【方法】
対象
大学生113名
実施期間
2011年11月1日〜12月13日
手続き
参加者を,感謝の想起を行ってもらう実験群と,何も行わない統制群の2群に分け,期間の始めと最後に,自我同一性の確立度と精神的健康度,また,個人の持っている感謝観を測定する質問紙に回答を求めた。
実験群には,介入を5回,週に一度の頻度で行った。また,統制群には2回5週間の間隔をあけて行った。実験群には質問紙の中に,感謝状況を想起させる用紙も含めており,感謝の状況と,その感謝に対する感謝の度合いの記入を求めた。また,精神的健康度を測定する尺度のうち,生活満足感尺度は毎度,GHQ28は2週間に一度の頻度で回答を求めた。
実験群の,感謝状況を想起させる用紙については,想起できない人がいることを考慮し,5分間の時間制限をかけた。5分間の時間内に5つの感謝状況を書き終えた者については,尺度によって構成された次の質問用紙に進んで良いこととした。また,制限時間内に5つの感謝状況を書き終えることができなかったものは,空欄のままで次の質問用紙に回答するように教示した。
質問紙の構造
>>感謝状況の想起
Emmons, & McCullough(2003)の研究を基に作成。教示文の後に感謝状況についての記述欄を5つ用意した。また,それぞれの感謝状況について,感謝の度合いを5段階で評定させた。感謝の度合いの評価については,価値観の個人差があることを考慮し,白星(☆)を5つならべ,感謝の気持ちの度合いを,白星を黒く塗りつぶすことで評価を求めた。教示文については,以下に示すものである。
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私たちの生活には様々なことがあり,大きいことも小さいことでも,私たちはそれについて ありがたいと思えることがあります。ここ1週間のあなたの生活の中で,ありがたいと感じたこと,感謝したこと5つを思い出して書き出して下さい。そして,その感謝の度合いを5点満点中度の程度か右の☆を塗りつぶしてください。
>>自我同一性について
アイデンティティ尺度(下山, 1992)
主として対人場面における不安や孤独感など情緒的安定性に関する内容の「アイデンティティの基礎」尺度と,社会的状況におけるアイデンティティの確立にかかわる内容の「アイデンティティの確立」尺度で構成されており,各尺度10項目,合計20項目で,「4.全く当てはまらない」〜「1.よく当てはまる」の4段階で評定を求めた。
>>精神的健康について
・日本版GHQ28(中川・大坊,1985)
身体症状,不安と不眠,社会的活動障害,うつ傾向の4つの下位尺度からなり,過去2週間のうちに様々な身体症状等の有無や程度について尋ねる。28項目を「4.非常に悪かった」〜「1.よかった」まで4段階で評定を求めた。
・生活満足感尺度(鈴木,2002)
速水・鈴木(2002)の生活満足感尺度を,被験者の生活の中心となる学校生活や家庭生活,および対人関係の中心である友人関係における満足感を測定するために再検討したもの。全般的生活満足感,家族関係満足感,友人関係満足感,学校生活満足感の下位尺度から成る。22項目を「5.全く当てはまらない」〜「1.よく当てはまる」までの5段階で評定を求めた。
以下に,実験群と統制群の質問紙の構成を示す。