「援助《という概念について、心理学研究では様々な分野から定義がなされ、研究が進められている。 社会心理学の分野においての「援助《として、高木(1998)によると、援助行動(向社会的行動)とは、他者が身体的に、 また心理的に幸せになることを願い、ある程度の自己犠牲(出費)を覚悟し、人から指示、命令されたからではなく、 自ら進んで(自由意志から)、意図的に他者に恩恵を与える行動である、と定義されている。援助者側の研究として、 社会心理学の分野では、Latané.B & Darley.J.M. (1970)の傍観者効果の研究が発端となっており、以後様々な援助生起モデル、 援助規範等が提唱され、援助者の行動や心理状態について述べられている。援助行動研究では援助者側だけでなく、被援助者側にも 焦点が当てられ、援助要請についての研究が行われている。援助要請とは、相川(1987)によると、自分の力では解決できない 困難な場面や問題に直面した個人が、他者に援助を求めることである。援助要請は医療、福祉、教育現場、日常生活などで見いだす ことができ、援助行動と同様に、援助を要請するまでに意志決定過程があるとされる。最終的に、実際に援助を要請するかどうかは、 その人の社会的スキルによるとされている。また、自尊感情が援助を受けることを抑制することも示唆されている(Nadler, A. & Fisher, J.D. , 1986)。 また、援助者と被援助者の関わりにおいては、返礼行動もあげられる。被援助者は、援助を受けると援助者にお返しを することがあるが、松井・浦(1998)によると、被援助報酬に伴う快感情から生起される互恵的返礼義務感と、援助コストの大きさに伴う 上快感情を低減するために生起される補償的返礼義務感の2種類の過程を経て返礼行動を起こすとしている。被援助者にとって助けられる ことはありがたい経験であり、援助者に対して互恵的に感謝の気持ちを抱くが、それと同時に、被援助者は助けられることで相手に迷惑を かけて申し訳ない、償いたいといった気持ちをも経験すると述べている。意図された返礼行動が実行されるまでの過程において、 被援助者の返礼能力、返礼コスト、返礼時期の適切さ、等の諸要因が介在し、実際の返礼行動を促進したりすると述べられている。 さらに、援助者と被援助者の相互作用を扱った研究として、松浦(2006)は援助者と被援助者の援助場面に対する認識の相違について 述べており、援助事態を軽く見ている援助者の援助に対しても、被援助者は総じて援助に対し高い評価を示すという結果が出ている。 この研究から、被援助者は援助してもらっているという感謝の気持ちから、思い通りの援助がなされなくても受けた援助を高く評価せざるを 得ないという可能性が示された。被援助者が望む援助がなされるためにも、できる限り援助者側が被援助者側の要望を汲み取り、相互の 共通認識を深めていくことが大切であるといえる。 以上のように援助行動とは援助者と被援助者の二者間の相互作用によるものであるため、援助者・被援助者の両者の視点から援助のあり方を 考えていく必要がある。 |
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