*問題と目的*
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4.オープナーのパーソナリティ的側面について
 オープナー特性には、パーソナリティ的側面とコミュニケーション的側面があると述べたが、良好な対人関係を形成・維持していくうえでパーソナリティ的要因として外向性と協調性が挙げられる。そして、それらが対人的な場面でコミュニケーションを促進したり、調和的な人間関係を築いたりすることに大いに役立つと考えられている(水野,2006)。したがって、「他者から開示を引き出しやすい」高オープナーには、コミュニケーションを促進することが必要で、促進することによって調和な人間関係を築いていくことができるのではないだろうか。よって高オープナーには上記の外向性と協調性が備わっていると考えられる。
 また、小口(1989)は、Millerら(1983)が作成したオープナー・スケールとパーソナリティとの関係を調べているが、それによると、オープナー・スケールの得点が高いほど、社交性、自尊心、私的自己意識も高くなるという正の相関関係にあり、またオープナー・スケールの得点が高いほどシャイネスは低くなるという負の相関関係にあった。
 しかし、パーソナリティ的側面は、個人の特性的で持続的なものであるため、社会生活での経験を踏まえて変化していくコミュニケーション的側面と比べて、他者との関わりで変化しにくいものである。したがって、よりコミュニケーション的要因に着目する必要があると考える。


5.オープナーのコミュニケーション的側面について
 そして、オープナーのコミュニケーション的側面とは、被開示者がオープナーとして開示者に対して話を「聞く」際の諸々の行動や態度がどうであるかといったことであり、大きな意味で社会的スキルの概念に含まれるものと考えられる。
 社会的スキルとは、相川(2000)によれば「他者との関係や相互作用を巧みに行うために練習して身に付けた技能」であり、「他の人に対する振る舞い方やものの言い方」と定義され、コミュニケーションを円滑に進めていくことができるなど自他の関係性の利益が目標とされている。
 つまり、被開示者が高オープナーである方が開示者側は開示欲求が促進されるのではないか。そして、高オープナーであることは相手に安心感を与えるのと同時に、オープナー自身も相手についての情報を知ることができるため、コミュニケーションを円滑に進めていくには必要な特性であると考えられる。このように、オープナーのコミュニケーション的側面がより良きオープナーになることに影響しているのであるなら、オープナーとしての社会的スキルの側面を磨いていくことが重要である。したがって、オープナーのコミュニケーション的側面に焦点を当てる必要性がある。


6.既存のオープナー特性に関する尺度について
 オープナー特性の程度を測定する尺度は既にいくつか作成されている。
 まず、Millerら(1983)は、@他者の反応の知覚、A他者へ耳を傾けることへの関心、B対人的なスキル、からなるオープナー・スケールを作成した。それを小口(1989)が翻訳し、日本で大学生を対象にして実施し、因子分析をした結果、《なごませ》因子と《共感》因子の2因子からなることが明らかになった。これは開示者自身がオープナー特性を有する程度を測定しているが、たとえば「聞き上手だと言われる」といった項目のように、開示者が自分についてどう思っているかということについて尋ねており、被開示者が開示者に対して、どのように聞くかといった、被開示者の聞く姿勢についての項目は含まれていない。
 また、越ら(2009)もオープナー特性について検討しているが、上記のようにオープナー特性を「態度特性」「行動特性」「容姿特性」の3つのカテゴリーに分けて、それぞれの尺度が作成されている。このオープナー特性の尺度は、自分自身のことをよく聞いてくれる人の特徴が項目として挙げられており、それぞれについてどの程度あてはまるかを聞いており、いわば開示者側からの評価にもとづいた尺度となっている。
 したがって既存の尺度は、必ずしもコミュニケーション的側面を主に焦点を当てた尺度とはいえない。主にコミュニケーション的側面に焦点を当てることで、今後作成された尺度の項目を聞くときに注意することで高オープナーになることができると考える。
 そこで、本研究では、コミュニケーション的側面に焦点を当ててオープナーのコミュニケーションスキル尺度を作ることを目的とする。そして、本研究で作成する尺度は、Millerら(1983)の尺度とは、被開示者が開示者に対して、どのように聞くかといった、被開示者の聞く姿勢についての項目がある点で、異なるものである。また、越ら(2009)の尺度とは、被開示者に、自身のことについて評価させるという点で、異なるものである。


7.本研究の目的
 本研究は自己開示における被開示者のオープナー特性を個人に備わっているものや個人の趣向に応じたパーソナリティ的側面ではなく、社会生活での経験を踏まえて変化していくコミュニケーション的側面として尺度を作ることを目的とする。
 そこで、予備調査で作成したオープナーのコミュニケーションスキル尺度の妥当性の検証として既存の尺度と他のパーソナリティ尺度との相関をみていく。
 また、パーソナリティ尺度としてはオープナー特性を社会的スキルの1つとして扱っているため他の社会的スキルとの関連を見るためKiSS-18(菊池,1988)を用いる。そして小口(1989)がMiller(1983)らのオープナー・スケールを翻訳し、日本で大学生を対象にして実施した先行研究では、シャイネスと内向性ではオープナー特性と負の関係にあったので、予備調査で作成したオープナーのコミュニケーションスキル尺度においてもシャイネスと内向性との関連を見るため用いることにする。