<予備調査>
本研究は、自己開示における、被開示者のオープナー特性を個人の特性的で持続的なものであるパーソナリティ的側面ではなく、社会生活での経験を踏まえて変化していくコミュニケーション的側面として尺度を作ることを目的とする。コミュニケーション的側面は諸々の対人関係を築き上げていく中で少しずつ身についていく側面だと考えられるため社会的スキルの1つだと考える。
そこで、予備調査では、参考文献の中で、社会的スキルの1つである、話を聞くスキルとして挙げられているものを項目として抜粋し、質問紙調査を行い、因子分析を行う。
*結果*
・オープナーのコミュニケーションスキル尺度の検討
オープナーのコミュニケーションスキル尺度の因子構造を調べるために、因子分析(主因子法、プロマックス回転)を行った。スクリープロットにおける固有値の減衰状況から判断して3因子が抽出された。どの因子にも.35以上の因子負荷量をもたない項目や、二重負荷した項目は質問項目としては不適当であると判断し削除した。その結果、最終的に、25項目が選出された(table1)。
第1因子は「相手の話の問題の深刻度をくみ取って聞く」「相手の話の中で、同意できるところは積極的に賛意を表明する」など16項目からなり、《積極的》因子と命名した。第2因子は「相手の話を途中で遮らない」「どんな話でも嫌な顔をせずに聞く」など6項目からなり、《受容・肯定》因子と命名した。第3因子は「自分の関心事ばかり話し始めてしまう」「相手の話題で気づいたら自分の方が話している」など3項目からなり、《自分中心》因子と命名した。因子間相関は、.032〜.456であった。なお、各項目の得点が高いほどオープナー特性が高いことを示している。
オープナーのコミュニケーションスキル尺度のそれぞれの因子ごとにCronbachのα係数を算出した。《積極的》因子ではα=.888、《受容・肯定》因子ではα=.770、《自分中心》因子ではα=.621であった。またG-P分析、I-T相関を用いて項目分析を行った。G-P分析ではオープナーのコミュニケーションスキル尺度項目の合計得点の高群と低群との間にすべての項目において有意差が見られた。I-T相関ではすべての項目において有意な相関が得られた。
このことから因子構造の明確さと信頼性の高さは十分に確認されたと言える。