要旨
本研究ではスクールカーストを取り上げた。クラスメイトのそれぞれが「ランク」付けされている状況は、メディアや教育評論家の間でスクールカーストと呼ばれている(鈴木, 2012)。スクールカーストとは、近年若者たちの間で定着しつつある言葉である(森口, 2007)。本研究では、スクールカーストで取り上げられている学校で人気が獲得出来る生徒を青春度という概念を用いてとらえ、青春度を「学校生活の様々な活動に積極的に取り組み、充実していると感じている、または楽しんでいると感じている度合い」と定義した。
本研究の目的は、青春度の高い生徒をセルフモニタリング傾向と自己愛的脆弱性のとの関連から特徴を明らかにすることであった。まず、大学生を対象に自由記述の質問紙調査を行い、結果を参考に青春度を作成した。次に中学生を対象に質問紙調査を行った。青春度の因子分析の結果、「部活動の様子」「行事・クラスの様子」「外見への配慮」「異性との付き合い方」の4因子に分かれた。各下位尺度間の相関をみると、青春度が高い生徒は、セルフモニタリング傾向が高いことが明らかになった。このことから、青春度の高い生徒は、他者行動に敏感で、周りの状況に合わせて自己呈示を変えている傾向が高いことが分かった。青春度が高い生徒と自己愛的脆弱性については、自己愛的脆弱性に男女差がみられ、男女で異なる結果となった。全体としては自己愛的脆弱性の下位尺度である自己緩和不全と正の相関関係がみられ、青春度の高い者は友達といることで不安を緩和していることが考えられる。
スクールカーストの実証的な研究は、現在までほとんど行われていない。スクールカーストの上位の生徒は、周りの必要性を感じ、場に応じた自己呈示変容能力が高いということであり、自分らしさを出しているわけではない。本研究ではスクールカーストの存在を前提に、青春度の高い人物をまたスクールカーストの上位の人物としてとらえ焦点を当てたが、スクールカーストの上位でないが、学校生活を独自の基準で楽しみ、充実させている生徒にも焦点を当て特徴を検討する必要があると考える。また、青春度と自己愛的脆弱性に関しては、セルフモニタリングに比べて大きな関連はみられなかったため、自己愛の問題については本研究とは異なった尺度で検討する必要性がある。