方法

1.調査対象

 国立M大学に在籍する133名の大学生に質問紙調査を行った。回答に不備がみられた4名を除き、129名(男性73名、女性56名)を分析の対象とした。平均年齢は19.5歳、標準偏差は1.18であった。

 

2.調査時期

 201311月上旬

 大学生に対して、普段の学習態度を調査するという旨を伝えて、質問紙を配布した。調査形式は、その場で回答を求め回収する一斉配布、一斉回収の方法をとり調査を実施した。

 

3.質問紙の構成

 質問紙は4つの尺度によって構成された。

 

@   ハーディネス尺度(15項目)

  ハーディネス尺度は、多田・濱野(2003)において作成された15項目ハーディネス尺度を使用した。小坂(2008)は、これまでの日本におけるハーディネス研究においては複数の尺度が使用されていることもあり、ハーディネスの効果について統一した見解を述べることは難しいと述べている。そのような状況の中、多田・濱野(2003)15項目ハーディネス尺度は最も信頼性が高く、本研究と同じ、大学生を中心に調査されてきたため、本研究でも有用であると考えた。

 3下位尺度で構成(チャレンジ、コントロール、コミットメント)から構成され、各5項目の合計15項目で構成される。回答は5件法(“1. あてはまらない“5. あてはまる)で求めた。得点が高いほどハーディネスが高いことを示す。

 

 

表1:多田・濱野(2003)ハーディネス尺度

1.チャレンジ

13.目新しくて変化に富んだいろいろなことをしてみたい

15.興奮したりわくわくしたりすることが好きだ

8.わくわくする活動や冒険的な行為は好きだ

10.できればさまざまな経験をしてみたい

1.作業や仕事は変化があるほうが好きだ

2.コミットメント

4.自分には打ち込めるものがない(逆転項目)

2.楽しめる趣味をもっている

6.生きがいを感じているものがある

7.学ぶことを本当に楽しみにしている

3.コントロール

12.どんなことでも最善を尽くせば最終的にうまくいく

14.一生懸命話せばだれにでもわかってもらえる

5.努力すればどんなことでも自分の力でできる

3.一生懸命がんばれば必ず目標は達成する

11.毎日単調で張りがない(逆転項目)

9.計画を立てたらそれを実行させる自身がある


 

 

 

A達成動機測定尺度(23項目)

 価値ある仕事に挑戦し、それを成し遂げようとする傾向の強さを測定するための尺度である。堀野(1987, 堀野・森(1991)によって開発された。この尺度は、社会的側面と個人的側面の両面から達成動機を捉えることができる。2下位尺度(自己充実的達成動機、競争的達成動機)から構成され、全23項目である。回答は7件法(“1. 全然あてはまらない“7. 非常によくあてはまる)で求めた。


 

表2:堀野・森(1991)達成動機測定尺度

1.自己充実的達成動機

21.難しいことでも自分なりに努力してやってみようと思う

23.こういうことがしたいなぁと考えるとわくわくする

19.今日一日何をしようかと考えることは楽しい

12.何か小さなことでも自分にしかできないことをしてみたい

16.いろいろなことを学んで自分を深めたい

3.決められた仕事のなかでも個性をいかしてやりたい

1.いつも何か目標をもっていたい

8.みんなに喜んでもらえる素晴らしいことをしたい

10.何でも手がけたことは最善を尽くしたい

14.結果は気にしないで何かを一生懸命やってみたい

6.ちょっとした工夫をすることが好きだ

7.人に勝つことより自分なりに一生懸命やることが大事だと思う

4.人と競争することより、人とくらべることができないようなことをして自分をいかしたい

2.競争的達成動機

22.世に出て成功したいと強く願っている

20.社会の高い地位をめざすことは重要だと思う

2.ものごとは他の人よりうまくやりたい

11.どうしても私は人より優れていたいと思う

18.成功するということは名誉や地位を得ることだ

17.就職する会社は社会で高く評価されるところを選びたい

13.勉強や仕事を努力するのは他の人に負けないためだ

5.他人と競争して勝つとうれしい

9.競争相手に負けるのはくやしい

15.今の社会では強いものが出世し勝ち抜くものだ

 

