方法
1. 調査対象者
大学生を対象に質問紙を実施した。分析対象として、143名のうち欠損値が1つでもあるデータは除いた合計138名 (男性:40名、女性:98名)分のデータを分析対象とした (平均年齢19.53歳) 。
2. 調査時期
2012年11月中旬に実施した。
3. 手続き
質問紙を配布し、回答を求めた。質問紙の回答に要した時間は10〜15分程度であった。
4. 質問紙の構成
1)表紙
質問紙の最初に、性別・年齢を尋ねた。
2)自尊感情尺度
山本・松井・山成 (1982)が10項目からなるRosenberg (1965) のSelf Esteem Scaleの邦訳したものを使用した。「少なくとも人並みには価値のある人間である」や「だいたいにおいて自分に満足している」等の項目からなる5項目と、「敗北者だと思う」や「自分には自慢できるところがあまりない」等の項目からなる逆転項目5項目から構成されている。評定は「あてはまる」から「あてはまらない」の5件法で尋ねた。
3)自己認知の諸側面測定尺度
山本・松井・山成(1982)が作成した11側面35項目に関する意識を測定する尺度である。この尺度の「性」の側面を除いた32項目「社交」「優しさ」「生き方」「真面目さ」「スポーツ能力」「経済力」「学校の評判」「知性」「容貌」「趣味や特技」の10側面を使用した。「経済的面で自信がある」や「目鼻立ちが整っている」等の項目からなる。評定は「あてはまる」から「あてはまらない」の5件法で尋ねた。
人が自分について持っている知識の総体は自己概念と呼ばれている。山本ら (1982) は自己概念を自己認知の側面と自己評価に分けて整理している。自己認知の側面とは「社交能力に自信がある」や「特技がある」などさまざまな側面から構成される自己認知像の部分である。一方自己評価とは「自分に自信がある」といった自己に対して漠然とした全体として捉える評価の部分である。山本ら (1982) は全体的自己評価の高低を測定するためにRosen‐berg (1965) の尺度を用い、また全体的自己評価が自己認知のどの部分に強く関連しているのかを検討するためにこの尺度を作成した。よってこの尺度で山本ら (1982) と同様にRosenberg (1965) の尺度との関連を検討するために使用する。
4)友人関係場面における目標志向性尺度
黒田・桜井(2001)が作成した25項目からなる「経験・成長目標」「評価−接近目標」「評価−回避目標」を測定する尺度を使用する。それぞれの目標の項目は、学業場面における目標志向性尺度 (Eliot & Church, 1997) が参考にされ作成された。経験・成長目標に関しては@友人関係の中で自分とは異なった考え方や性格を持つ友人と関わって見るなど経験を重視する、A友人関係の中で自己の成長を目指そうとする、という2つの観点から作成された。評価−接近目標については@友人関係から自分の性格の良さを示そうとする、A友人から自分の性格についてよく思われようとする、B友人より良い性格を持とうとするという3つの観点から作成された。評価−回避目標については@自分の性格の悪いところを隠そうとする、A友人から自分の性格について悪く思われないようにする、B自分の性格の悪いところを指摘する友人を回避するという3つの観点から作成された。経験・成長目標を測る尺度は「自分と違う考えを持つ友達の話を聞いて見たいと思う」等の10項目からなり、評価‐接近目標は「他のどの友達よりもよい性格をもちたい」等の7項目からなり、評価−回避目標は「自分の性格を悪くいわれないために、自分を嫌っている友達は避けたい」等の8項目からなる。しかし「経験・成長目標」の項目が「評価―接近目標」「評価―回避目標」よりも多いため、因子負荷量の低い2項目を除き使用した。評定は「まったくあてはまらない」「あまりあてはまらない」「すこしあてはまる」「とてもあてはまる」の4件法で尋ねた。
4)学習場面における目標志向性尺度
光浪(2010)が作成したElliot & Church (1977) のAchievement Goal Scaleの翻訳を使用した。学習場面における目標志向性を測るものは様々な尺度が作成されている。Elliot & Church (1977)はパフォーマンス目標とも言われる遂行目標を「遂行接近目標 (performance-approach goal) 」と「遂行回避目標 (performance-avoidance goal)」に分類し3つの目標志向性を提唱している。パフォーマンス志向性では好ましい評価を受けようというポジティブな傾向のみしか測れないのに対し、遂行接近目標と遂行回避目標にさらに分類することで好ましい評価を受けようとするポジティブな傾向と悪い評価を回避しようとするネガティブな傾向も測ることができる。そこで今回は「熟達」「遂行接近目標」「遂行回避目標」の3つの下位尺度から作成された目標志向性を測定する尺度を使用する。熟達目標を測る尺度は「私は少し難しくても新しいことを勉強する方が好きだ」等の6項目からなり、遂行接近目標は「私は他の人より良い成績を取ることを目標としている」等の8項目からなり、遂行回避目標は「私は、授業で悪い成績をとること可能性について心配してしまう」等の3項目からなる。評定は「まったくあてはまらない」「あまりあてはまらない」「すこしあてはまる」「とてもあてはまる」の4件法で尋ねた。