【結果】


分析対象者
実験参加者の中から,50名(男性13名,女性37名)を実験群とし,62名(男性2名,女性60名)を統制群として分析対象とした。  また,想起された感謝の内容の分析については,筆者と心理学専攻の大学院生,教育心理学専攻の学部生の3人で分類を行った。分類方法としては,分類者の3名がそれぞれに,蔵永(2011)を基準にして分類を行い,3名ともが一致したものを本研究で用いる感謝内容とした。そして,その中の対人的状況以外の「状況好転」と「平穏」に相当するもののみを選出し,「状況好転」と「平穏」の想起回数,全体の想起量から「状況好転」と「平穏」の想起回数を割った想起度を算出し,分析対象とした。



感謝想起の介入と精神的健康の関連
<<全体>>
まず,感謝想起の介入による効果を見るために,感謝想起の介入を行った実験群と介入を行っていない統制群を独立変数,各群においての時期(実験群においては介入の事前・事後,統制群においては第1回目と第2回目)をもう一つの独立変数,GHQ得点と生活満足感尺度の得点,アイデンティティ尺度得点をそれぞれ従属変数として,2要因の分散分析を行った。それぞれの結果を下のTableに示した。

つまり→→→介入の効果による変化の違いはなかった;;


<<精神的健康度がもともと低かった人に注目して>>
次に,全体では感謝想起の介入による効果が見られなかったことから,事前の状態に当たる1回目のghq28の得点を基に,実験参加者を精神的健康高群と精神的健康低群に分類し,それぞれの群の各変数の変化について分析を行った。まず,精神的健康高群の感謝想起の介入の効果を検討するために,ghq28尺度において得点の低かった個人,すなわち精神的健康度の高い個人のみを抽出し,感謝想起の介入の有無と時期を独立変数,各変数を従属変数として2要因の分散分析を行った。

つまり→→→→ GHQ得点でのみ, 介入があった方が, より 精神的健康度が 高まった!!

<<精神的健康度がもともと高かった人 と 低かった人 の違いについて>>
実験前後の時期と介入の有無との交互作用が,精神的健康高群には見られなかったが,低群では有意傾向がみられたことから,精神的健康度の違いによって感謝想起の介入がどのように影響するかについて検討するため,実験群のみに注目して,精神的健康の高低を独立変数,ghqとその下位尺度,また,生活満足感尺度との下位尺度を従属変数として2要因の分散分析を行った。

交互作用に有意差もしくは有意傾向が見られた下位尺度において,Bonferroniの多重比較を行った。その結果を以下に示した(Figure1~5)。


つまり→→→→精神的健康度がもともと低かった人には効果的であった!







自我同一性の確立度と感謝想起の介入による精神的健康の関連
感謝想起の介入が精神的健康に影響を及ぼす時,自我同一性の確立度がどのように関連しているかについて検討するために,事前の状態に当たる1回目のアイデンティティ得点を基に,アイデンティティ高群とアイデンティティ低群に分類し,それぞれの群の各変数の変化について分析をかけた。
その結果,生活満足感得点とうつ症状得点(GHQの下位尺度)でのみ   高群 と 低群の変化量に差が見られた(Table10, Figure6~10)。


つまり→→→→@アイデンティティの確立度が低かった人には 逆に満足感(幸福感)を低下させていた。
          Aアイデンティティの確立度が高い人には,幸福感も,鬱のなりにくさも高めていた。