る.内藤ら(2004)の研究から,内容的妥当性,信頼性,収束的・弁別的妥当性が示されている.
38項目全てに5件法(全く当てはまらない=1,あまり当てはまらない=2,どちらともいえない=3,少し当てはまる=4,非常に当てはまる=5)で評定させた.


2,確率推論課題
オリジナルの確率推論課題を作成した.
課題に対して3つの選択肢に確率の高いものから順に1〜3の番号を付けるものであった.
交通事故の原因についての課題(以下,事故課題)と大学生の行動についての課題(以下,学生課題)を作成した.課題文は以下の通りである.

<事故課題>
南さんは短気な性格で,車の運転も荒く,今までに数々の違反をしている.
南さんが交通事故を起こしたときの理由として,より確率の高いものはどれか.
(このような人が100人いたとして,その人たちが交通事故を起こしたときの状況で,より人数の多いものはどれか.)

確率が高い(人数が多い)と思う順に( )内に1〜3の番号をつけて下さい.
a,夜間に走行していた.         (  )
b,スピード違反していた.        (  )
c,夜間に走行し,スピード違反していた. (  )

<学生課題>
ある国立大学では,毎年,特に就職活動の支援に力を入れており,就職支援講座の志望者も多い.
この大学の学生の行動として,次のうちより確率が高いものはどれか.
(この大学の学生100人の行動として,次のうちより人数が多いものはどれか.)

確率が高い(人数が多い)と思う順に( )内に1〜3の番号をつけて下さい.
   a,授業にあまり遅刻しない.                (  )
 b,就職活動に積極的に参加している.            (  )
  c,授業にあまり遅刻せず,就職活動に積極的に参加している. (  )

事故課題,学生課題共に,確率教示のものと頻度教示のものを作成した.下線部が確率教示の課題文で,頻度教示の場合,下線部を( )内に変えたものを使用した.
被験者1名に対して,確率課題1種類,頻度課題1種類の計2種類の課題に回答させた.カウンターバランスをとるために,頻度教示確率課題と確率教示事故課題,確率教示学生課題と頻度教示事故課題,頻度教示事故課題と確率教示学生課題,確率教示事故課題と頻度教示学生課題の4種類の質問紙を作成し,ランダムに配布し,調査を行った.


<3,追加情報の有効性評定
南(1998)を参考に,(2)で行った判断をする際,被験者がどこに注目していたのかを知るために,追加情報の有効性の評定をさせた.選択肢は,単一事象Aに関する情報1種類(下図の選択肢a),単一事象Bに関する情報1種類(下図の選択肢b),連言事象A&Bに関する情報1種類(下図の選択肢c)とその他に関する情報2種類の計5つを用意し,確率評価をより正確にするために,これらの追加情報はどのくらい役に立つかを,5つ全てに5件法(全く役に立たない=1,あまり役に立たない=2,どちらでもない=3,少し役に立つ=4,非常に役に立つ=5)で評定させた.
確率教示事故課題の課題文を以下に示す.

その判断をより正確にするために,以下の追加情報はどのくらい役に立つと思いますか.
それぞれの項目で,当てはまる数字に○をつけて下さい.



a,夜間に走行する人に対する追加情報・・・・・・・・・・・・・1  2  3  4  5
b,スピード違反者に対する追加情報・・・・・・・・・・・・・・1  2  3  4  5
c,夜間走行中にスピード違反で起こった事故についての追加情報・1  2  3  4  5
d,現場の事故状況に関する追加情報・・・・・・・・・・・・・・1  2  3  4  5
e,南さんに関する追加情報・・・・・・・・・・・・・・・・・・1  2  3  4  5