◆要約◆

本研究では、対人的迷惑行為の抑制要因となるものについて検討した。 近年、迷惑行為が社会問題として取り上げられている。 そのような迷惑行為の中でも「約束を破る」「遅刻をする」などのような、親しい知人・友人に対して生起される対人的な迷惑行為も存在している。 迷惑行為を生起する者の中には、その行為が迷惑である自覚していない者、迷惑行為だと自覚している者がいる。 そのような中で、迷惑行為を生起しやすい者と生起しにくい者とは、何が違うのだろうか。 迷惑行為を生起しにくい者が持つ要因を知ることは、迷惑行為を抑制、防止するための重要な手掛かりになると考えられる。 対人的迷惑行為の抑制要因として、小池・吉田(2007)は共感性を取り上げている。 吉田・斎藤・北折(2009)によると共感性とは「思いやり=誰に対しても平等で優しく接することができる」ことである。 このように相手に共感することで、迷惑行為が抑制されているのではないかと考えられる。 しかし、吉田ら(2009)は、共感性だけでは、共感する対象によっては迷惑行為を生起させる原因となること、また1対1での対人関係場面でしか適応できない場合もあると述べている。 また、共感性の高い人物が迷惑行為を引き起こす事例も紹介されており、共感性が高いことだけが迷惑行為の抑制につながるわけではないと考えられる。 そこで、本研究では抑制要因として共感性と客観性を取り上げている。この客観性が高いことによって他者に対して目を向けることができ、視野を広げられるようになるのではないかと推測される。 そこで、対人的迷惑行為に特化した客観性尺度を作成し、共感性と対人的迷惑行為実行頻度の関係性について調査した。 結果としては、対人的迷惑行為は共感性と客観性が共に抑制要因となり、仮説を支持する結果も見られたが、対人的迷惑行為の下位尺度によっては仮説が支持されない点もあった。 それには迷惑行為が持つ機能や特性が関係していると思われる。そのため、仮説1 及び仮説2 は一部支持されるという結果となった。今後の課題としては迷惑行為の機能性を考慮しながら、抑制や防止要因について検討していくことが重要である。 また、対人的迷惑行為だけでなく、社会的迷惑行為の抑制・防止要因も考えていくことが必要である。


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