方法
【方法】

1.対象
  国立M大学生26名。男性13名、女性13名。平均年齢は19.3歳であった。なお、後述する群分けに従い、統制群13名、実験群13名とした。


2.手続き(実験群の流れ)







 実験時期は2012年12月下旬。大学の講義時に実験内容を説明し、実験協力者を募集した。その際は、大学生の課題の取り組み方に関する研究を行なっていること、実験内容は、3つの質問紙と2度のジグソーパズルの実施であることを説明した。実験協力に応募した学生には、後日実験室に来てもらい実験を実施した。

@事前質問紙調査
 実験協力者に入室してもらい、実験者から実験の意図・実験の概要、及び実験の中止に関する説明をした。その後被験者に事前の質問紙を渡し、回答してもらった。

・教示
実験者「今日行うのは、大学生の課題の取り組みに関する調査です。今から3つの質問紙への回答と、パズルに2度取り組んでいただきます。ご回答いただいた質問紙やパズルの結果は全て厳重な管理のもとで、直ちに記号化され、コンピュータにより統計的に分析されます。ご協力いただいた方にご迷惑をおかけすることは決してありません。途中で実験をとりやめたい場合はいつでもとりやめられます。その際には、私(実験者)に気軽に声をかけてください。では、今からこちらの質問紙に回答してください。」

・質問紙の構成

日本語版対処的悲観性尺度
 日本語版対処的悲観性尺度 (Hosogoshi & Kodama, 2005)を用いた。判別項目1項目とフィラー項目2項目の計11項目から構成される。判別項目では過去の成功に対する認識を問うており、“ややあてはまる”以上を回答し、尺度得点が平均以上のものを防衛的悲観主義者、平均以下のものを方略的楽観主義者に分ける。項目の回答形式は、「1 全くあてはまらない」「2 ほとんどあてはまらない」「3 あまりあてはまらない」「4 どちらともいえない」「5 ややあてはまる」「6 かなりあてはまる」「7 とてもあてはまる」の7件法である。

テスト不安尺度
 Test Anxiety Scale (Sarason, 1972) を坂野 (1988) が邦訳したものを用いた。逆転項目3項目の計16項目から構成される。項目がテストや試験について尋ねるものであったため、その部分を課題に変更した。回答は「次の項目について、“はい”または“いいえ”のいずれかに○をつけてください。」という教示文で、2件法である。

日本語版PANAS
 日本語版PANAS (佐藤, 安田, 2001) を用いた。ポジティブ情動 (PA) 8項目と、ネガティブ情動 (NA) 8項目の計16項目から構成される。項目の回答形式は「1 まったくあてはまらない」「2 あてはまらない」「3 どちらかといえばあてはまらない」「4 どちらかといえばあてはまる」「5 あてはまる」の5件法である。

A1度目の課題遂行
 108ピースのジグソーパズルから外枠の38ピースを除いた、計70ピースのジグソーパズルを実施した。制限時間は3分間であった。

・教示
実験者「今からパズルに取り組んでいただきます。このパズルは個人の問題処理能力を正確に測ることができると言われているものです。予め外枠の38ピースを抜いてあります。時間は3分間です。できるだけ速く、正確に取り組んでください。」

B課題の結果を伝える
◯統制群:組み上げたパズルのピースの数のみ伝える

・教示
実験者「あなたの成績は70ピース中〇〇ピースでした。」

◯実験群:組み上げたパズルのピースの数、及び結果が平均を下回っていたことを伝える

・教示
実験者「あなたの成績は70ピース中〇〇ピースでした。これは、過去の結果と照らし合わせると、平均を下回るものでした。」

C課題の結果を伝えられた後の質問紙調査

日本語版PANAS
 事前質問紙調査で使われたものと同じ。

D2度目の課題遂行
 外枠の38ピースを除いた、計70ピースのジグソーパズルに取り組んでもらった。また、1度目とは異なる絵柄のものを用いた。制限時間は1度目と同じく3分間であった。