 

 

 

B多面的楽観性尺度4下位尺度版「MOAI-4」(24項目)

 中西ら(2001)で作成された多面的楽観性尺度の短縮版を使用した。否定的な出来事や失敗に対してとらわれない傾向である「割り切りやすさ」、将来の肯定的な結果を予測する傾向である「肯定的期待」、否定的な結果が生じないことを期待する傾向である「困難の不生起」、運の強さへの新年に関する「運の強さ」の4下位尺度で構成されている。それぞれ6項目、計24項目である。回答は5件法(“1. 全くそう思わない“5. 非常にそう思う)で回答を求めた。

 

 

表3:中西ら(2001)多面的楽観性尺度(MOAI-4)

1.割り切りやすさ

6.友だちとケンカをしてもくよくよ悩まない

15.人にしかられたときでもくよくよしない

1.何事もあれこれ思い悩まない

8.失敗してもそれにこだわらない

22.なにか物事に失敗しても仕方なかったと思いあまり悩まない

11.困ったことが起きてもあまり気にしない

2.肯定的期待

17.何かに失敗しても最後にはうまくやることができると思う

19.困難な課題を課せられてもなんとかなると思う

5.どんな課題でもきっと成功すると思う

10.うまくいくかどうかわからないときでも、最終的にはうまくいくと思う

14.何か困難なことが起きても切り抜けることができると思う

2.この先楽しいことがきっと待っていると思う

3.困難の不生起

9.自分は犯罪に巻き込まれないと思っている

20.自分の生命が失われる出来事に出会うことはないと思う

18.他人に裏切られることはないだろう

12.将来自分の住んでいるところに大きな地震は起きないと思う

3.滅多にないような悪いことは自分には起きないと思う

24.友達が自分をおとしいれることはないと思う

4.運の強さ

23.じゃんけんにはいつも勝っていると思う

13.自分はじゃんけんをすると負けないような気がする

16.半分があたりくじならあたりを引くことができると思う

7.自分は運が強いと思う

21.自分は運が悪いのではないかと思う

4.くじ引きにあたることがおおい

 

 

 

 

C学習観尺度の下位尺度「方略・失敗活用思考」(5項目)

 市川・堀野・久保(1998)および植木(2002)の学習観質問紙を、瀬尾(2007)が再検討して作成したもののうち、下位尺度の「方略・失敗活用志向」のみを使用した。瀬尾(2007)では、「方略・失敗活用志向」は、失敗を学習改善の材料としてより積極的に捉える考え方を強調するものとして使用されている。そこで本研究でも、失敗にたいする認知の指標のひとつとしてこの概念を取り入れることにした。回答は5件法(“1. まったくあてはまらない“5. 非常によくあてはまる)で回答を求めた。

 

D達成動機尺度の下位尺度「失敗恐怖」(4項目)

  Lang & Fries2006)が開発したRevised 10-item version of Achievement Motives ScaleAMS-R)を光浪(2010)が翻訳したものの中から、失敗に対する認知を測る指標として「失敗恐怖」の4項目のみ使用した。回答は5件法(“1. まったくあてはまらない“5. 非常によくあてはまる)で回答を求めた。

 

表4:瀬尾(2007)方略・失敗活用思考

1.方略・失敗活用志向

5.まちがえることはその先の学習に生かすための大切な材料だと思う

7.成績が悪かったときなぜかを考えることはいい経験になる

1.人それぞれ自分にあった勉強や努力の仕方を工夫したほうが効果的

9.問題が解決できなかったり、物事に失敗したときこそ自分の足りない部分に気づくことができる

4.成績をあげるには勉強の仕方を考えることが大切だ

光浪(2010)失敗恐怖

2.失敗恐怖

3.成功するという確信がもてない場合には何をするにも不安になる

6.自分次第で物事の多くが決定してしまう時、少し困難な状況で失敗するのが怖い

2.たとえ誰も見ていないとしても新しい状況では不安を感じる

8.すぐに問題解決できない場合私は不安を感じ始める


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