・教示
実験者「もう一度パズルに取り組んでいただきます。絵柄は違いますが、先程のパズルと同じように予め外枠の38ピースを抜いてあります。時間は3分間です。できるだけ速く、正確に取り組んでください。」

E課題の結果を伝える
 統制群、実験群ともに組み上げたパズルのピースの数のみ伝えた。

・教示
実験者「あなたの成績は70ピース中〇〇ピースでした。」

F課題終了後の質問紙調査

課題の取り組みに対する満足度
 課題の取り組みに対する満足度をたずねるため、「あなたのパズルへの取り組みに対する満足度をお尋ねします。最もよくあてはまる数字に○をつけて下さい。」という1項目について「0 全く満足していない」から「10 非常に満足している」までの11件法で回答を求めた。

課題への取り組み方
 課題への取り組み方についてたずねるため、「1回目のパズルでの経験を、2回目のパズルで活かそうとしましたか。最もよくあてはまる数字に○をつけて下さい。」「パズルを作る時、自分なりに作り方を考えながら作りましたか。最もよくあてはまる数字に○をつけて下さい。」という2項目について「全く作りたいと思わない」から「絶対に作りたい」まで、という教示文で「0 全く満足していない」から「10 非常に満足している」までの11件法で回答を求めた。

将来の課題への意欲・不安
 将来の課題への意欲・不安についてたずねるため「もしこのパズルをもう一度するとしたとき、最後まで作りたいですか。最もよくあてはまる数字に○をつけて下さい。」「今回のような時間制限のあるパズルをまた作りたいと思いますか。最もよくあてはまる数字に○をつけて下さい。」「もしもまたパズルをする機会があったとしたら、その時不安を感じると思いますか。最もよくあてはまる数字に○をつけて下さい。」という3項目について「0 全く満足していない」から「10 非常に満足している」までの11件法で回答を求めた。
 *上記の6項目は独自に作成した。

Gデブリーフィング
 真の実験意図を伝えた。

・教示
 実験者「これですべての実験は終了しました。本日は調査にご協力いただきありがとうございました。この調査は、認知的方略の違い課題の成績によって感情、次の課題への取り組み方、満足度などにどのような影響をもたらすかについて検討するためにおこなったものです。認知的方略とは、テストや部活の試合などの場面で、楽観的に取り組むか、悲観的に取り組むかといったパターンのことです。これは、過去の自分の課題等をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるか。そして、将来取り組む課題等に対してポジティブな期待を持つか、ネガティブな期待を持つかによって分けられます。
 1つ目の質問紙はあなたの認知的方略を判別し、課題への不安、現在の感情を測るためのものでした。パズルの成績を伝えた後の2つ目の質問紙は成績を伝えられた後のあなたの感情を測るためのものでした。最後の質問紙は認知的方略の違いや、パズルの成績によって変化すると思われる満足度、取り組み方、次の課題への意欲・不安を測るためのものでした。また、パズルを用いたのは、組み上がったピースの数を成績として測るためです。そのため、このパズルを用いて問題処理能力を測ることはできません。
 真の実験意図を伝えずに実験を行う形になってしまい、申し訳ありませんでした。なお、この実験はしばらく続きますので、どのような実験をしたか、他の人には言わないようお願いします。今回の調査の結果などについてご質問がありましたら、教育学部人間発達科学学科人間発達科学コース4年國廣明来までご連絡ください。ただし、個人情報の保護に万全を期すため、全てのデータを入力した後に質問紙はシュレッダーにかけ、入力したデータにつきましても個人情報を消去して分析しますので、個人的なデータについてはお答えできません。また、分析結果につきましては、データ入力および分析に多少の時間が必要であるため、お答えできるのは今学期終了後となることをご理解ください。
 本日は実験にご協力いただき本当にありがとうございました。」

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